【西部戦線異状なし】

映画【西部戦線異状なし】あらすじと観た感想。異色の反戦映画

【西部戦線異状なし】

1930年/アメリカ/監督:ルイス・マイルストン/出演:ルイス・ウォルハイム、リュー・エアーズ、ジョン・レイ、アーノルド・ルーシー、ベン・アレクサンダー、スコット・コルク/第3回アカデミー作品・監督賞受賞

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【西部戦線異状なし】
©All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用
「フランスからの捕虜3万人や、はっはっは!」
「ロシアからはもっと多いわ!こりゃ笑いが止まらん!」
「僕も明日から出征ですねん!新人教育係!やりまっせ~!」

のっけからなんだか景気が良さそうな町民の会話が聞こえてきます。

軍国主義で好戦的なイメージがあるドイツが舞台の戦争映画だから「戦争バンザイ!」って感じのノリなんでしょ?なんて思いながら観てるとエライ目に遭う。テンション高めなのは実際に戦地に赴いていない町民達だけ。

 

本日の映画はドイツ側から見た世界大戦をアメリカが描くという異色の反戦映画です。

永遠に後世に遺ってほしい素晴らしい名画、【西部戦線異状なし】です。

 

 

 

映画【西部戦線異状なし】のあらすじザックリ

第一次世界大戦下のドイツ。兵士達が街中を行進する中、ある学校で老教師が祖国のために戦場で戦うことこそが名誉だと愛国心を説き生徒達を鼓舞している。生徒達は目を輝かせながら授業を中断し揃って入隊を志願しに行く。しかし実際の戦場で待っていたのはこの世とは思えない過酷な現実だった。

 

 

学校教育と前線の兵士たち

【西部戦線異状なし】には若い青年がいっぱい出てきます。

高校生なんだか大学生なんだか定かではないですが。

表通りを練り歩く兵士達が窓から見える学校の教室で、老先生から愛国心について説かれる二十歳そこそこの若いお兄ちゃんたち。

じいちゃん先生の愛国心講座
©All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用

その後彼らはまるで洗脳でもされたかのように目をキラキラと輝かせながら兵士に志願しに行きます。

 

老先生が掲げる愛国理想論で頭の中はお花畑状態、戦地の現状についての見聞など持ち合わせていない若者達が、こぞって戦場へやってきた時のビビりようったらありません。

そこには彼らが想像もしていなかった凄惨な世界が待っていました。

 

戦争映画といえば銃で撃ったり撃たれたり、爆弾落とされたり剣で刺されたり戦車が来たり戦闘機が飛んだり、そんなド派手な描写に持っていかれがちですけど、戦争の悲惨さってそんなとこだけじゃなくむしろもっと地味なとこにある事が【西部戦線異状なし】を観ているとよく分かります。

 

地味なことほどめっちゃ辛い。

 

ドブネズミ襲来

敵からの砲撃を避けるため塹壕 ざんごうで何日も過ごしていると、まずはドブネズミの襲来が待っています。

1匹や2匹じゃないです。何十匹もです。

 

大の男が狭い塹壕ざんごうの中で狂ったように小さなドブネズミを追いかけ回し、巻きあがる砂煙でまた見失う。

朱縫shuhou
ギャーっ!

ネズミは病気も運ぶしこれは深刻。ハムスターももー全然かわいくない。嘘かわいい。

参考 塹壕ざんごう = 敵弾から身を隠して行動するために掘った空堀からぼり

 

耐えがたい飢餓

そして空腹

そうなんですよ、戦地の兵隊って何食ってたんやろって思ってましたもん。

食べ盛りの若者達から順番に、飢餓に耐えられなくなった兵士たちはギャーギャーと喚きだします。喰えるもんなら人でも喰いそうな勢いで…。

©All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用

 

止まない砲撃音

これもやばい。

戦地では四六時中砲撃音が鳴っているわけですよ。

ずっと聞いていたらそのうち慣れてくるんじゃないの?なんて、ついつい甘っちょろいことを考えてしまうんですけど、兵士たちが塹壕で砲撃音を聞きながらひたすら身を隠す場面を目にすると、素直に「申し訳ございません、舐めてました」と土下座するしかありません。

 

今書いてて思い出したんですけど、阪神大震災のあとだって余震が怖くてしばらく安眠できませんでしたもんね。

戦争と比べたらアレですけど…寝てる間に命の危険が迫る状況では人間はまともに眠ることができないんだと思います。

 

睡眠不足で冷静な判断もできなくなり砲撃音によってヒステリーが引き起こされるという悪循環…。狭い塹壕で大きな男達が数十人雑魚寝でさ。

いやもう精神崩壊する。

 

目の前で「人間」が死んで行く

彼らは実は、自分達が「どこで」「誰と」戦ってんのか分かってません。

列車で最前線へ送られてきましたが駅のプレートは外されています。

なんかわからんままに連れてこられたけど戦う相手はえっと…フランス?イギリス?

てかここどこ?

 

塹壕で数日間耐え抜いたかと思ったら、最前線では 誰が誰だか、ここがどこだか、何が何だか分からないうちに、目の前で敵か味方かも分からない「人間」がただバッタバッタと死んでいく。

 

何のために?

誰のために?

 

考え出すと胸が締め付けられて呼吸困難に…ゲエッホ、ゴホっ、おえっ。

©All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用

 

 

誰も幸せにならない無情の映画

束の間の安息時間に、兵士達がぼやきながらこんな冗談を言う場面があります。

兵士①
なんのために戦争なんてやっとんのやろなあ~。
兵士②
まあなんしか「国」と「国」が戦ってんねん!
兵士③
「国」って何やねん、が戦っとんのかい!

兵士達は爆笑します。

 

「国と国が戦っている」と言ったとて、もちろんその国の山さん海さん野原さんが戦ってる訳ではありません。

実際に前線で殺し合いをしているのは「人間」であることを巧みに描き出した名作です。

リュー・エアーズ
©All Quiet on the Western Front/西部戦線異状なしより引用

 

 

映画【西部戦線異状なし】の感想一言

朱縫shuhou

私が好きな戦争映画ベストなんやらに挙げるほどの秀作、滅多に言いませんけど言います。

 

「未視聴の方は是非ご覧ください」。

この物語は非難でも懺悔でもなくましてや冒険談でもない。

なぜなら死に直面した者にとって死は冒険ではないからだ。

これはたとえ砲弾から逃れたにしても戦争によって破滅させられたある時代の男達を描こうとしただけである。

出典:【西部戦線異状なし】冒頭字幕

 

 

>> 翌年(第4回)のアカデミー最優秀作品賞はこれ!

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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