1967年/アメリカ/監督:スタンリー・クレイマー/出演:スペンサー・トレイシー、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ヘプバーン、キャサリン・ホートン、セシル・ケラウェイ、ビア・リチャーズ、ロイ・グレン、イザベル・サンフォード/第40回アカデミー主演女優・脚本賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
自分の子供にはまっとうな人と結婚してもらいたいですよねっ!
ちょっとお待ちよ、「まっとうな人」ってどんな奴?
…ふう~ん。
じゃあ立派な職業で名家出身の黒人連れてきたらどうする?
……っ!!
公開当時(1967年)のアメリカほど黒人差別が激しくない現代の日本に生きる私だって、子供に結婚相手として紹介されたのが黒人だったらやっぱり面食らいますよ。
「すぐ離婚するんちゃうか」
「孫がいじめられるんちゃうか」
「親戚づきあいできるかな」
「ご近所に何て言おう」
「先祖の墓参りはどないなるんや」
日本国籍であろうが日本語ペラペラであろうが絶対多方面において心配になるって。
そんな世界各国共通の子を持つ親の心理をスペンサー・トレイシーとキャサリン・ヘプバーンが巧みに表現してみせたシリアスドラマ、【招かれざる客】です。
名優スペンサー・トレイシーはこれが遺作となりました。
映画【招かれざる客】のあらすじザックリ
可憐な白人乙女が選んだのはインテリ黒人
新聞社経営の父親マット(スペンサー・トレイシー)と画廊を持つ母親クリスティーナ(キャサリン・ヘプバーン)の娘ジョアンナ・“ジョーイ”・ドレイトン(キャサリン・ホートン)は、紹介したい人がいると言ってある朝実家に戻ってきます。
あまりの突然の出来事に驚きつつも歓迎するクリスティーナでしたが、お相手の男性を見て愕然。
なにしろ23歳のジョーイが結婚相手として連れてきたのは、37歳でバツイチの医師…で、「黒人」のジョン・プレンティス(シドニー・ポワチエ)だったから。
ちなみにジョーイを演じたキャサリン・ホートンはキャサリン・ヘプバーンの実の姪っ子(キャサリン・ヘプバーンの妹の娘)です。
めっちゃキューティ。ハマり役。
伯母のキャサリン・ヘプバーンのクール系の印象とは全然違うよね。
彼らを見て動じないのはたった一人だけ
アフリカ系アメリカ人のバラク・オバマ氏が史上初の黒人米大統領になったり、母親がアフリカ系アメリカ人であるメーガン・マークルがイギリス王室に嫁いだり、親子ほどの年の差カップルが普通にいたりLGBTの権利などもさかんに叫ばれている昨今では、黒人と白人のカップルなんて珍しくもなんともないですけど、1960年代のアメリカでは異人種カップルである彼らの未来は困難に満ちるであろうことが容易に想像できます。
だってジョンとジョーイが親し気に歩いているだけで、タクシーの運転手からドレイトン家のメイド、クリスティーナの画廊のスタッフまで、みんながみんな好奇の目で彼らをじっとりと見つめてくるんですから。
そしてそれは血を分けたジョンとジョーイの両親とて同じ。
ジョンの父親なんてジョーイを見て露骨に固まってますからね。
いや実際に会わせるまで「白人女性と付き合ってるねん」って言ってなかったジョンも悪いんだけどね?
唯一彼らを見ても一瞬たりともひるまなかったのは、マットとクリスティーナの親友ライアン神父(セシル・ケラウェイ)だけ。
ライアン神父は、「大変なことになったどうしよう!」と戸惑うマットとクリスティーナを尻目に、あっけらかんとこう言ってのけてくれます。
大丈夫大丈夫!
職業柄異人種同士の結婚なんかもう何組も見てきたで。
不思議とそういうカップルの方がうまく行ってるわ、がはは!
良かった。
とりあえずこんな人が一人でもいてくれて良かった。
さて、お次はどうしよう。
「差別しちゃだめよ」と育てた結果に戸惑う夫婦
子供には「お友達と仲良くしなくちゃだめよ」って言って教えますよね。
仲間外れしちゃだめとか容姿をからかっちゃだめとかって。
大体マットは自分の新聞でもっぱら自由主義を掲げるリベラリスト。
ジョーイという女性は、そんな両親の教えを言葉のままに完璧に吸収した娘さんなんです。ジョーイの天真さはもしかしたら世界を救うんじゃないかってくらいすごい。
どうやったらここまで素直で汚れない天使のような娘に育つんやと。これぞマットとクリスティーナの教育の賜物ですよ。
二人は我が子を自慢しまくっていい。
一方でジョンも世界的に有名な医師であって、ジョーイを愛しているけど自分の立場もちゃんとわきまえているし、マットやクリスティーナや自分の両親の立場も考えることができる思慮深い出来た人間。
「黒人と白人」であることを除けばこれほどお似合いの夫婦もいませんよ。
それなのに「我が事となれば錦の御旗の下に本音がのぞくか」とライアン神父がツッコむように、これまでさんざん人種平等を説いてきたはずなのに、いざ自分の身に降りかかると中々人種間の隔たりを受け入れることができない両親の葛藤と矛盾が痛いほどに伝わる映画です。
映画【招かれざる客】の感想一言
最後にはどこに落ち着くのかと言えば、月並みですけど結局「自分の子供を信じられるかどうか」だと思います。
二十歳も過ぎたらもう大人だし、その決断が間違っていれば自分でケツ拭けばいいだろうし(たぶん助けちゃうけど)。
とにかくマットとクリスティーナのように、子供が決めたことは尊重してあげられる親になりたいよね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。