1961年/アメリカ/監督:ロバート・ロッセン/出演:ポール・ニューマン、ジョージ・C・スコット、ジャッキー・グリーソン、パイパー・ローリー、マイロン・マコーミック/第34回アカデミー美術(白黒)・撮影(白黒)賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!


ポール・ニューマンに言われてみたいセリフナンバー1。
違うの。愛しているから鎖のように束縛しちゃうの。愛しているからいつかどこかへ消えてしまうんじゃないかって心配でたまらないの。いやんいやん。
うーんしかしこのセリフ、うちの夫にでも言われようもんなら軽く白目向きますよね。

やかましお前に鎖なんぞ巻いとるかドアホ!どこへでも行きさらせ!
まったく同じセリフだってのに、ゴリラが言うとこうも勘違いも甚だしいニュアンスを帯びるとは…。誰かポール・ニューマンとうちのゴリラの違いを明確に教えてください。
うちではゴリラしか飼ってないんで、仕方なく今日もスクリーンのスターに恋してますよ。
若きポール・ニューマンの哀愁と、脇を固めるジョージ・C・スコットとジャッキー・グリーソンの風格に萌えずにはいられない名画、【ハスラー(1961)】です。
映画【ハスラー(1961)】のあらすじザックリ
“ハスラー”の意味
この映画のお陰で日本では一般的に「ビリヤードする人」の意味で知られる「ハスラー」ですが、本当はもっとたくさん意味があります。
詐欺師、ペテン師、(一部の)ギャング、売春婦など…。
そもそも「Hustler」から「人」を表す接尾辞の「-er」を除いた「ハッスル」には「ごり押しする」「乱暴に押しのけて進む」といった意味があって、それを踏まえると「ハスラー」って単語には結構反社会的な雰囲気が漂ってるんですよね。
まかり間違っても「健全なるスポーツマン」って感じでは絶対ない。

とは言えビリヤードプレイヤーが単に「ビリヤード」に「-er」を付けて「ビリヤーダー」なんてダサい呼称にならなくて良かった。
やっぱり「ハスラー」って響き、かっこいいもんね。
とりあえずこの記事ではハスラーと言ったり言わなかったりします。どっちやねん。
天才型ハスラー、エディ・フェルソン
マネージャーのチャーリー(マイロン・マコーミック)と共にとあるビリヤード場にやってきた若きハスラー、エディ・フェルソン(ポール・ニューマン)。

彼は15年間無敗の伝説を持つミネソタ・ファッツ(ジャッキー・グリーソン)に挑戦します。
伝説的ビリヤードプレイヤーと賭博師
のっけからの死闘ですよ。
ファッツは毎晩8時きっかりにこのビリヤード場にやってきます。
挨拶を交わしてルールと掛け金を決めて、エディとファッツが対戦を始めた時、時計が指していたのは8時10分前後でした。
それから日付が変わって午前1時…。
12時間が過ぎて朝日が差し込む午前8時…。
あれよあれよと勝負は長引き、気が付いてみればなんと40時間が過ぎていたみたい。

……?!
(言葉もない)
40時間も玉突きってどうよ。
しかもプレイヤーばかりでなくチャーリーもこの辺りを牛耳ってるプロ賭博師のバート・ゴードン(ジョージ・C・スコット)も寝てない。
頭おかしい。

結果はエディの惨敗。
エディは途中、1万8000ドルも勝ってる時があったんです。
ここで止めておけというチャーリーの忠告も聞かず、ファッツが音を上げるまで続けると押し通した結果、眠気と酒に飲まれてしまったエディは大敗を喫することになります。
そりゃ40時間もビリヤードしてれば誰だって意識朦朧とするやろってなもんですけど、一方のファッツは涼しい顔してるんです。
何かの呪術かトリックかと思いますけど、バート曰くはこれは「強靭な精神力」。
そしてエディが勝っていた時でさえ彼に向って「落伍者」と罵るバートに、エディは強烈な闘志を燃やします。
「落伍者」かどうかは分かりませんけど、やっぱり勝負って引き際も大事ですよね。
勝機を見極めて勝ち逃げするのは決して卑怯ではないと思うんだけど…。
それにしても引き際を逃して勝負を長引かせたエディが頑固で融通が利かないことは間違いないとしても、この場合負けた原因はそれだけではないような…。

エディは後に恋人のサラ(パイパー・ローリー)に、酒を飲んでビリヤードしている時の心境を以下のように語っています。

調子に乗ってくるとキューが体の一部のようになって、ゲームが思い通りに進むんや。
そうなったら止められへん。
これってつまり、酒で気が大きくなっているだけちゃうの?
このアルコール効果を制御してこそ一流ではないのか。
ファッツだって酒飲みながらゲームしてるけど酔っ払ってグダグダになるような醜態は見せてないし。
とりあえずエディ、本気モードで戦う時は酒やめたら?
バートだって仕事中は牛乳飲んでるよ?(←これめっちゃかわいい)
はかな過ぎて怖いサラ
ファッツに負けてチャーリーとも別れ、グッズグズのエディが駅でナンパして同棲を始めるのが謎の多い自称大学生のサラ。
かわいいんですけど突っ張った糸がプツンと弾けて切れてしまうように危うげで儚げで、なんだか怖くて観ていられない。

て、思ってたら予想通りの結末に衝撃を受けたもんです。プッツン切れたサラは自ら命を絶ってしまいます。
エディにさえ出会わなければ…って思ったりもしましたけど、でもじゃあエディに出会わなかったからと言って彼女はどうなってたかな?
真面目に大学に通って小説書いて教授と結婚?
いやない。
父親からの小切手は途絶えず、そのお金で相変わらず酒におぼれて、嘘で塗り固めた人生だけを冥途の土産に孤独死?
ありそう。
サラはどっちにしても悲惨な末路をたどっていたと思うんですよね。それなら最後に本当に愛する人に出会えて、良かったかも知れない。
愛する人との「鎖」は、引きちぎられてしまったけど。
最後に勝ったのは誰なのか
自分に欠けていた「精神力」を手に入れたエディは、ファッツに再戦を挑み勝利します。
悲願の勝利と大金を手にすることはできたものの、バートが仕切る界隈のビリヤード場は出入り禁止になってしまうし、サラは失ってしまうし、その代償はあまりに大きい。今さら勝っても儲かっても、エディの心が満たされることなんてないでしょう。
一方散々「落伍者」と蔑んでいたエディに負けてうなだれるバート、今のエディには「勝てん」と潔くもあっさりと負けを認めるファッツ。

ダメだこりゃ。
でもこの死ぬほど後味の悪いラストが、ハスラーたちの末路なんでしょうよ。
自分ら全員負け。
サラの勝利。
映画【ハスラー(1961)】の感想一言
とにかく主要の3人(ポール・ニューマン、ジョージ・C・スコット、ジャッキー・グリーソン)が揃いも揃って全員カッコいい!
目の保養におすすめ!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。