【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ

映画【キング・オブ・コメディ】あらすじ感想。M・ブルックスとW・アレンに上から物申す

【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ

1982年/アメリカ/監督:マーティン・スコセッシ/出演:ロバート・デ・ニーロ、ジェリー・ルイス、ダイアン・アボット、サンドラ・バーンハード、シェリー・ハック、トニー・ランドール、マーティン・スコセッシ

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

マーティン・スコセッシロバート・デ・ニーロが組んだ映画でハズしたのってあったかな?

【タクシードライバー】でしょ、【レイジング・ブル】でしょ、【グッドフェローズ】でしょ、本日の映画【キング・オブ・コメディ】でしょ。

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どれもこれも傑作じゃないのよ。ホント内臓が踊り出すくらい面白い。

今度「スコセッシとデ・ニーロ映画ランキング」作ろう。

 

 

 

映画【キング・オブ・コメディ】のあらすじザックリ

コメディアンとして有名になりたいルパート・パプキンは、有名コメディアンのジェリー・ラングフォードに接触し強引に自分を売り込む。その後、一緒に食事に行った際、ルパートはジェリーから自分の代役になって欲しいと頼まれる。だがこれはすべて彼の妄想だった。

 

 

怖いものって目が離せない

人間の「恐ろしいものから目が離せない」心理を巧みに捉えた映画。

だって主人公のルパート・パプキン(ロバート・デ・ニーロ)は無茶苦茶怖い

「怖い」って言うのはもちろん「怒られるから怖い」とか「殺されそうで怖い」とかじゃなく、「頭がイカれすぎてて怖い」ってこと。

【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

コメディアンを目指しているという34歳のルパート・パプキンは、超人気コメディアンのジェリー・ラングフォード(ジェリー・ルイス)をストーカー女の強引なアプローチから救ったことで、2人きりで話をする機会を得ます。

グイグイ自分を売り込んでくるルパートに困ったジェリーは、ネタを収録したテープを事務所に送ってくるように伝えてその場を乗り切ります。

【キング・オブ・コメディ】ジュリー・ルイス
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

少し話は逸れますが、【キング・オブ・コメディ】ではしかめっ面が多いジェリー・ルイスは実は本物のコメディアン。しかもシナトラ一家の一員であるディーン・マーティンとのお笑いコンビ結成時はボケを担当していましたから、本来は飛んだり跳ねたり変顔したりして笑いを取っていた人です。

それが1980年代にはこの演技力とこの大御所感ですよ。コメディアンってホントに芸達者で多才な人が多いよね。

 

さて一方のルパートは、ジェリーに言われた「事務所にテープを送ってくれ」を過大解釈。いや過大解釈じゃないな、何やったらそこから発展して、友達になったジェリーとの夕食の席で「番組の司会を6週間代わってくれへんか」と頼まれる場面を妄想し始める。それも自分のセリフは全部普段以上の声量でもって声に出しながら妄想する

【キング・オブ・コメディ】【タクシードライバー】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

やばいよやばいよ(出川風)。

まあね、誰だって妄想くらいはしますやん。

大好きなジャック・ニコルソンがある日突然家まで迎えに来るんじゃないかとかね?そしたら子供を捨ててアメリカに行かなあかんのか子供も一緒に連れて行ってもいいのかとかね。考えますよそりゃ。隔日で。

助手
(…………。)

でもその妄想を声に出しながら自室で寸劇を繰り広げたりはしませんよ。

【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用
ルパート

メル・ブルックス?最高やろアイツ、笑わせよるなあ~!

え?ウディ・アレン?ああ~ツレツレ。

コメディの巨匠つかまえて上から目線で語ったりもしませんよ。

参考 メル・ブルックス=映画監督、俳優、コメディアン。【プロデューサーズ】【ブレージングサドル】【ヤング・フランケンシュタイン】など、数多くのコメディ映画を手掛けた。

参考 ウディ・アレン=映画監督、俳優。自意識過剰気味の天才ニューヨーカー。オスカー受賞作【アニー・ホール】他、独特のジョークを利かせた作品づくりで知られる。

 

明らかにどこかがおかしい34歳独身男性の日常から目が離せません。

 

ルパートに匹敵する狂気の持ち主マーシャ

そしてこれはもしかしたら他の映画には余り観られないパターンなのかも知れないけど、【キング・オブ・コメディ】には頭のイカれた人間がもう1人出てきます。

ジェリーを執拗に追いかけ回すストーカー女マーシャ(サンドラ・バーンハード)です。この時のサンドラ・バーンハードはガチでパンチがききすぎていてこの女こそ目が離せない。

【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

「イカれた奴ばっかりの集団」はあり得るんですよ?例えば【ファーゴ】スティーヴ・ブシェミピーター・ストーメアとか、【イングロリアス・バスターズ】ブラッド・ピット率いる秘密特殊部隊とか。彼らはひとつの目的に向かって集まってるサイコ軍団(or2人組)でしょ?こういうのはよくある。

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悪者ヴァルツ

彼らと違ってルパートとマーシャは、それぞれが「独立した変態」です。

「利害が一致したから手を組んでる」って言うのともちょっと違う。そんな単純な約束事にすら至っていない。一応2人で仲良く協力してジェリーを誘拐することには成功しますが、そこに至るまでもそれ以降も、お互いが自分の要求しか言わないから支離滅裂。それは双方が独立した変態だからです。

【キング・オブ・コメディ】ジュリー・ルイス
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

このパターンは珍しい。

こんな変態2人に狙われる羽目になるジェリーの立場になってご覧になってみてください。ますます目が離せなくなりますよ。

 

ルパートのおかんと受付のおばはんでめちゃ笑う

ジェリーを誘拐したルパートは、TV局を脅して憧れのジェリーの番組「ジェリー・ラングフォード・ショー」に出演。

狂気じみた自室で何度も何度も練習して暖めてきたネタを、大衆の前で披露します。いじめられっ子だった自分の悲惨な少年時代を面白おかしくネタにして、ルパートはドッカンドッカン受けまくります。

【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

このネタも普通に笑えますけど、私としては自室で漫談の練習に精を出すルパートに絶妙のタイミングで話しかけてくるルパートのおかんの「間」の取り方と、ジェリーの会社の受付の前の椅子でジェリーの帰りを待つルパートを恐々 こわごわ見つめる受付のおばはんの「リアクション芸」に勝るものではないと思っています。

【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

 

何にもしてないのに迷惑被る2人

世の中には人畜無害なへんこもいるにはいるけど、そんなへんこは圧倒的少数派。ほとんどのへんこは大抵他人に(身内にも)迷惑をかけています。

「被害を被る他人」の最たるものが、ルパートが勝手に焦がれる女性リタ(ダイアン・アボット)。

「へんこに好かれてる」ってだけで彼女自身はいたって普通の人なのに、ルパートと一緒にジェリーの別荘へ上がり込む姿は申し訳ないけど滑稽すぎてなんとなく涙が出そう。もちろん彼女は本当はルパートがジェリーから誘われていないなんて夢にも思ってない。

【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

「穴があったら入りたい」って慣用句がこれほどしっくりくる状況もないでしょうよ。

 

あとね、ルパートがジェリーを誘拐してTV番組ジャックをしたことで、当初出演する予定だった作家が共産党員じゃないかと疑われる場面が地味にウケる。

【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

ルパートの要求がまさか本当に「一夜限りの帝王になりたい」なんて純粋(?)なものだとは思っていない関係者らは、“コメディの帝王”と名乗る人物による一連のこの誘拐事件が、テロ組織か共産党の陰謀によるものかも知れないと考えているんです。

 

違うよ。

全然違うよそんなもん。

ルパート・パプキン(34)はただTVで漫談やりたいだけや言うてんねん。

 

 

ルパート・パプキンとトラビス・ビックル

同じロバート・デ・ニーロが演じた役柄の中で、どちらもかなり自分本位な妄想を抱いているという点で似ていると指摘されるのが、【キング・オブ・コメディ】のルパート・パプキンと【タクシードライバー】のトラビス・ビックル。

【キング・オブ・コメディ】【タクシードライバー】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

ルパートの症状が幼少期からの家庭環境や学校生活に起因するのに対してトラビスがサイコじみたのはベトナム戦争に出征したことが大きく影響していると思われるので、“問題の根っこの深さ”は違うんですけど、やっぱり自室で独り言をつぶやいてみたり、ふとした瞬間に自分に都合の良い妄想を膨らませてみたり、2人の共通点は多いです。

The King of Comedy5
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用

ただ彼らを突き動かしている「原動力」は全然違う。

 

トラビスは「憎悪・(行き過ぎた)使命感」

ルパートは「自己顕示欲」

 

どっちがへんこの症状として重そうかと聞かれたら、やっぱりルパートの方が根が深くて治療の すべがなさそうですよね。だって自己顕示欲を持つって悪いことじゃないし。治しようがない。

なるほど、だから怖すぎてルパートから目が離せないんだね。

 

 

映画【キング・オブ・コメディ】の感想一言

朱縫shuhou

「ルパートが逮捕されたあとのシンデレラストーリーは現実なのか妄想なのか」という論争について、私は“妄想だった派”です。

なぜかと言うと、仮出所してきたルパートが舞台に立って司会者に紹介された時、ルパートがしゃべらないから

司会者「それではみなさん、ご紹介しましょう!今話題の人、ルパート・パプキンの登場です!」
【キング・オブ・コメディ】ロバート・デ・ニーロ
©The King of Comedy/キング・オブ・コメディより引用
朱縫shuhou

ここで司会者は、6回もルパートの名を呼びます。

なのにルパートはネタを始めない。

 

単に感極まって言葉が出て来ないようにも見えるんですけど、私はここでルパートは“ネタが飛んだ(忘れた)”んだと思っています。

電波ジャックをした時ドッカンドッカンウケまくっていたあのネタは、ルパートの渾身の作。いや、渾身の作と言うか、もしかしてルパートの持ってるネタってアレだけなんじゃないの?って疑問が沸いてきませんか?

アレ以外にネタを持ってないんですよ恐らく。

だから彼の妄想もここまで。

想像力が豊かすぎるため「別のネタ」を詳細に頭に描かないことにはドッカンドッカンウケてる自分を想像することができない。だから大衆の前でへらへら笑って突っ立って終わるしかなかったんじゃないかな。

 

あなたはどう思われましたか?

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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