1940年/イギリス/監督:ソロルド・ディキンソン/出演:ダイアナ・ウィンヤード、アントン・ウォルブルック、フランク・ペッティンゲル、キャスリーン・コーデル、ミニー・レイナー
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
イギリスの劇作家パトリック・ハミルトンによる同名戯曲の映像化作品。
アメリカでは怪奇スターのヴィンセント・プライスと、アルフレッド・ヒッチコック作品の常連レオ・G・キャロルの共演で舞台化もされていたんですね。
軟禁状態の自宅で身に覚えのない過失について夫から指摘され続けた結果、「自分の頭はおかしいのではないか」と思い込むようになってしまう妻の恐怖を描いた名画、【ガス燈(1940)】です。
映画【ガス燈(1940)】のあらすじザックリ
心理的虐待用語「ガスライティング」を生み出した映画
ロンドンのピムリコ・スクエア12番地に、ポール・マレン(アントン・ウォルブルック)とベラ・マレン(ダイアナ・ウィンヤード)という夫婦が暮らしていました。
通りに面した大きな屋敷に住んでいてお金に困っているわけでもなさそうなのに、雇っているメイドはたったの2人。町の人々からは「マレンの奥さんは病気らしい」と思われています。
何を隠そうメイドを含む周囲の人々にそう思わせているのは夫のマレン氏。
「妻の様子がおかしいから気をつけて」と毎日のように言うことで「そうか、奥様は頭おかしいんやな」とメイドに思わせ、おしゃべりなメイドは外で「うちの奥様おかしいねん」と吹聴する。
すると「あそこの奥さんおかしいらしいで」という風評が出来あがる、と。
そのうえでマレン氏は、ベラ自身の精神も追い詰めて行きます。
例えば壁の絵や時計がなくなったと言っては「お前が盗んだんやろ?!」とベラを罵る。身に覚えのないベラは当然「私じゃない!」と抵抗するものの、実際無くなった品物はベラが盗んだとしか思えない場所から見つかってしまいます。
そうなるとまた「ほれみろ、お前やないか!」「頭おかしいんちゃうか?!」「動物と一緒や!」「どんどん酷くなって病院で死ぬんや!」と罵られる。
でもそれらもすべてはマレン氏がこっそり品物を隠してあとからベラが見つけそうな場所に置いているだけのこと。
私だったらゴリラ(夫)にこんなことされたら黙ってないけどね。
いやいやいや私ちゃうし!自分やろこんなトコ置いたん!
何ひとのせいにしてんねん!なんなんよちょっと!イカれてんのはお前じゃカス!
普通にこんな風にツッコめば済むような気がしますけど。
人間って些細な攻撃でも毎日やられると駄目なのかしらね。
ベラはどんどん追い詰められて、次第に夫の言う通り自分が病気なのではないかと思い始めてしまいます。
このような心理的虐待を加えられることを、本作のタイトル【Gaslight】にちなんで「ガスライティング 」と呼ぶんだそうです。
論文などにも使われる立派な心理操作用語なんですって、すごいよね名画パワー。
ガスライティングとは、標的となる人物(ターゲット)の感覚喪失、妄想、悪評、トラブル等を捏造または演出したり、人格や精神の障害を疑わせたりして、社会的評価を失墜させ、自信、自尊心及び評判を破壊し、思い通りのレベルまで人生を破滅させ、自殺に追い込むことまで出来るにもかかわらず、ターゲット自身が自滅したかのように見せかける一方で加害者側が善人を演じることの可能な数々の手口、及びその段階的な計画の総称です。
出典:ガスライティング詳細解説
物語の中のマレン氏は、「ある目的」を達成するためベラに対して“ガスライティング”を施していたのですが、現実には虐待だけが目的でガスライティるような悪い奴もいるんでしょうね。
私も気が弱いから、ゴリラ(夫)にガスライティられないように気をつけよっと。
ちょっと爪切り無いねんけど!
またどこやったんよ!絶対あんたや!探して!!はーやーく!おーそーい!
映画【ガス燈(1940)】の感想一言
戯曲「ガス燈」は二度映画化されています。
一度目が1940年公開のイギリス製作の本作、二度目は主演のイングリッド・バーグマンが初のオスカーを獲得した1944年のアメリカ版【ガス燈(1944)】。
1940年版は1944年版メディアの「コレクターズ・エディション」に収録されていますので、両方観て違いを比べてみると楽しいですよ。
ちなみに私は、差し当たってラストに関して言うなら断然本作(1940年版)の方が好きです。
…ハリウッドっていつも「余計な何か」を加えちゃうのよね。
1944年/アメリカ/監督:ジョージ・キューカー/出演:シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン、ジョゼフ・コットン、メイ・ウィッティ、アンジェラ・ランズベリー、バーバラ・エヴェレスト、エミール・ラモー/第17回アカデミー主演女[…]
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