1968年/アメリカ/監督:ロマン・ポランスキー/出演:ミア・ファロー、ジョン・カサヴェテス、シドニー・ブラックマー、ルース・ゴードン、モーリス・エヴァンス
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
出産して何年も経つと、すっかり妊娠してた時のことなんて忘れてしまってます。
今やそこいらじゅうを走り回っている童 達は、かつて確かに私のお腹の中にいて、太りすぎて狭く狭くなっていた産道を通って(ピー)から頭を出し産まれてきたんだよね。
真に生命の神秘。
我ながら女性の体っちゅうのは一体どないなっとんねんって思ったもんです。
「妊娠」という神秘の現象を逆手に(?)取ったオカルト映画、【ローズマリーの赤ちゃん】です。
映画【ローズマリーの赤ちゃん】のあらすじザックリ
妙なアパートへ引っ越してきたローズマリー夫妻
ニューヨークの古いアパートに引っ越してきたパッとしない役者のガイ(ジョン・カサヴェテス)とその妻ローズマリー(ミア・ファロー)の新婚夫婦。
隣室にはローマン(シドニー・ブラックマー)とミニー(ルース・ゴードン)というカスタベット夫妻と、彼らの養女のテレサ(アンジェラ・ドリアン)が住んでいました。
引っ越して間もなくローズマリーはアパートのランドリールームで顔を合わせたテレサと仲良くなりましたが、それからほどなくして彼女はアパートから身を投げて亡くなります。
とても何かに悩んでいるようには見えなかったのに、です。
そればかりかここへ越してきてからというもの、隣室からはおかしな物音が聞こえるし、眠れば「悪魔に犯される」超リアルな夢を見るし、いつの間にかガイが異様なまでにカスタベット夫妻と仲良くなっているし、奇怪なことばかりが起こるんですね。
フィクションと分かっているホラー映画でさえまともに観ることができないほど超がつく怖がりの私なら、この時点で引っ越します。
もういいよ、ガイなんか捨てて逃げる。
だって絶対このアパートおかしいもん。
ホラー映画の登場人物って、“100%出そう”な状況であっても絶対逃げようとしませんよね?
いやいや、勇猛果敢すぎるって。たまには恐怖を回避してくれ。
ところで、時折この【ローズマリーの赤ちゃん】が実話なのではないかという論争を目にしますが、実話ではなく原作はアイラ・レヴィンの小説です。
この原作小説自体が本物の悪魔崇拝者たちの証言をもとに書かれているなら知りませんけど、飽くまで映画【ローズマリーの赤ちゃん】はフィクション、創作物のはず、です。
赤ちゃんに生気を吸い取られるローズマリー
悪魔に犯される夢を見てからすぐにローズマリーは妊娠。
妊婦なんてもりもり食べてふっくらしないとダメなのに、ローズマリーはみるみる痩せて、もともと細かったその体はまるでガイコツのように骨と皮だけになっていきます。
いやおかしいから。
早く逃げて。
妊娠中、お腹の赤ちゃんが大きくなっていくごとに血液とか栄養とか色々吸い取られているような感じがあって、自分一人の体でないことを実感し幸せを感じたのを覚えていますが、どんどん憔悴していくローズマリーはそんな悠長なこと言うてられません。
何しろローズマリーが宿しているのは悪魔の子。
そうです、隣室のカスタベット夫妻も、カスタベット夫妻が紹介してくれた産婦人科医も、そして役者としての成功を約束してくれたカスタベット夫妻への見返りに自分の妻の“子宮”を差し出した(「貸し出した」?)夫のガイも、悪魔に魂を売り渡した悪魔崇拝者だったのです。
ぎゃあーっ!
それみろ逃げろって言うたにーっ!
悪魔の赤ちゃんより怖いラストのローズマリー
辛い妊娠期間を乗り越えてローズマリーは悪魔の子を出産します。しかし結果は死産。
そう言われても納得いかないローズマリーは、包丁を持ってガイも含めた悪魔崇拝者達が集うカスタベット夫妻の部屋へ乗り込んできます。
すると予想通り死産は嘘で、部屋には真っ黒な布で覆われて異様な雰囲気を醸し出す揺りかごが置かれていました。
この後一瞬だけ悪魔の赤ちゃんがスクリーンに映し出されるのですが、怖いんで画像は貼りません。
その代わり原作小説で赤ちゃんの“眼”について形容された部分を引用します。
どうか想像してみてください。
眼は山吹色、全体が山吹色で、白眼も虹彩もない。ただ山吹色一色で、縦に黒く細く瞳孔が割れている。
出典:「ローズマリーの赤ちゃん」小説
ぎゃあーっ!
なんじゃその眼えーっ!
しかしそんな悪魔の赤ちゃんの眼よりも私が断然怖かったのは、その赤ちゃんを最初に見た時のローズマリーの顔と…、
顔怖 っ!
そんな悪魔の子であっても数分後には恐怖や嫌悪よりも母性が勝り、我が子を慈しむ感情が芽生えてしまう母という生き物です。
映画【ローズマリーの赤ちゃん】の感想一言
原作小説にはこの時の悪魔の赤ちゃんへのローズマリーの心情の変化がより仔細に描かれています。
- 最初は悪魔の子を恐れ、赤ちゃんを窓から投げ捨てて自分も飛び降りて死のうとする。
- 次第に悪魔崇拝者のババアの揺り籠の揺らせ方が下手過ぎて腹が立ってくる。
- 試しに自分が揺らしてみると赤ちゃんが泣き止んだ。
- 「え…?私が揺らしたから泣き止んだん…?」
- よく見ると山吹色の目もなんだか可愛くなってきた。
- 私が育てる!
出産経験がある女性はぜひ一度原作小説も読んでみてください。
自分がもし悪魔の子を産んでしまったとしても「絶対ローズマリーと同じ道(=自分の子として大事に育てる)を選ぶ!」と自信を持って言えてしまうくらい母性の描写に説得力があって、きっと【ローズマリーの赤ちゃん】の面白さが増しますよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。