1992年/アメリカ/監督:ロブ・ライナー/出演:トム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、デミ・ムーア、ケヴィン・ベーコン、キーファー・サザーランド、ケヴィン・ポラック、ウォルフガング・ボディソン
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私はスポーツ苦手なんで、俗に“体育会系”と呼ばれる人達の生きる世界には無縁です。最近はよく熱血過ぎるコーチや行き過ぎた指導なんかが取り沙汰されてニュースになったりしてますよね。
我が子に大リーグボール養成ギプスを強要する星一徹が現代社会に生きていればマスコミや世論の格好の攻撃の的なんでしょう。
でもあの大リーグボール養成ギプス(だけじゃないけど)のお陰で、星飛雄馬は度重なる苦難を乗り越え大リーグで活躍するスター選手になることができたのです。
「しごき」を「愛」と取るか「いじめ」と取るか…。
いやいや、それ以前に人として軍人として最も大切なことをドーソン上等兵(ウォルフガング・ボディソン)が口にしています。
いい映画だ。
映画【ア・フュー・グッドメン】のあらすじザックリ
キューバのグアンタナモ海軍基地で殺人事件が発生
海軍のサンティアゴ一等兵(マイケル・デロレンツォ)が同じ部隊のドーソン上等兵とダウニー一等兵(ジェームズ・マーシャル)の2人に殺害される事件が発生。
部隊の落ちこぼれだったサンティアゴは訓練について行けず、上層部に異動を懇願する手紙を14通も送付していた矢先でした。
ハーバード出の取引専門の弁護士キャフィ中尉
彼らの弁護を任されたのはハーバード出のインテリ弁護士ダニエル・キャフィ中尉(トム・クルーズ)。彼のオトンも司法長官であった超エリート。
でもキャフィは趣味の野球に夢中で、事件は検察との取引で示談にして終了。法廷に立って戦うなんて時間の浪費はしません。
よく観てると今までのキャフィの周囲には取引に応じる合理主義の検察官ジャック・ロス大尉(ケヴィン・ベーコン)や、1歳になる娘のことしか考えてない事なかれ主義のサム・ワインバーグ中尉(ケヴィン・ポラック)のような人物しかいません。
しかしひとたびこの事件に関わってみると、内務課に勤務していながらも真実を持って人命を救おうという情熱溢れるジョアン・ギャロウェイ少佐(デミ・ムーア)や、国民を守るという崇高な使命に燃えるドーソンやダウニーなど、全力で生きている人をたくさん目にすることになります。
彼らに感化されたキャフィは、権力がたくさん絡んだ無謀な裁判に挑みます。
悪しき風習“コードR(レッド)”とは?
そもそもドーソンとダウニーがサンティアゴを襲ったのは、ジョナサン・ケンドリック中尉(キーファー・サザーランド)からの“コードR”に従ったためだと言います。
コードRについて聞かれたドーソンの答えはこう。
なんか小難しく言ってるけど要するに「しごき」とか「お仕置き」、「制裁」みたいな感じ。
下手こいた隊員に暴行したり飯抜きの罰を与えたりするってこと。
ドーソンとダウニーには殺意はなく、ただ上官の命令に従ってサンティアゴの口をふさぎ縛り上げ丸坊主にしてやろうとしただけ。
でもケンドリックはそんな命令をした覚えはないの一点張り。
勝敗の行方は上官がどうやってコードRを発令したことを自供させるかにかかっています。
「国民の命を預かる」ということ
結論から言うとコードRは発令されています。
まあ誰もサンティアゴを殺すつもりまではなかったんですけど。訓練についていけず転属願いを出していた彼は、さぼっている訳でも低能だった訳でもなく、本当に重い病気だったんです。そしてコードRの「しごき」のさなか、「過失」により死んでしまったと。
まあどちらにしても体調不良を何度も訴えている隊員にコードRとはこれいかに、ってことです。
そしてコードRを出したのは誰かと言えば、前出のケンドリックなんて小者ではありません。
グアンタナモ基地の司令官ネイサン・R・ジェセップ大佐(ジャック・ニコルソン)です。
出た!
悪い!
ジャックが悪い!
かっこいい!(←好き)
ジェセップ大佐の名言、大義
黒幕というか最大の敵というか、正義のヒーローキャフィに対するヴィランとしてジェセップが描かれるんですけど、この人そんなにおかしなこと言うてるかな?
この人ね、自分でもたびたび言うてるけど、国を守っとるんですわ。
訓練について行けないから異動してくださ~い、とか、しんどいから休ませてくださ~い、とか、そんなこと言ってて国を守れるんかって言ってるんです。
前線で弱音吐いたり指揮系統を無視したりする奴は、自分の命を脅かすばかりか仲間の命や果ては国の存亡まで危機に陥れるかも知れない。
だから根性叩き直したまでやと。
部活や教育の現場での体罰はあかんでしょうが、こと生死がかかっている軍隊に関しては、【西部戦線異状なし】なんかを観てても思いますけど、ホントに前線は常軌を逸してるんで、訓練時にこういったしごきに耐えたことが前線で役に立つんじゃないの?とか思ったりします。
「大佐のしごきに比べたらまだまだ楽だ!」みたいな。
いや死ぬまでしごいたらあかんけどさ。
1930年/アメリカ/監督:ルイス・マイルストン/出演:ルイス・ウォルハイム、リュー・エアーズ、ジョン・レイ、アーノルド・ルーシー、ベン・アレクサンダー、スコット・コルク/第3回アカデミー作品・監督賞受賞注※このサイトは映画[…]
大体事件の調査のためにグアンタナモ基地にやって来たキャフィがジェセップに向って舐めた口きいた時の怒りももっともだし。
ちょー待てチンカス。
なんやその口のきき方。
ちゃんと丁寧に頼んだらんかい。
そりゃ怒りますよこんなん。
相手はもうすぐ国家安全保障会議のメンバーになる人ですよ?
何度も最前線で戦ってきた人なんですよ?
今まで安穏とハーバード大学でお勉強してた国防の何たるかも知らない青二才にデカい顔されたらそらキレるって。
裁判に勝利したキャフィに向ってジェセップは「お前のやったことは国を軟弱にしただけや!」と言います。ここまではさすがに極論やとしても、でもこれに対して「この人でなしが!」って返すキャフィもちょっとどうかしてるよね。
目くそ鼻くそ。
どんぐりの背比べ。
最後くらい礼を尽くせよ。
とか悶々としながら観てたら、冒頭にも書いたドーソンの最後のセリフでハッとさせられるんですよね。
もっぺん書きます。
概して言えばこれに尽きる。
「国を守る」もいいけど、それ以前に苦しんでる身近な部下や同僚を助けられないなんてお笑い種やってこと。
増してやジェセップ大佐なんて部下に罪をなすりつけようとしてるしね、それはあかん。
性根を叩き直すためにコードRを発令したのは俺や。ドーソンとダウニーは命令に従っただけ。
責任は俺が取る。
ジェセップがここでこう言ってたら全然結果は違ってたんでしょうけどね。
ジェセップだったら殺人罪には問われてなかったと思うし。
キャフィの「人でなし」発言以外はそれぞれ自分の正義をぶつけ合っていて非常に面白い仕上がりになってる映画です。
映画【ア・フュー・グッドメン】の感想一言
海軍を扱った法廷ドラマなので胸ヤケするくらい男臭くなりがちなところへ、紅一点デミ・ムーアが出演しているのがアクセントになってて良い。女性が絡んできたからといって90年代の映画によく見られた「脈絡のないラブシーン」や「無理矢理な恋愛関係」もなくて好感が持てます。
これでデミ・ムーアがトム・クルーズと愛し合ったりしてたらちょっと着地点が見えなくなってたよね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。