【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマンとシャルル・ボワイエ

映画【ガス燈(1944)】あらすじ感想。I・バーグマンの様子がおかしい

【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマンとシャルル・ボワイエ

1944年/アメリカ/監督:ジョージ・キューカー/出演:シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン、ジョゼフ・コットン、メイ・ウィッティ、アンジェラ・ランズベリー、バーバラ・エヴェレスト、エミール・ラモー/第17回アカデミー主演女優・美術監督(白黒)賞受賞

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマン
©gaslight/ガス燈より引用

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ロベルトとマリア

愛する夫(シャルル・ボワイエ)に追い詰められ恐怖のあまりガタガタと手も震えんばかりのイングリッド・バーグマンが、観る者の血の気をも奪ってゆきます。

そしてフランスの舞台俳優シャルル・ボワイエの、まるで虫けらでも見るかのように彼女を見つめる冷徹な眼差しときたらあなた、スクリーン越しでもちびりそう。

 

1940年にもイギリスで映像化された同名戯曲の再映画化作品、【ガス燈(1944)】です。

 

 

 

映画【ガス燈(1944)】のあらすじザックリ

ロンドンにあるソーントン広場で起こった名歌手アリス・アルキスト絞殺事件の犯人は分からず、悲しみに暮れていた姪のポーラ・アルキストは作曲家のグレゴリー・アントンと恋に落ち、結婚を決意する。グレゴリーの希望で、夫婦はアリスが殺害された屋敷で新婚生活を始める。

 

 

殺人事件があった邸宅へ引っ越してきた新婚夫婦

10年前、ロンドンのソーントン通り9番地で殺人事件がありました。

殺されたのはそこの住人で大歌手のアリス・アルキスト。未だに犯人は見つかっていません。

【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマン
©gaslight/ガス燈より引用

アリスの姪ポーラ・アルキスト(イングリッド・バーグマン)は、つらい過去から逃れるための留学先で作曲家のグレゴリー・アントン(シャルル・ボワイエ)と恋に落ち、「愛する人とロンドンの大きな通り沿いの家で新婚生活送りたいね~ん」と言うグレゴリーの夢を叶えるため(そんなピンポイントの夢あるか!)、再びソーントン通り9番地の屋敷へ帰ってきます。

【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマンとシャルル・ボワイエ
©gaslight/ガス燈より引用

愛しいグレゴリーが一緒とはいえ、さすがに殺害現場となった叔母の部屋へ入るのはつらすぎると言うポーラ。

晴れて彼女の夫となったグレゴリーは、叔母の部屋に残されたものはすべて屋根裏の物置にしまってしまうことを提案します。そして整理が済んだら、誰も足を踏み入れることのないように屋根裏を封印してしまおうと。

 

こうしてポーラの叔母アリスの部屋にあった家具はすべて屋根裏へ押し込められ、部屋はグレゴリーの書斎へと生まれ変わり、新婚夫婦の新生活が始まるのでした。

【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマンとシャルル・ボワイエとアンジェラ・ランズベリー
©gaslight/ガス燈より引用

 

妻へ心理的虐待「ガスライティング」を繰り返す夫

ところが結婚してからというものグレゴリーは、盗癖や物忘れの兆候が見られると言ってポーラにつらくあたるようになってゆきます。

【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマンとシャルル・ボワイエ
©gaslight/ガス燈より引用

事実、グレゴリーからもらった結婚祝いのブローチを失くしたり、誰もいないはずの屋根裏から物音が聞こえてくると言ったり、毎晩ガス燈が暗くなると言ったり、ポーラにはおかしな言動が目立ち始めます。一度などは失くなったグレゴリーの懐中時計がポーラのバッグから出て来たこともありました。

でもポーラにはまったく身に覚えがありません。

グレゴリー

何も覚えてないだなんて…。

君は頭がおかしくなってしまったんじゃないか?

ただでさえ昼間でも薄暗い家の中に半ひきこもり状態のポーラ。

愛する夫からこんな風に疑われ続けた彼女は、次第にグレゴリーの言うとおり、自分が病気であるかのような錯覚におちいってしまいます。

【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマン
©gaslight/ガス燈より引用

このような心理的虐待のことをガスライティング gaslightingというそうです。この言葉はまさしく映画【ガス燈】にインスパイアされて使われ始めたものなんですって。

「ガスライティング」については【ガス燈(1940)】の記事でより詳しく触れています。

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【ガス燈(1940)】

 

宝石狙ってんのはバレバレだけど

【ガス燈(1944)】は観客を驚かせてなんぼの、いわゆる「どんでん返し系映画」ではありませんから、ポーラに心理的虐待を繰り返していると言ってもグレゴリーがただそれを楽しんでいるワケじゃないことは明白。

実は「アリス・アルキストの遺品を屋根裏に封印すること」、その上で密室状態の屋根裏部屋へ忍び込み「アリスの遺品の中にあるはずのすんごい高価な宝石をゆっくりと捜索すること」こそがグレゴリーの狙い。

【ガス燈(1944)】シャルル・ボワイエ
©gaslight/ガス燈より引用

筋書きも落ちもバレッバレなんですけどね。バレッバレなんですけど、イングリッド・バーグマンとシャルル・ボワイエの演技が迫真すぎてのめり込んでしまうんですよ。

 

ちなみに第17回アカデミー賞の演技部門で受賞にいたったのは主演女優賞のイングリッド・バーグマンのみでしたが、シャルル・ボワイエは主演男優賞に、これが映画初出演になるメイド役のアンジェラ・ランズベリーは助演女優賞に、それぞれノミネートされています。

【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマンとアンジェラ・ランズベリー
©gaslight/ガス燈より引用

 

 

なぜチャールズ・ロートンでは駄目だったのか

終始ハラハラが止まらないサスペンス映画の傑作だと思うんですけど、1点だけもの申したいことがございます。

メイドにも近所の人にも“グレゴリー包囲網”が張り巡らされ自宅に軟禁状態のポーラを、奇跡的にも気にかけてくれる人間がたったひとりだけ存在したんです。子供の頃から大歌手アリス・アルキストに憧れていたという青年ブライアン(ジョゼフ・コットン)がその人。

【ガス燈(1944)】ジョゼフ・コットン
©gaslight/ガス燈より引用

警察関係者であるブライアンは、街で若い頃のアリスにそっくりのポーラを目にしてからというもの、10年前の迷宮入り殺人事件の解決の糸口が見つかるかも知れないという期待を胸に、ポーラの身辺をチョロチョロし始めるんですね?

まあハナと機転の利くブライアンなしではこの事件が解決し得なかったのは間違いないにしても、ちょっと待てと。

なんでここでジョゼフ・コットンか。

なんでチャールズ・ロートンではあかんかったんや。

チャールズ・ロートン
©Witness for the Prosecution/情婦より引用
助手
何言ってるか全然分からへん…。

まあチャールズ・ロートンは例えなんやけども。ただのexampleやexample。

いやだから、この4年前に公開されたイギリス版【ガス燈(1940)】にも確かに、本作のブライアンに当たる“ラフ(フランク・ペッティンゲル)”という名の元刑事が出て来るんですよ。

そしてやっぱりラフのお陰で事件は解決する。何の手掛かりもなかったというのに、勘だけで捜査を進めて、見事に解決。すばらしい。ブライアンもラフも最高。

 

でもラフは、ベラ(1940年版のポーラにあたる女性)と恋には落ちない。

だってラフってこんなんだからね。

【ガス燈(1940)】
©gaslight/ガス燈より引用

ボッテリ。

太っちょのおっさんですもん。

一方のベラ(ラフの後方で犬の散歩してる女性)は若く儚げで麗しい。この太っちょのおっさんと麗しいベラが恋に落ちるだなんて、物語的にちょっと考えられないでしょ?

 

ところがどっこい1944年版のブライアンは最終的に、ポーラとの恋の始まりを匂わせよるんですよ。

【ガス燈(1944)】イングリッド・バーグマンとジョゼフ・コットン
©gaslight/ガス燈より引用

そんなん要る?

でもしょうがないねん。相手ジョゼフ・コットンやで?ジョゼフ・コットンが命がけで自分のこと助けてくれようもんなら誰だってメロメロやん。

朱縫shuhou
そもそもキャスティングがおかしいねん…。

ジョゼフ・コットンはかっこいい。演技も良い。好き。それは間違いない。

でも【ガス燈(1944)】のラストに色恋沙汰は蛇足だったと思うんですよ。

 

だからいっそのことポーラと恋は芽生えそうもないチャールズ・ロートンでもキャスティングしさらした方が良かったんちゃうんかコラって思てる次第です。

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あるいはピーター・ユスティノフとか…ユスティノフはちょっと若すぎるか。

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映画【ガス燈(1944)】の感想一言

朱縫shuhou

もとになった同名戯曲のブライアン及びラフのキャラクター設定がどのようになっているのか分かりませんけど、ラストに限って言えば、私はベラとラフの間にロマンスなんて生まれない1940年版の方がスッキリしていて好きです。

余計な脚色さえなければ申し分ない仕上がりなのに。

 

…いや、あともうひとつ。

1940年版には出て来ない「近所の噂好きのおばちゃん」もかなり浮いててサブいな。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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