1974年/イギリス/監督:シドニー・ルメット/出演:アルバート・フィニー、ショーン・コネリー、イングリッド・バーグマン、リチャード・ウィドマーク、アンソニー・パーキンス、ジョン・ギールグッド、ヴァネッサ・レッドグレイヴ/第47回アカデミー助演女優賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

2017年、アガサ・クリスティの「オリエント急行の殺人」が、何度目かの映画化に至りました。
2017年/アメリカ/監督:ケネス・ブラナー/出演:ケネス・ブラナー、ペネロペ・クルス、ウィレム・デフォー、ジュディ・デンチ、ジョニー・デップ、ジョシュ・ギャッド、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー注※このサイトは映[…]
それに先駆けて復習がてら、【オリエント急行殺人事件(1974)】を再視聴したので、レビュー残しときます。
映画【オリエント急行殺人事件(1974)】のあらすじザックリ
映画【オリエント急行殺人事件(1974)】のネタバレレビュー
私はシャーロキアンではありますが、アガサ・クリスティは全然知りません。
興味はあるんですけど…まあ読む時間がないというか…。
初めてアガサ・クリスティの作品に触れたのが映画の【オリエント急行殺人事件(1974)】であるわけですが、もう衝撃でしたね。
観終わった後しばらくフリーズしてました。

こっ!
これがミステリーの女王アガサ・クリスティ!!!
フリーズ融けるのに4時間くらいかかったんちゃうかな(単に余韻に浸ってゴロゴロしてただけ)。
参考 シャーロキアン = シャーロック・ホームズの熱狂的なファンの呼称
ラストまで真剣に推理してた
まさかの容疑者全員犯人!
ラストで名探偵エルキュール・ポアロ(アルバート・フィニー)によって完全に謎が解き明かされるまで、私は延々と犯人を捜していました。

特に私は推理モノに弱いんで(名探偵コナンですら全然わかんない)、容疑者全員が笑ってしまうくらい共通する濃厚な動機があることに全然疑問を抱かず、「誰か1人の犯行」だと思い込んで最後まで疑いませんでした。
寝台車会社の重役で友人ポアロに事件の解決を依頼するビアンキ(マーティン・バルサム)よろしく、「あいつや」「いや、絶対こいつや」「う~んそっちも怪しい」と 乗客全員犯人クサい! と思っていたにも関わらず…全然分かりませんでした。
でもこんなの途中で気付く人いるの?
「もしかして全員犯人なんちゃうん」て?
あなたお気付きでした?
すごいね…。
巧みな観せ(魅せ)方に脱帽
アガサ・クリスティの数百ページもあろうかという長編小説をたったの2時間弱に凝縮した技術が素晴らしいです。
中でも事件の発端となったアームストロング事件は、冒頭のほんの数分の映像と新聞に踊る見出しの文字だけで観客の脳裏に強烈な印象を焼き付けます。

またシドニー・ルメット監督は、オリエント急行の車内の「狭さ」を表現することにもこだわっていて、これには現場のカメラマンやスタッフは悲鳴を上げていたそうです。
しかしその甲斐あって 雪の中立ち往生する密室状態の列車内 という閉塞感が見事に具現化されています。
せまっ!!

ラストで犯人達がラチェット(リチャード・ウィドマーク)の胸に短剣を突き立てて行く回想シーンでは、実行犯1人1人を不気味に青く映し出し、凄惨さよりもむしろ悲しみが伝わってくるような感じに仕上げているのもすごい。

キャラが立ってて一目瞭然
推理ものって小説にしろ映画にしろ、事件の謎を解く主人公さながらに容疑者や被害者の生活環境や人となりを一通り理解しておかないと楽しめないですよね。
それらを総合的に判断して推理を進めていくんですから。
【オリエント急行殺人事件(1974)】には周知の通り12人もの容疑者(犯人)が出てくるわけで、「誰が誰やったか分からんなってきた~!」ってなりそうなもんですが、全員が個性豊かでキャラが立ってて忘れようにも忘れられません。
…逃げてもすぐ捕まりそうなほどに…。

最近の大人数のアイドルグループなんかは没個性すぎて私のような初老には全員同じ女の子に見えますが、こういった犯罪を犯すような場合は雑踏に紛れられていいのかも知れない。
エルキュール・ポアロの人物像
中でもエルキュール・ポアロのインパクトは【Mr.ビーン】で最初にローワン・アトキンソンを観た時のそれとなんとなく似ています。
ホテルの食事にケチをつけるほどのグルメで、何かにつけて哲学者の言葉や戯曲らしきものを引用する幅広い知識を持ち、人の心の底まで見透かすような鋭い視線は嘘をつくことを許しません。
数々の難事件を解決してきた国際的な名探偵のはずなのに、どこかおとぼけた【Mr.ビーン】臭がするのもポアロの魅力の一つ。

ベッタベタにポマード的なもんを塗りたくって七三に分けた黒髪に、ぴょこんと上向いた口髭をたくわえ、人を妙な斜めの角度から見上げる小男。
2回目以降(謎が解けてから)よく観てると、序盤でこの小男が急遽オリエント急行に乗り込もうとする時、他の乗客達が迷惑そうにしているのがよく分かります。
【オリエント急行殺人事件(1974)】の撮影時アルバート・フィニーは30代であったにも関わらず、シドニー・ルメット監督にその演技力を見込まれ、50~60代であるはずのポアロ役に抜擢されたそうです。
シドニー・ルメット監督のこの裁量が正解であったかどうかは【オリエント急行殺人事件(1974)】を観れば明らかですよね。
美しいだけではなかった女優
【オリエント急行殺人事件(1974)】でアカデミー助演女優賞を獲得しているのが殺されたデイジー・アームストロングの乳母をしていたグレタ役のイングリッド・バーグマン。

彼女は当初ドラゴミノフ侯爵夫人役(ウェンディ・ヒラー)としてシドニー・ルメット監督にオファーされていたそうです。
しかしイングリッド・バーグマン自身が、

私このおかしな乳母の役がいい~。
この役やったら演るよ~。
と希望し、宣言通り「おかしな乳母」をこの上なくおかしく演じることになりました。
名優は自分に合った役を選ぶ眼力も持ってるんですかねえ~。
全然持ってない人もいるけどねえ~。
メグ・ライアンのこと言うてんちゃいますよ~。
映画【オリエント急行殺人事件(1974)】の感想一言
ポアロを演じた名優アルバート・フィニーが、2019年2月7日に亡くなりました。
ご冥福をお祈りいたします。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。