【三十九夜】ロバート・ドーナット

映画【三十九夜】あらすじと観た感想。ヒッチコックのスパイ・サスペンス

1935年/イギリス/監督:アルフレッド・ヒッチコック/出演:ロバート・ドーナット、マデリーン・キャロル、ルーシー・マンハイム、ゴッドフリー・タール、ペギー・アシュクロフト、ジョン・ローリー、ヘレン・ヘイ、ワイリー・ワトソン

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

三十九夜のヒッチコック
©The 39 Steps/三十九夜より引用

リュミエール兄弟がパリで「シネマトグラフ」による初興行をしたのが1895年。

映画史上初めて「映像」に「物語性」を持たせたとされる【大列車強盗(1903)】の公開が1903年。

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20世紀初頭に誕生する映画の都ハリウッドは、恐慌を乗り越えて間もなく黄金時代を迎えます。

助手
(何の話やねん…)

いえね?映画ってほら、実に100年以上もの歴史があるワケじゃないですか。

それってつまり、今現在、黎明期からの映画を順番にずーっと追ってきた(観てきた)人間はこの世に存在しないということでしょう?

まあ世の中には「わしゃあ15歳の頃から映画漬けじゃ」っていう115歳の元気なおじいがいたりするのかも知れないけどそんな特異な人はちょっと置いといて。

普通に考えたらリュミエール兄弟の「シネマトグラフ」から21世紀の最新作まで、古今東西津津浦浦の映画をリアルタイムで観続けるなんてことはたった一度きりの人生ではほぼ不可能で、増してや平成生まれの私(嘘つけ!)には逆立ちしたって叶わないワケですわ。

 

でも古い映画を愛する私はたびたび思うんです。できることなら映画は「順番(公開年)通り」に観てみたかったものだなって。だって映画の印象や評価って、観る順番によってガラリと変わったりするじゃないですか。

私にとってはイギリス時代のアルフレッド・ヒッチコック監督作【三十九夜】なんかがまさしく、そう思わせる映画のひとつだったんですよね。

 

映画【三十九夜】のあらすじザックリ

「ミスター・メモリー」という男の芸を見ていたハネイは、銃声で騒動になったホールから謎の女性とともに自分のアパートに戻る。スパイであると言う彼女は重要な機密が奪われそうだと語った翌朝、印がついた地図を持った状態で刺殺される。ハネイは地図を持って汽車に乗り込むのだった。

史上初めて成功した「スパイ・サスペンス」

本日の映画【三十九夜】は、「“サスペンスの神様”アルフレッド・ヒッチコックの原典」とも讃えられる傑作。映画界隈では「史上初の本格スパイ・サスペンス」として認識されています。

言うたら【ミッション:インポッシブル】の元祖ですわ。

【三十九夜】ロバート・ドーナット
©The 39 Steps/三十九夜より引用

ロンドンのミュージック・ホールで、どんなことでも記憶できる男「記憶屋(ワイリー・ワトソン)」のビックリ人間ショーが繰り広げられていました。

観客
英国のヘビー級王者は?
記憶屋
ボブ・フィッツシモンズの王座獲得は1897年10月、ネバダ州の一戦で。彼は34歳でした。
観客
ウィニペグからモントリオールの距離は?
記憶屋

ウィニペグはカナダ第3の都市です。

モントリオールとの距離は2292kmですね。

こんな具合に、観客の質問に答える形で自らの卓越した記憶力を披露する「記憶屋」。大いに沸き立つ観客たち。たちまちホールはお祭り騒ぎ。

その時、ホールに一発の銃声が響き渡ります。

ホールにいた人々はパニックになり、我先にと出口へ詰めかけます。

 

混乱の中「記憶屋」に質問を投げかけていた観客のリチャード・ハネイ(ロバート・ドーナット)の目の前に、群衆にもみくちゃにされている見ず知らずの美女がいました。

【三十九夜】ロバート・ドーナット
©The 39 Steps/三十九夜より引用

そして彼女は包み込むようにして自分を屋外に連れ出してくれたハネイに、「私をあなたの家に連れて帰って」と頼むのです。

間違えられた男の逃走劇

新手の逆ナンパかと思ったあなた、残念でした。

彼女は名をアナベラ(ルーシー・マンハイム)と言い、お金で動く諜報員であるらしい。諜報員…ええ、スパイですよスパイ

アナベラは何やら重要な機密を握っていて、敵対する組織から追われているんですって。

アナベラ

だから少しかくまって欲しいの。

とにかくちょっと疲れちゃったから明日の朝まで休ませて。

と振っといて、翌未明にアナベラは殺害されてしまいます。

 

残ったのは殺されたアナベラの手に握られていた謎の地図と、「指の先がない男」が敵対組織のボスであるという情報だけ。アナベラ亡き今、敵が次に狙うのはアナベラと接触して何らかの秘密を知り得た可能性のあるハネイであることは必然。

【三十九夜】ロバート・ドーナット
©The 39 Steps/三十九夜より引用

何も知らないハネイはたまたま助けた女のせいで謎の組織に追われる羽目になるんです。

【北北西に進路を取れ】より先に観たい【三十九夜】

朱縫shuhou

…ん?

ちょっと待って?

こんな映画どっかで観たような…?

ですよね。

それってもしかして、これちゃいます?

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【北北西に進路を取れ】。そうなんですよ、焼き直しかと思うくらいよく似てる。

【三十九夜】ロバート・ドーナット
©The 39 Steps/三十九夜より引用

この事実に気付いた時の、【三十九夜】よりも【北北西に進路を取れ】を先に観てしまっていた私の印象はこんな感じ。

【三十九夜】って【北北西に進路を取れ】によく似てる。

【北北西に進路を取れ】が公開されたのは【三十九夜】よりも24年もあとなのに、【三十九夜】【北北西に進路を取れ】似てる、と感じたんです。

 

これって何となく気持ち悪くないですか?

【三十九夜】ロバート・ドーナット
©The 39 Steps/三十九夜より引用

ここで思い出して欲しいのが冒頭のお話で、リアルタイムで【三十九夜】を観られなかった後世の人間のほとんどが、例えば「アルフレッド・ヒッチコック監督の映画を年代順に観て行こう!」とでも思わない限りは「【北北西に進路を取れ】ありきで(のあとに)【三十九夜】を観る」という状況になってしまうわけですよ。

私に限らず現代っ子は得てして【マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)】ありきで【マッドマックス(1979)】を観て、【スカーフェイス(1983)】ありきで【暗黒街の顔役(1932)】を観るわけですよ。

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だって【キングコング:髑髏島の巨神(2017年)】を観に行くからってわざわざ【キング・コング(1933)】を観て予習したりはしないでしょう?

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多くの現代っ子は「あとから公開された方」を「以前に公開されてた方」よりも先に観ることになっちゃうんですよね。

【三十九夜】ロバート・ドーナット
©The 39 Steps/三十九夜より引用

まあ映画草創期なんて生まれてもなかったんだから今さら順番通りに観たかったって言ったところでどうしようもないんですけどね?

でもやっぱり初見って強烈に印象に残るんで、オリジナル作である「元祖(=【三十九夜】)」と、あとから公開された「進化版(=【北北西に進路を取れ】)」という2つの映画があった場合、ファースト・インプレッションは「元祖」から授かりたいと思いますやん。

でないとせっかくの名画【三十九夜】の感想が「【北北西に進路を取れ】の焼き回しみたいやな…」で終わってしまうことになりかねませんから。

【三十九夜】ロバート・ドーナット
©The 39 Steps/三十九夜より引用

もしあなたが【三十九夜】と【北北西に進路を取れ】のどちらも未見であるならば、まずは【三十九夜】からご覧になることをお勧めします。

映画【三十九夜】の感想一言

朱縫shuhou

朱縫shuhou

アルフレッド・ヒッチコックの映画はこの頃からすでに完成されていましたから、ハリウッドはさぞかし彼を驚異に思っていたことでしょう。
このあとヒッチコックは大プロデューサー、デヴィッド・O・セルズニックに招かれてハリウッドへ渡ります。
そして【三十九夜】の公開から5年後、セルズニックの力添えもあって、ヒッチコックは【レベッカ】でオスカーを獲得することになるんですね。

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朱縫shuhou 天衣無縫に映画をつづっている人

朱縫shuhou

「天衣無縫」と「温故知新」を信条として、主に古い洋画を好む映画好き。様々な映画を観たいのにホラーだけは怖くて観られない可哀相な初老。

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