【赤い靴(1948)】

映画【赤い靴(1948)】あらすじと観た感想。踊り続けるんも足切られんのも嫌

1948年/イギリス/監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー/出演:モイラ・シアラー、アントン・ウォルブルック、マリウス・ゴーリング、ロバート・ヘルプマン、アルベルト・バッサーマン、レオニード・マシーン/第21回アカデミードラマ・コメディ音楽・美術監督(カラー)賞受賞

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【赤い靴(1948)】
©The Red Shoes/赤い靴より引用

ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話「赤い靴」って知ってます?

優しい老婦人に引き取られた貧しい少女が、老婦人の目が悪いのをいいことにド派手な赤い靴を買ってもらって、黒い靴を履くのが通例の教会にまでそれを履いて行ったためバチが当たるってやつ。

このバチがめちゃくちゃ怖いんですよね。覚えてます?赤い靴が勝手に踊り出して止まらへんなるでしょ?ほんで最後にはそこら辺におった木こりのおっさんに頼んで赤い靴ごと足首切り落としてもらうんですよ確か。

「死ぬまで踊り続けんのと足首切り落とすんとどっちか選べ」って言われたらどないしよって思ったもんです。

どっちも嫌じゃそんなもん。

 

そんなアンデルセンの「赤い靴」をモチーフ(原作じゃないよ)にした名画、【赤い靴(1948)】です。

 

 

 

映画【赤い靴(1948)】のあらすじザックリ

バレリーナ志望のヴィクトリアは、バレエ団に入り才能を認められる。作曲家ジュリアンと恋に落ちるが、芸術に全てを捧げるよう求める監督レルモントフとの対立が深まる。新作舞台「赤い靴」の主演に抜擢され成功を手にしたヴィクトリアだったが、愛と芸術の狭間で葛藤し、悲劇的な結末を迎える。

 

 

「なぜ踊るの?」=「なぜ生きてるの?」

場末の小さな劇場で踊っていた才能ある若きバレリーナ、ヴィクトリア・“ヴィッキー”・ペイジ(モイラ・シアラー)は、有名なレルモントフ・バレエ団の団長ボリス・レルモントフ(アントン・ウォルブルック)に見初められ、モンテカルロでの大きな新作舞台「赤い靴」のプリマに抜擢されます。

舞台は大成功、一夜にしてヴィッキーは有名バレリーナの仲間入りを果たすのです。

ツイてる時ってのは何もかもツイてるもんで、成功を手に入れますます輝きを増すヴィッキーには恋人までできちゃいます。「赤い靴」の作曲家ジュリアン・クラスター(マリウス・ゴーリング)がその人。公言せずとも二人が愛し合っていることはバレエ団の仲間たちの誰もが知るところ。何しろ2人はアッツアツ(死語)。

【赤い靴(1948)】
©The Red Shoes/赤い靴より引用

「ヴィッキー愛してる」「幸せよジュリアン」なんつってね。

ところが、そんな二人を祝福できないどころか引き離そうとする人間がたったひとり居たことで、幸せ真っ盛りだったヴィッキーに思いもよらぬ悲劇が訪れる…というお話。

 

【赤い靴(1948)】で描かれるのは、ダンス(芸術)と愛(人生)の境界にいるヴィッキーの葛藤、そしてバレエという芸術を通じて浮き彫りになる人間の情熱や破滅。

ヴィッキーを演じたバレリーナのモイラ・シアラーはこれが映画初出演。初々しい演技と圧巻のダンスで観客を魅了します。

【赤い靴(1948)】
©The Red Shoes/赤い靴より引用

前半で印象に残るのはレルモントフに「なんでダンスやってんの?」って聞かれた時のヴィッキーの返し。

ヴィッキー
それは私に「なんで生きてんの?」って聞いてはるのと同じどすえ。

まるで生きていることとおなじように踊ることが自然で欠かせないものだったヴィッキー。

バレエで成功し愛も手に入れた彼女にいったい何が起こったのか、想像はつくけどその描き方がすごいんです。

 

レルモントフの言うとることも分からんでもない

ヴィッキーの恋路を阻むのは一番最初に彼女の才能を見出したはずのレルモントフ。

舞台「赤い靴」でのヴィッキーの成功を心から喜び彼女をもっと有名にするべくアレコレと策を練っていたレルモントフは、ヴィッキーとクラスターの仲を知るや豹変。

【赤い靴(1948)】
©The Red Shoes/赤い靴より引用

曰く、芸術(=バレエ)に恋愛なんぞ不要なんだそうです。男に腑抜けてる暇があったらステップのひとつでも覚えんかい、と。

ついにレルモントフは、ヴィッキーとクラスターを引き裂くため、「天才」と言われるほどの才能を持つクラスターをクビにしてしまいます。

 

酷いおっさんや思うでしょ?

 

でもレルモントフの言うてることも分からんでもないんですよ。

だって愛し合うこの2人ときたら、ヴィッキーは本番中の舞台から楽団の指揮をしてるクラスターにウィンクするわ(クラスターも手を振ってこれに応える)、クラスターは自分の公演をすっぽかしてヴィッキーに会いに来くるわ、浮かれまくりなんですよ。

それがあかんて言うとるねん。

本人たちは恋が活力になると思ってるのかも知れませんけど、「一心不乱にバレエに打ち込めなくなる」という意味ではレルモントフが正しい。

【赤い靴(1948)】
©The Red Shoes/赤い靴より引用

ヴィッキー、自分最初に言うたやん。

踊ることは生きることと同じやって言うたやん。

そんなん聞いたら「そんなにもか!」ってレルモントフも期待して目をかけますわいな。

やっと巡り会えた逸材やと思ってたのに、やっぱりお前も何もかも捨ててバレエだけに人生を捧げることはでけへんのかい!ってなりますよ。

【赤い靴(1948)】
©The Red Shoes/赤い靴より引用

まあレルモントフもかなりの変人であることは間違いないんで。擁護するのもここまでにしときましょ。ていうか擁護してるつもりでもないんだけども。「分かる部分もある」ってことです。

どんな状況であれやっぱり愛し合う2人の恋路を邪魔するってのは不毛ですわな。

 

 

これだけで映画が一本撮れそうな劇中劇「赤い靴」

【赤い靴(1948)】の最大の見どころは劇中劇「赤い靴」。これこそは冒頭に書いたアンデルセンの童話「赤い靴」の舞台化。

クラスターが書いた曲に乗せてヴィッキーが踊るシュールかつ幻想的な映像は強烈なインパクトを与えます。ダンサーの動きも色彩も美術も証明も完璧。映像・音楽・演出のすべてが調和していて、この舞台を再編集して一本の映画にしてくれても間違いなく観客動員できるでしょう。

【赤い靴(1948)】
©The Red Shoes/赤い靴より引用

赤い靴の魔力に憑りつかれ、ボロボロになるまで踊り続けて倒れてしまう主人公の姿は、まさに現実世界のヴィッキーそのもので、このあとのヴィッキーの悲劇を暗示しているようです。

バレエ(芸術)とは何か、人生とどう向き合うかを深く考えさせられる名画です。

【赤い靴(1948)】
©The Red Shoes/赤い靴より引用

 

 

映画【赤い靴(1948)】の感想一言

朱縫shuhou

人生を捨ててバレエ(芸術)を取るか、バレエを捨てて愛に生きるか?

 

どっちも嫌や言うてんねん。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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