1984年/アメリカ・イタリア/監督:セルジオ・レオーネ/出演:ロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ、エリザベス・マクガヴァン、ジョー・ペシ、ジェニファー・コネリー、バート・ヤング、ジェームズ・ヘイデン、ウィリアム・フォーサイス
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
1回観ただけではこの映画の意図するところも意味するところもよく分からない。
かと言って何回観たってよく分からない。
でもそれで良いんでしょうよ。
「once upon a time…」で始まる他の多くのおとぎ話と同じように、観る人によって受け取り方は変わるし、何度も繰り返し観た所で時代や年齢とともに解釈が変わるから、結局意味が分からなくて当然なんでしょう。
完全版の上映時間は3時間49分にも上るセルジオ・レオーネ監督の遺作、【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ】です。
映画【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ】のあらすじザックリ
私的解説(結末を含む難解な描写に関して)
意味不明な映画というよりは(そういう意味ではスタンリー・キューブリックやテリー・ギリアムの作品の方がよっぽど難解)、時系列がやや複雑であることと、ただ単純に上映時間が長いがゆえに伏線が回収されてもピンとこないことが【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ】の評価の分かれ道になるのではないかと思っています。
この映画を気に入ってどっしりと何度も繰り返し視聴するような人は観れば観るほど好きになっていくだろうし、初見で「もうこんな長くて意味が分からない映画観てられない!」と思ってしまったら一生分からないだろうし。
て当たり前のこと書いてますね。
とにかく、こんなに長い映画のあらすじを延々追って行くのもあれなんで、多くの人が気になるであろう謎の部分について、私的に一気に解説してみました。
謎①ヌードルスを追っている3人は誰なのか?
冒頭で青年期のヌードルス(ロバート・デ・ニーロ)を追っている穏やかでない三人組。
彼らは一体誰で、目的は何なのか?
解説①フランキーの手下じゃねーの?
ヌードルスの居場所を知らない恋人イヴ(ダーラン・フリューゲル)を容赦なく射殺するし、ファット・モー(ラリー・ラップ)に壮絶な拷問浴びせるし、警察関係者でないのは間違いない。
「ヌードルスは裏切り者だ」って正義漢めいたこと言ってますけどヌードルスに近い仲間でもなくて、たぶんフランキー(ジョー・ペシ)の手下なんじゃないですかね?
フランキーはマックス(ジェームズ・ウッズ)とだけ親密だったみたいだし。(謎③に詳しく記載)
謎②マックス、パッツィー、コックアイはどうして射殺されたか?
阿片窟でアヘアヘになってるヌードルスが手に取った新聞には、マックス、パッツィー(ジェームズ・ヘイデン)、コックアイ(ウィリアム・フォーサイス)の3人が警官隊に射殺されたと載っていました。
銀行強盗に行ったはずの3人はどうして射殺されたのか?
解説②死に場所を求めていたマックスの思惑通り?
これについては後にマックスの愛人キャロル(チューズデイ・ウェルド)が言及しています。
キャロルによると、父親が心の病を患っていたマックスは、自分もいつか狂ってしまうのではないかという恐れを常に抱いていたと言います。禁酒法が撤廃され、自分たちの時代の終焉を悟ったマックスは、死に場所を求めて無茶な銀行強盗を計画し、自ら警官隊に発砲して死ぬつもりだったのだろうと。
しかし実際は世間の目を欺くための警察も巻き込んだ壮大な茶番劇であったことがラストで明かされます。
そもそもマックスが言い出した「銀行強盗計画」そのものがフェイク。
キャロルがマックスを止めようと言い出すことも、ヌードルスが警察に密告することも、パッツィーとコックアイだけが消されることも計算ずく。
パッツィーやコックアイと違って、焼死体となったマックスの遺体は生前の姿を止めていませんでした。この遺体は影武者のもので(誰かは謎)、この事件によって“ギャングのマックス”は抹殺され、マックスはベイリー財団の理事長で政財界に君臨する“ベイリー商務長官”なる人物に生まれ変わったのです。
謎③フランキーは何しに来たのか?
ジミー(トリート・ウィリアムズ)の病院でちらりと映り込むフランキー。
マックスに「逆らったらヤバイ」とまで言わしめる大物が、こんな所に何のためにやって来たのでしょうか?
解説③様子見っしょ?
この時はヌードルスの一味の誰とも会話を交わしていませんが、ジミーを足掛かりに労働組合や政財界とのパイプを作ろうとしていることは明白。
勝手な予想ですが、この時すでに「銀行強盗計画」は進んでいたのではないでしょうか。もちろんフランキーが話を持ち掛けたのはマックスだけ。
遠巻きに感触を掴みにきたんでしょうね。
謎④デイビッドは誰の息子なのか?
女優となったデボラ(エリザベス・マクガヴァン)の楽屋を訪ねてくる若い頃のマックスにそっくりな青年デイビッド。
ヌードルスの本名と同じ名前のこの青年、父親がマックスであることは明白ですが、母親は一体誰なんでしょう?
解説④昔からデボラのことはチラチラ見てたよね?
デボラによると、ベイリー長官は「富豪の娘と結婚してお産の時に妻を亡くしてる」とのことでしたが、まあそりゃ表向きに作られた経歴な訳で、ホントの母親はデボラなんでしょうね。
「なんでデボラがマックスと?」って一瞬混乱を招きますけど、よく考えたらマックスもヌードルス同様、子供の頃からデボラの周囲をウロチョロしてる。
デボラとヌードルスが最初にキスを交わす時も、ヌードルスを探しにきたのではなく実は「いつものように」デボラを覗きにきていたのかも知れないし。
ヌードルスとデボラが話をしている時、不機嫌そうに何度もヌードルスを呼びつけるシーンもありましたね。
ただしマックスが「ヌードルスを好き」なのか「デボラを好き」なのかがよく分からない。
実はヌードルスにただならぬ愛情を抱いていて、嫉妬の余りヌードルスが愛するデボラを奪ったとも取れないこともない。
ひとつ確実に言えるのは、マックスが愛人として傍に置いていたキャロルに対して「愛してなんかいない!」と公然と言ってたことがありましたが、それは正真正銘ホントの気持ちだったってこと。
キャロル可哀想。
謎⑤マックスはゴミ収集車に飛び込んだのか?
最大の謎が2つ残ってしまいました。
最大の謎ひとつめはこれですよ。
「ラストでマックスはどこに消えたのか?」
解説⑤どこに消えたの?
あれ?マックス…どこ行ったの?
確かに屋敷の門のところまで出てきていたはずなのに、ゴミ収集車に隠れている数秒の間に姿を消してしまったマックス。
はて?
汚職スキャンダルは隠しようもなく絶望的、ヌードルスにも殺してもらえなかったマックスが、ゴミ収集車に飛び込んで自殺した説が有力ですけど、それ可能?
それもあの数秒で?
実際ゴミ収集車に挟まれて命を落とす事故があるにしてもさ(しかも日本の収集車よりも相当デカい)、ホントに飛び込んだなら通り過ぎた直後にヌードルスが荷台を覗いた時、ちょっとくらい血とか残ってるはずでしょうよ。そんでどれほど屈強な人であっても、生きたまま機械で切り刻まれるなんて、どないしたって悲鳴のひとつもあげるでしょうよ。大体機械も誤作動起こして止まるでしょうよ。
この「飛び込んだ説」はかなり現実味が薄い。
私は普通に、ゴミ収集車の助手席に乗ってるんじゃないかと思います。
それも「消えた」ように見せかけてまたもヌードルスを欺くためとかじゃなく、「連れ去られた」のではないかと。
拉致です拉致。
かなりやばい立場だったみたいだし(「どれせ誰かに殺される」って言ってる)、このあとどっかで拷問とかされてバラされるんじゃない?
謎⑥ヌードルスはどうして満面の笑みを浮かべているのか?
最後にして最大の謎。
ラストシーンの笑顔の謎。
解説⑥「仲間が死んでも開き直れること」と言えば
正直言って分かりません。
分からないなりに一生懸命考えてみたんですけど。
このシーンは恐らく、マックスとパッツィーとコックアイの3人が銃殺されたという新聞を持ってヌードルスが阿片プカプカしてる冒頭のシーンに続くと思われますよね?
ということは、この時にはヌードルスは、苦楽を共にした仲間達が自分の裏切りによって(図らずも)死んでしまったことを知ってるワケです。
それなのにこの笑顔。
阿片でアヘアヘなってるとはいえ、大事な仲間を亡くした時にこの笑顔。
それも満面の。もう楽しいて嬉しいてたまらんばかりの笑顔。映画史に残る大笑顔。
仲間の死すら忘れて人間が笑ってしまう瞬間といえば…金しかなくない?
ヌードルスが結局「仲間よりも金!」って人物であるならば、「裏切り者」として組織に追われているのを知っていてわざわざモーの店にロッカーの鍵を取りに行ったことにも納得。
俺…どないしよう…。
(阿片すぱ~…)
ちょっと待てよ…?
みんな死んだってことは…。
(仰向けに寝返り)
あの金全部俺のやん。
(満面の笑み)
こんな感じやったんちゃいますかね。
友情とか愛情とか郷愁とか、色々交錯してる壮大な映画の最後が金って、なんだか素晴らしいですやん。
映画【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ】の感想一言
地味ながら最後まで生き残ってるファット・モーが結構好きです。
堅気の人間だってのにギャングに殺される寸前までヌードルスの居場所を吐かないし、少年期と青年期で同じように、ヌードルスにほっぺたを「ポンポン」てされる場面がかわいいんですよね。
あと35年ぶりに店の時計を動かすシーンも良いと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。