1943年/アメリカ/監督:サム・ウッド/出演:ゲイリー・クーパー、イングリッド・バーグマン、エイキム・タミロフ、カティーナ・パクシヌー、ウラディーミル・ソコロフ/第16回アカデミー助演女優賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
主演のゲイリー・クーパーとイングリッド・バーグマンは言うに及ばず、脇を固める俳優陣もキャラが立ち過ぎて舌を巻く映画。
原作は「老人と海」などで知られる小説家アーネスト・ヘミングウェイの同名小説(小説は「誰がために鐘は鳴る」と「ため」が平仮名表記)。
1958年/アメリカ/監督:ジョン・スタージェス/出演:スペンサー・トレイシー、フェリッペ・パゾス、ハリー・ビレーヴァー、ドン・アダイモンド/第31回アカデミードラマ・コメディ映画音楽賞受賞注※このサイトは映画のネタバレしよ[…]
3時間弱の長編でありながら、描かれているのはたった3日間の出来事。
川も草もない、岩がゴツゴツ転がる閉ざされた山岳地帯で瞬間的に燃え上がる愛と、徒労に終わることが分かっていても背くことのできない使命を描いた映画、【誰が為に鐘は鳴る】です。
映画【誰が為に鐘は鳴る】のあらすじザックリ
タイトル【誰が為に鐘は鳴る】の意味は?
タイトルはイギリスの詩人ジョン・ダンの詩の一節から引用されています。
メインストーリーに鐘なんてまったく出てきません。導入部とラストに突如現れゴイ~ンゴイ~ンと自らを打ち鳴らし存在感を放つだけ。
元になったジョン・ダンの詩を理解しているか、冒頭の字幕をしっかり見ていないとタイトルの意味なんて分かりようもないでしょう。
我は人類の一人なれば
誰の死も我を傷つける
誰が為に弔鐘は鳴ると問うなかれ
弔鐘は汝が為に鳴る
出典:【誰が為に鐘は鳴る】字幕
そもそも鐘といってもだたの鐘でなく、「弔鐘」。
死者の冥福を祈って鳴らす鐘です。
ジョン・ダンは「なんぴとも一島嶼にてはあらず」というフレーズも残していて、まあ人間誰しも孤島ではなくどこかで繋がっているんだぜベイビーという思想を持った詩人でした。
その思想が上記字幕の内容にも活きていますね。
自分たち人間はみんな繋がっていて、例え見ず知らずの誰かが死んだとしても自分自身の一部を失くしているのと同じこと。
「あの弔鐘は誰のために鳴っているの?」なんて馬鹿げたことを聞かないで。
あの弔鐘はあなたのために鳴っているのだから。
ちゃんとこうして意味を考察してみると、本当によく考えてつけられたタイトルです。
私独自のこの解釈が的を射ているかどうかは、映画を最後までご覧になって考えてみてください。
ロベルトとマリアの愛の物語
義勇兵としてスペイン内戦に参加したアメリカ人のロベルト・ジョーダン(ゲイリー・クーパー)は、フランシスコ・フランコ軍の流通の要となる橋梁爆破の指令を受けます。
作戦に与えられた期間は3日。巨大な橋の爆破には現地のジプシーや山岳ゲリラ(山賊とも)の協力が不可欠。
橋の構造や交通量、配置されているフランコ軍の人数などを入念に調べ上げ、爆破の日に備えます。
ロベルトはファシストに両親を殺され山賊たちのアジトに匿われている女性マリア(イングリッド・バーグマン)と出会い、ひと目で恋に落ちます(ロベルトは好きになったなんて一言も口に出しませんけど、初めてマリアを見た時の反応で明白)。
一方のマリアも明らかにフォーリンラブ。
ええ、そりゃそうでしょうよええ。
美男美女が揃ったらそりゃそんな奇跡も起こるでしょうよ。
ファシストに両親を銃殺されたあと自身も髪を剃られ凌辱されたマリアの髪は坊主に近い超短髪。
それでも失われない透明感と愛くるしさがすごい。
こううそぶくハードボイルドなロベルトが、無邪気にすり寄ってくるマリアに自制心を失いキスをするベタな場面はやっぱり最高。
そしてマリアもまた無意識に自分の武器をよく理解していらっしゃる。
私まだキスしたことないねん…いつも不思議やってんけど…
鼻ってどうすんの?
おっしゃー!ホンマのキス教えたらあー!
ってなりますよね男やったら。
あざとい!
かわいい!
男前すぎる女山賊ピラー!
そんなマリアに女として嫉妬してしまうのは私だけではありません。
山賊の頭パブロ(エイキム・タミロフ)の妻ピラー(カティーナ・パクシヌー)だってマリアの美しさと若さを妬んでます。
晴れて愛し合うようになったロベルトとマリアに、ついつい自分が若くて美しかった頃の思い出話を聞かせてしまうほど。
そして最後には婆さんの戯言だ、ガハハとキップよく笑い、あんたが大好きだよとマリアを抱きしめるピラーはホントに素敵な婆さんです。
頭もよくて冷静で、女だてらにリーダーの素質を完璧に持ち合わせている特異な人材。
ロベルトもマリアも、自分を醜いと言うピラーの自虐的発言をまっこうから否定しますが、視聴者の誰もが同意するでしょう。
ピラーはある意味【誰が為に鐘は鳴る】の中で一番輝いている美しい人間です。
退却経路は他になかったんか!
からくも橋梁の爆破が見事に成功したロベルトたち。
追手がやってくる前にできるだけ遠くへ逃げなければいけません。
いったん爆破した橋から離れ、マリアが番をしていた馬に乗る一行。
そしてそのままフランコ軍の追手を振り切り…と思ったら、再び爆破したばかりで騒然としている橋の真ん前へ。
なんと一行は橋向こうには戦車を始めとするフランコ軍の大群が狙いを定めているというのに、その数十メートル先をBダッシュで駆け抜けるという自殺行為に等しい行動に出ます。
〇で囲ってるのが馬に乗ったロベルトたち。
画面中央が爆破された橋で、手前のヘルメット軍団がフランコ軍。
せーので画面左から右へ駆け抜けて行くんですが…。
橋は破壊されてるので敵はこれ以上攻めてこられないとは言え、こんなもん格好の的ですよ。屋台の射的。
他に逃走経路なかったんかいな!
映画【誰が為に鐘は鳴る】の感想一言
最後のロベルトのセリフが難解なタイトル【誰が為に鐘は鳴る】を象徴してて素晴らしい。
無情感というか空虚感というか、鑑賞後に胸にぽっかり穴があいたような気分になるこういった戦争映画は大好物です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。