トニー・カモンテ

映画【暗黒街の顔役(1932)】あらすじと感想。ただの臆病者トニー

1932年/アメリカ/監督:ハワード・ホークス/出演:ポール・ムニ、ジョージ・ラフト、ボリス・カーロフ、アン・ヴォーザーク、カレン・モーリー

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

暗黒街の顔役タイトル
©Scarface/暗黒街の顔役より引用

この映画って、当時色んな意味で大丈夫だったんですかね?

 

だって作中にズバリ描かれてる聖バレンタインの虐殺が実際に起こったのが1929年で、映画の公開が1932年。

ほんの3年前の残虐な事件を大々的に扱って、関係者の誰かが消されたりしなかったんでしょうか?

主人公のモデルとなったアル・カポネもばりばり存命だったしさあ。

あー心配。

 

ポール・ムニのイカれた演技に釘付けになる映画、【暗黒街の顔役(1932)】です。

参考 聖バレンタインの虐殺=禁酒法時代の1929年2月14日シカゴでギャング8人が一斉に射殺された実在の事件または抗争

 

 

 

映画【暗黒街の顔役(1932)】のあらすじザックリ

「ビッグ・ルイ」の用心棒トニー・カモンテは、対立する大親分ロヴォに買収されてルイを暗殺し、最高幹部に取り立てられる。しかし野心満々の彼は南地区の大親分の地位とロヴォの情婦ポピー、さらにギャフニーを親分とする北地区をも手に入れようとする。

 

 

モデルはアル・カポネ!暗黒街でのし上がっていくトニー・カモンテ

物語はボスであるビッグ・ルイを裏切り敵対する南地区のボス、ロヴォ(オスグッド・パーキンス)と組んだ用心棒トニー・カモンテ(ポール・ムニ)が、ビッグ・ルイを殺害する場面から始まります。

ルイを殺したトニーはロヴォに幹部に取り立てられますが、トニーはロヴォの愛人ポピー(カレン・モーリー)にひと目ぼれ。

ロヴォの愛人だったポピー
©Scarface/暗黒街の顔役より引用

野心旺盛なトニーは北地区には手を出すなというロヴォの忠告も聞かず、暗黒街全土の掌握とポピーの略奪を目論みます。

 

かのマーロン・ブランドが目指したと言われるポール・ムニが、ホントにかっこいいんです。

葉巻パッカーふかすのもサマになってるし機関銃ぶっ放して「ヒャッハー!」って言ってるのも最高。

 

そして直情的なトニーと対照的に、常に冷静な態度を崩さない相棒のリナルド(ジョージ・ラフト)もシブい。

リナルドとトニー
©Scarface/暗黒街の顔役より引用

仕事は完璧にこなすけど女好きって言うナンパな設定もいいね。

 

このリナルドを右腕として、恐れを知らないトニーはふがいないロヴォを差し置いてどんどん頭角を現します。

 

キーとなるのは「銃」

実際アル・カポネがどうだったのかは分かりませんが、トニーが暗黒街でメキメキと力を付けることになったのにはその底知れぬ野心と「銃」の恩恵が大きいです。

「銃」って言っても「機関銃」

当時機関銃を取り締まる法がなかったらしく警察もお手上げ状態で、闇取引でありったけの機関銃を持っていた北地区のボスのギャフニーは絶大な力を誇っていました。

 

狙撃されたことで機関銃の威力に驚いたトニーはすぐに相棒のリナルドに「あれ取ってきて!」と頼んで入手。

水を得た魚のように益々勢い付いたトニーの指揮で冒頭に書いた聖バレンタインの虐殺事件が起こります。

聖バレンタインの虐殺
©Scarface/暗黒街の顔役より引用

機関銃さえあれば無敵とばかりに快進撃を続けるトニー。

 

しかしトニーがまだ一介の用心棒だった頃からすでに、刑事のグリアーノ(C・ヘンリー・ゴードン)は彼にこう言っています。

グリアーノ
お前らは銃がなかったらただの臆病者や。

この言葉は映画のラストで見事に裏付けられます。

もっと肝の据わった人物かと思ってたのに、銃が無くなった途端トニーがホンマもんのヘタレに変貌した時は驚きました。

朱縫shuhou

グリアーノが言うてたことが正しかったんや〜…。

銃なんぞなくても徒手空拳で行ったらんかい徒手空拳で。

 

南地区のロヴォと北地区のギャフニー

南地区の大物だったロヴォはお行儀よくちょび髭生やして華奢で高貴で、どちらかといえば「英国紳士」みたいな雰囲気。

とても「ギャングのボス」って感じには見えなくて少々迫力に欠ける…。

 

対する北地区のボス、ギャフニーは出てきた瞬間からただならぬ重厚な雰囲気を纏ってます。

それもそのはずギャフニーを演じるのは【フランケンシュタイン(1931)】でフランケンシュタイン博士が造り出した怪物を演じた名優ボリス・カーロフです。

ギャフニー(演:ボリス・カーロフ)
©Scarface/暗黒街の顔役より引用

ボス感出ててすごいんですけど、最期がちょっと残念。

ボーリング楽しんでる時に撃たれるってそれ。

しかも最後に投げた球はストライク。

 

まあ脚本がそうなってるんでボリス・カーロフにはなんの責任もないんですけど、それにしてもこの雑魚っぽい散り方なんとかならへんかったんか。

ボスやでボス。

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ボリス・カーロフ

 

近親相姦設定はいまいち活かしきれていない

トニーはポピーを愛していながらも妹のチェスカ(アン・ヴォーザーク)にだけは他の誰とも比べようもない特別な愛情を抱いている様子。

トニーの最期に一緒にいたのがポピーではなくチェスカであったことからも、トニーが近親相姦に近い感情をチェスカに抱いているという設定を押し出そうとする意図は見てとれますが、どうも中途半端で活かし切れていないような。

チェスカを看取るトニー
©Scarface/暗黒街の顔役より引用

露出度の高いドレスを着て見知らぬ男とダンスをする妹にやきもち焼いて激怒する程度じゃ「妹想いの良いお兄ちゃん」で終了。

チェスカを絡ませたいなら無理矢理キスするとかもっと赤裸々でも良かったかも。映倫的なものが邪魔してたのかな。

 

 

映画【暗黒街の顔役(1932)】の感想一言

電話を取り次ごうとするアンジェロ
©Scarface/暗黒街の顔役より引用
朱縫shuhou

血生臭いギャングの抗争を描いたアクション映画でたった一人お花畑満開なのがトニーの秘書のアンジェロ(ヴィンス・バーネット)。

おもろすぎます。

 

秘書なのにペン持ってないし電話も取り次げない。そのくせ腹に銃弾食らって瀕死の状態の時は律儀に部屋の鍵閉める。

 

脇役の癖に個性出し過ぎ!

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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