1950年/アメリカ/監督:ヘンリー・コスタ―/出演:ジェームズ・ステュアート、ジョセフィン・ハル、ペギー・ダウ、チャールズ・ドレイク、セシル・ケラウェイ、ヴィクトリア・ホーン/第23回アカデミー助演女優賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
「夜も更けるにつれ」
素敵な言葉じゃないですか?
もう一度言ってもいいですか?
「夜も更けるにつれ」
出典:【ハーヴェイ】字幕
映画【ハーヴェイ(1950)】の一節です。
ホントに素敵な言葉ですよね。
夜が更けていくと、あらゆる事態は好転していくような気がします。
恋人たちは肩を寄せ合い、いがみ合ってた人たちの心も解けてゆく。
私も言ってみたいんで、ちょっとごめんなさい、いいですか?
「夜も更けるにつれ」
…気持ちいい~。
「優しさライセンス」くらい気持ちいい。
優しく誠実な人柄の役を演じることが多かったことから「アメリカの良心」と呼ばれた名優ジェームズ・ステュアートが、誰にも見えない「何か」と話す変人に扮したファンタジー・コメディ映画。
観れば今より少し人に「親切に」なれるかも。
映画【ハーヴェイ(1950)】のあらすじザックリ
「名刺をどうぞ。電話番号はこっちね」
屋敷の主人エルウッド・P・ダウド(ジェームズ・ステュアート)が出ていくやそそくさと何やらパーティの準備を始めるエルウッドの姉のヴィータ(ジョセフィン・ハル)とその娘マートル・メエ(ヴィクトリア・ホーン)。
年頃の娘マートル・メエのお婿探しの意味もあるこのパーティに、エルウッドがいると困るんだそうです。
だってエルウッドは誰にでも名刺を渡し、自分にしか見えない親友の「ハーヴェイ」を紹介して回るちょっと変わった42歳だから。
身内に精神異常者がいると分かれば適齢期の殿方だって逃げてしまいますもんね。
昼間は町の居酒屋「チャーリー」でハーヴェイとおしゃべりして過ごすエルウッドを、なんとか今までひた隠しにしてきたヴィータでしたが、パーティの真っ最中にエルウッドが帰宅したことですべては水の泡となってしまいます。
あれえ?
パーティしてたんや〜僕も呼んでよもう〜。
やあ、僕はエルウッド・P・ダウド。
こちらはハーヴェイ。
よろしく。
誰もいない空間に手を差し伸べながらエルウッドがこう話しかけると、予想通りパーティの招待客はみんな帰ってしまいます。
…まあ関わり合いになりたくないわねこんな変人。
ちょっと退いてくれます?
ハーヴェイが通れないんで。
…すみませんね、さ、ハーヴェイ、どうぞ(←誰もいない)。
…ああ~…、とりあえず用事があるんで失礼します。
秀才が人をからかって遊んでいるようにも見えるし、正真正銘の狂人のようにも見える…ジェームズ・ステュアートの演技力が光ります。
精神病院に入れられるエルウ…ヴィータ?!
ついに思い余ったヴィータが、エルウッドを精神病院に入れようとして逆に取り乱した自分が精神異常者だと診断されて収監されるのが哀れ過ぎて笑っちゃう。
そしてエルウッドこそが正常だと思いこんだ精神科医のサンダーソン(チャールズ・ドレイク)と看護師のケリー(ペギー・ダウ)は、物腰柔らかで感じの良いエルウッドとの軽快な会話に夢中になってしまって、彼が何度もハーヴェイを紹介しようとしているのを天才的にスルーします。
いやそこそこ!
椅子椅子!
その 空の椅子 絶対変やん!
まさか入院予定患者だなんて思われてもいないエルウッドはごく自然に病院を出て行ってしまいます。
その後エルウッドが本当の患者であることに気付いた病院関係者たちはすぐさま彼を追いかけますが、なぜかちっとも捕まりません。捕まえるどころか「ハーヴェイ病」とも呼べるかもしれない幻覚症状を伴うエルウッドの病気(?)は伝染し、同じようにハーヴェイが見えてしまう者まで現れる始末。
謎の親友「ハーヴェイ」
ハーヴェイの正体は神話や伝説に出てくるプーカという妖精。いたずら好きで動物の姿をしているんですって。
そしてエルウッドにくっついているプーカは「ハーヴェイ」という名の190cmを超える巨大な白ウサギだそうです。
ウサギって言うてもデカすぎて愛らしさの欠片もないな。
不思議な世界観ですよ。
「ハーヴェイが見える」と言ったら精神病院に入れられるのかと思いきや、ハーヴェイのことを普通に認識している人も何人かいるみたいだし。
大体エルウッドを精神病院に入れようとしたヴィータとマートル・メエだって、本当は何度か巨大な白ウサギを見てしまっているんですよ。なのに存在を認めようとしない。エルウッドの影響で自分まで「幻覚」を見るようになってしまっただけだと思ってる。
そんなヴィータは映画の最後で財布を無くし、「隠したのは絶対にハーヴェイだ!」と言って怒るんです。
これってつまり、「ハーヴェイは実在する」と証言してしまったようなもの。
もお~、ホントはかなり前から確信してたんでしょ?って感じで何だかとっても微笑ましい。
でもハーヴェイを信じない人がいたってエルウッドもハーヴェイも怒ったりしません。そもそも彼らはとても忙しいので怒ってる暇なんかないんです。
彼らは居酒屋の席に座って、マティーニを2つ注文し、人々の話に耳を傾けるのに忙しい。
エルウッドいわく、居酒屋で「どうでもいい話」をする人はいないそうです。みんな「大事な話」をしに来るんだそうです。
優しさが欲しいサラリーマンなんかが聞いたら泣いて喜びそうな考え方ですよね。
「アイツは頭がおかしい」と思われるくらい一切の悪意を消し去り人に親切にしてみたいと思ってしまう正真正銘の名作。
フランク・キャプラ監督の映画っぽいけど違います。ドイツ出身のヘンリー・コスター監督でした。ウンダバー!
映画【ハーヴェイ(1950)】の感想
エルウッドいわく、ハーヴェイが余りにも素晴らしいから、人々は感動しすぎてすぐに立ち去ってしまうのだそうです。
素晴らしすぎて、妬んでしまうから。
究極のミラクルポジティブシンキングとも取れますが、現実に人間は自分より優れた人や幸せな人を妬む生き物です。
とすると、そんな「素晴らしい」ハーヴェイを出会ってすぐに受け入れ、それからも対等な関係でいられたエルウッドは、ハーヴェイと同じくらい素晴らしい人だってことではないでしょうか。
エルウッドがハーヴェイを見ることができなくなる注射を打たれなくてホントによかった!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。