【評決】のポール・ニューマン

映画【評決(1982)】あらすじと感想。空回るポール・ニューマン

【評決】のポール・ニューマン

1982年/アメリカ/監督:シドニー・ルメット/出演:ポール・ニューマン、シャーロット・ランプリング、ジャック・ウォーデン、ジェームズ・メイソン、ミロ・オーシャ、リンゼイ・クローズ

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

法廷で答弁するポール・ニューマン
©The Verdict/評決より引用

一押しのジャック・ニコルソンには及びませんが、ポール・ニューマン大好きです。

月並みですみません。

「ジャック・ニコルソン大好き」と言うとその場が微妙な雰囲気になったりしますけど、「ポール・ニューマン大好き」って言って賛同してくれない人って今まで会ったことないかも。

 

本日は、そんなポール・ニューマンがカッコ悪い映画についてです。

そうです、【ハスラー】【明日に向って撃て!】【スティング】二枚目スター俳優ポール・ニューマンがカッコ悪い。

アル中で、中年で、正義は空回りして、権力をはねつけたかと思ったらすがりついて、良いところなんてひとつもない。

 

なのに最後は死ぬほどカッコいい。

どっちやねん。

【評決(1982)】です。

 

 

 

映画【評決(1982)】のあらすじザックリ

仕事が見つからないアルコール依存症の弁護士フランク・ギャルヴィンは、新聞の死亡欄を確認して葬式会場に出かけ営業活動をする日々を送っていた。ある日先輩弁護士ミッキーが、出産のために入院した主婦が麻酔時のミスにより植物状態に陥ったという事件を世話してくれる。

 

 

シドニー・ルメット監督の法廷ドラマ

監督は【十二人の怒れる男】【オリエント急行殺人事件(1974)】シドニー・ルメット

しかし【評決(1982)】には【十人の怒れる男】の陪審員8番や【オリエント急行殺人事件(1974)】のエルキュール・ポアロのような正義の味方は出てきません。

強いて言えば事件の評決を下した名もなき陪審員がヒーロー。

 

ポール・ニューマンが演じた主人公がおるやろって?

いやだから、ポール・ニューマン扮する弁護士フランク・ギャルヴィンはもうダメダメなんですって。

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12人の陪審員達
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【オリエント急行殺人事件】

 

アル中、ほぼ無職、ダメダメのポール・ニューマン

とりあえずもうアル中アル中

手とかブッルブルでグラスも持てないからさあ。

しかも個人で弁護士事務所持ってるけど依頼がないから見知らぬ人の葬式に顔を出しては名刺を配り歩いてる。

フランク
何かあればお力になります!

他人の死まで食い物にする守銭奴だと罵られたりしながらよ?

「お悔み申し上げます。あ、これ、僕の名刺」
©The Verdict/評決より引用

酔っ払って気分のいい時は行きつけのバーで馴染みの客相手にジョーク飛ばしたりもしてるけど、基本的には終始フランクを取り巻く厭世的な雰囲気が半端ない。

もうまるで世捨て人。

こんなにカッコ悪いポール・ニューマンを観たのはこの映画が初めてです。

 

 

楽に勝てるはずだったとある訴訟

そんなフランクの元にある日、先輩弁護士のミッキー(ジャック・ウォーデン)がやってきて、示談で済みそうな簡単な訴訟を世話してくれます。

ミッキーと訴訟について調べるフランク
©The Verdict/評決より引用

それはカトリック教会系の病院で出産のために入院した主婦が麻酔時のミスにより植物状態に陥っている事件。原告は主婦の妹夫婦。

ミッキーの予想通り、医療ミスを公にしたくない教会側は多額の和解金を提示して示談の交渉をしてきます。

 

ダメダメのフランクが目覚める瞬間

最初はホイホイと交渉に応じるつもりでいたフランクが、ふと何かに目覚める瞬間の描写が実にファンタスティック。

 

被害者の病室を訪れたフランクは、示談金の引き上げに使うため、ポラロイドカメラで被害者の写真を撮り始めます。

 

パシャリ。

 

パシャリ。

 

静かな病室に響くのはカメラのシャッター音と被害者の体中に繋がれた大きな医療器具の「ゴー…」という機械音だけ。

 

そしてしばらくすると傍らに置いたポラロイド写真に、寝たきりとなった被害者が浮かび上がる。

ポラロイド写真に写る患者の姿
©The Verdict/評決より引用

前述の通り、植物状態の患者ばかりのこの病室は本当に本当に静かなので、写真を見たフランクの中で何かが弾ける音まで聞こえたような気がします。

朱縫shuhou

やった…!

正義に目覚めたんや!

ポール・ニューマンが何かをやってくれる…!

 

正義に目覚めても全然ダメだったフランク

フランクは突然示談を放棄し、裁判に持ち込むと宣言します。

ここからポール・ニューマンの真価が発揮される…!と思ったのも束の間、やっぱり事態は変わりませんでした。

 

頼りにしていた証人にはあっさり逃げられ、勝ち目がなくなったと分かった途端検察側と判事に取引を持ち掛け、勝手な行動をした(示談に応じなかった)ことで原告の夫婦からも責められる…。

しかもこの頃にバーでナンパした女性ローラ(シャーロット・ランプリング)は、明らかに怪しいし。

怪しい女性ローラ
©The Verdict/評決より引用

やっとの思いで探し出した証人は麻酔科医ではなくただの74歳の開業医。で、黒人

証人としてやってきたトンプソン医師
©The Verdict/評決より引用

こちらの証人も頼りないことこの上ないし、検察側の証人への尋問も理路整然と問い詰める訳でもなく、しどろもどろで穴だらけ。

大体示談の段階で忠告してくれてた判事を無視して裁判に持ち込んだことで、判事すらも敵に回しちゃってる。こちらの異議は認められないし、検察の異議はまかり通るし。

 

示談を拒否して自分で勝手に勝てると信じて挑んだ裁判で、フランクは弁護士生命すら脅かされる窮地に追い込まれていきます。

 

弁護士がまさかの最終兵器「情に訴える」

これまでいいとこなしのダメ人間だったというのに、フランクの最終弁論は泣けるんです。

内容自体は私にだって言えそう。だって普通に情に訴えてるだけ。

医療ミスがあった証拠もなく、決め手となる証人も記録から削除されてしまった。

打つ手がなくなったフランクが最終弁論で陪審員に向って語り掛けた内容は、「こんな非情な世界があっていいのでしょうか」とか「正義はあると信じています」とか、ただひとつの残された手段「人間の情に訴える」に終始しただけ。

評決をくだす陪審員たち
©The Verdict/評決より引用

でもフランクが訴えたのはただの情じゃありません。

ここに至るまでのフランクの人生を賭けたこれ以上ない「情」。

 

自分のことをよく知らない人に、何度か「お前たち(弁護士や医療関係者?)は貧乏人から金を吸い上げる吸血鬼や!」と罵られ、目玉を真ん丸にして驚いていたフランクが目に浮かびます。

被害者のポラロイド写真を見つめて正義のために戦うことを誓ったフランクは、結局正攻法では裁判に勝てそうもなく、敗北を覚悟した溜め息をつきながら、今必死に陪審員の「情」に訴えているのです。

 

「法廷で100%情に訴える」って、こんなのがもしまかり通るなら、世の中捨てたもんじゃないと思えますよね。

 

捨てたもんじゃないんですよ。

(まかり通った)

 

 

映画【評決(1982)】の感想一言

朱縫shuhou

ローラを演じたのはイタリア映画【愛の嵐】で上半身裸にサスペンダーでナチ帽かぶって踊る姿が衝撃的に美しかった女優シャーロット・ランプリング。

フランクとの大人の別れはシブくて最高。

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【愛の嵐】シャーロット・ランプリング

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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