2000年/アメリカ/監督:M・ナイト・シャマラン/出演:ブルース・ウィリス、サミュエル・L・ジャクソン、ロビン・ライト・ペン、スペンサー・トリート・クラーク、シャーレイン・ウッダード
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1999年の【シックス・センス】で大どんでん返し監督として一気に有名になったM・ナイト・シャマランの作品。
1999年/アメリカ/監督:M・ナイト・シャマラン/出演:ブルース・ウィリス、ハーレイ・ジョエル・オスメント、オリヴィア・ウィリアムズ、トニ・コレット、ドニー・ウォルバーグ、ミーシャ・バートン、M・ナイト・シャマラン注※この[…]
「俺、ケガしたことあったっけ?」
小学校の頃に骨折したことも、先月突き指したことも、なんやったら今現在風邪気味で薬飲んでることも忘れて、この映画を観た人みんなが一度は考えるはず。
そしてすぐに過去のケガや病気に思い当たって意気消沈するんですよね。
「俺…【アンブレイカブル】ちゃうかった…」
まあまあ、気を落とさないでください。
私もアンブレイカブルじゃないんで。仲良し!
映画【アンブレイカブル】のあらすじザックリ
「アンブレイカブル」の意味は?
タイトルの「アンブレイカブル」の直訳は「壊れにくい」「破壊不可能」。
自分以外の乗客全員が死亡した列車事故で唯一生き残ったデヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)の持つ特異な性質(体質?)をあらわしています。

生き残ったデヴィッドの元に一通の手紙が届きます。
書かれていたのは一言だけ。
…なにこれ?
何かが始まった…!
このシーンのハイになる心理状態をどう表現したらいいか分かりません。
差出人はなく、封筒に書かれていた場所を訪ねてみると、そこはコミック関連の画廊でした。
“ミスター・ガラス”イライジャ・プライス
画廊のオーナーであり手紙の差出人であるイライジャ・プライス(サミュエル・L・ジャクソン)は、普通なら死ぬような事故から無傷で生還したデヴィッドはある種のヒーロー的素質を持ったアンブレイカブルである可能性を指摘します。

この時デヴィッドは息子のジョセフ(スペンサー・トリート・クラーク)を伴っているんですが、イライジャに向かって

という不安げな視線を投げかけるデヴィッドとは対照的に、父親がヒーローかも知れないという仮説に目を輝かせるジョセフの表情が何ともかわいい。

そりゃそうですよね、「父親が無敵のヒーロー」なんて事実が明るみに出た日にゃあ、速攻友達に自慢しまくるわ。
イライジャ・プライスの生い立ち
両手両足の骨が折れて産まれてきたイライジャは骨形成不全症という難病を患っていて、成人した今でも骨折しやすく、全身を分厚い衣服で守り杖をついて歩くという不便な生活を強いられています。
幼い頃は今よりもっと骨がもろかったのでしょう。
少し衝撃が加わるだけで骨がガラスのように粉々になってしまうイライジャは、他の子供達から“ミスター・ガラス”と呼ばれからかわれていました。
外に出ることを嫌がるイライジャに、母親(シャーレイン・ウッダード)はひとつ約束をします。


こうしてイライジャはコミックのコレクターとなりその道で大成し、ひとりで生活していけるまでに成長したのでした。
ちょっとしか出てこないんですけどこのオカンが地味にすごい。
絶望的な状況でも子供に生きる力を与え続けるなんて誰にでもできることじゃない。今でも画廊で販売の手伝いをしながらイライジャを自慢の息子だと口にする姿に母の強さと優しさが見て取れます。
イライジャ・プライスによるヒーローと悪者の特徴
コミックオタクであるイライジャ曰く、ヒーローにも悪者にも共通する点がいくつかあるのだとか。

●四角いアゴをしている
●特殊能力を持っている
●弱点がある
●頭が大きい
●ヒーローと正反対である
●あだ名がある
●元々はヒーローと友達である
この他、イライジャの母親が画廊に飾られたデッサンを見ながらこんなことも言っています。

他のキャラクターより悪者の目が大きいでしょう?
世の中に対する歪んだ視線をあらわしてるの。
ほんの少し異常なの。

ご丁寧にこれだけ詳しく伏線を張ってくれているというのに私はラストで完璧にひっくり返りました。
盲点というか、人間一度に二つの謎を追うことはできないように作られているのか、大半の人がこのヒーローと悪者の特徴のうち、ヒーローの特徴の方にしか注意が行かないんですよね。
対になる悪者の特徴も隠すことなく、それにマッチする人間も出てきているというのに、ヒーローの特徴に当てはまるデヴィッドだけに意識が注がれてしまう。
心理学か。
心理学の権威かシャマランは。

“アンブレイカブル”デヴィッド・ダン
「もしかしたらデヴィッドは不死身のヒーローなのかも知れない…!」
一度そう思ってしまった視聴者の高揚感は息子のジョセフ同様に止められたもんじゃありません。
デヴィッドは壊れない体だけでなく、罪を犯した者を嗅ぎ分ける能力と、飽くまで人間的な範疇を出ない程度の怪力を持っています。
イライジャにそそのかされてその気になってきたデヴィッドが(こう書くとちょっと笑える)ベンチプレスで力試しに挑む場面で、こっそり重りを足すジョセフにかける言葉は「グッジョブ!」しか思いつかない。
このジョセフの一歩間違えば命に関わる無茶な期待によってデヴィッドは自分の能力を信じるきっかけを得るんですから。

俺…
無敵のヒーローかも…!

ヒーローが目覚め最大の敵が確定
すごい終わり方でしたね。
ヒーローが自分の力に目覚め、助けを求める人を救って終わりだと思うでしょ誰だって。

ところがまさかの導いてくれた人物イライジャこそが最大の悪であったと。

イライジャ自身もまさか自分がデヴィッドと敵対する悪者であるとはこの瞬間まで気付いていなかったみたいですが、だとしたらイライジャはなぜ凄惨な事故を引き起こし続けたんでしょう?
一見すると自ら悪者に寄せていってるとしか思えない行為ですよね?
イライジャは言います。

イライジャはもしかしたら無敵のヒーローを見つけ出すことが自分の使命であり存在意義だと思っていたのでしょうか。
そのためには大きな犠牲を払っても仕方がないと。犠牲を恐れていては自分の存在意義は消えてなくなるから。
なんやったら自分の行いはアンブレイカブルを見つけるための聖なる行為だと思ってたかも知れません。
あかん。やっぱりだいぶいんでもうとる。

多大な犠牲を払ってヒーローが誕生し、その最大の敵が確定した瞬間に幕を閉じるという前代未聞のサスペンス。
イライジャのあだ名“ミスター・ガラス”にちなんで鏡を使った騙し絵のようなカメラワークや、M・ナイト・シャマラン監督独特の薄暗く彩度の低い映像も冴えていて、同監督作の中で私の一番のお気に入りです。
映画【アンブレイカブル】の感想一言

最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。