1958年/イギリス/監督:テレンス・フィッシャー/出演:ピーター・カッシング、クリストファー・リー、マイケル・ガフ、メリッサ・ストリブリング、ジョン・ヴァン・アイゼン、キャロル・マーシュ、オルガ・ディッキー
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1950~1970年代にホラー映画界を席巻したイギリスの映画製作会社ハマー・フィルム・プロダクションによる、俗にいう“ハマー・ホラー”の代表作。
この前年に公開された【フランケンシュタインの逆襲】と同じく、監督にテレンス・フィッシャー、主演にピーター・カッシングとクリストファー・リーの二枚看板を迎え、世界中で大ヒットした怪奇映画、【吸血鬼ドラキュラ(1958)】です。
映画【吸血鬼ドラキュラ(1958)】のあらすじザックリ
史上屈指の英国産ドラキュラ映画
「吸血鬼ドラキュラ伯爵」と聞けば普通は【魔人ドラキュラ】のベラ・ルゴシか【吸血鬼ドラキュラ(1958)】のクリストファー・リーのどちらかを連想しますわな、って言うくらい一般的な“ドラキュラ像”に影響を与えた映画です。
1931年/アメリカ/監督:トッド・ブラウニング/出演:ベラ・ルゴシ、ヘレン・チャンドラー、デヴィッド・マナーズ、ドワイト・フライ、エドワード・ヴァン・スローン注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと[…]
私は断然ベラ・ルゴシ派なんですけども。
クリストファー・リーを推さない理由は、彼が演じたドラキュラ伯爵の血走った目と口元の血のりが怖いから。
そりゃまあそうなんだけど。
稀に見る怖がり屋さんの私としては、とりあえず目見開いて「カーッ!」とか言うの止めて欲しいの。怖いと言うよりはビックリするからホントに。
だって普段はただのイケメン紳士であるこちらのドラキュラ伯爵がですよ(なんやったら少々タヌキ寄りのリーのルックスからはドジっ子臭すら漂ってくるのに)、
血に飢えるといきなり「カーッ!」!!
この「カーッ!」がリーを怪奇スターの頂点に押し上げた映画史に残る伝説の「カーッ!」だとしても、私のノミの心臓には刺激が強すぎるんで勘弁して欲しいんですたい。
止めないとアメコミ風に加工したりして遊んじゃうよ?
「POW!」
食事の際はお行儀よくねドラちゃん(こう呼ぶと途端にあふれ出る猫型ロボット感)。
主人公はヴァン・ヘルシング博士
ブラム・ストーカーの怪奇小説「吸血鬼ドラキュラ」を扱った数ある映画の中でも【吸血鬼ドラキュラ(1958)】がこれほど人気を博した理由のひとつには、善と悪の力関係が最適だったことが挙げられるのではないでしょうか。
ドラキュラを扱った他の映画は、どちらかと言えばドラキュラ(=悪)の方が強い。
最後には当然人間(=善)が勝利するにはするんだけれど、基本的にはどれも辛勝。一歩間違えれば闇夜に消えるドラキュラの高笑いで終わる物語になっていたかも知れないギリギリの勝利が多いんです。
ところが【吸血鬼ドラキュラ(1958)】では、その善の力と悪の力が拮抗しているんですね。
というのも【吸血鬼ドラキュラ(1958)】の主人公は飽くまでもピーター・カッシング扮するヴァン・ヘルシング博士ですから、ドラキュラと対等に渡りあえる彼のポテンシャルは他の映画よりかなり高い。
その分ドラキュラに狙われた時の絶望感は薄く、結果的にヴァン・ヘルシング博士のヒーロー度が増しています。
モンスターと渡り合う生身の人間
ヴァン・ヘルシング博士がドラキュラの棺を見つけた時とかちょっとコントみたいですもんね。
生身の人間であるヴァン・ヘルシング博士にも“吸血鬼の棺”を物理的に見つけることができるんだって驚いたのと、棺の在り処がバレた時の「あっちゃー!見つかってるやーん!」っていうドラキュラ伯爵のリアクションがね。
最終決戦ではクリストファー・リーvsピーター・カッシングという二大怪奇スターによる取っ組み合いの大立ち回りが観られちゃう。
2000年公開の映画【ドラキュリア(2000)】でクリストファー・プラマーが演じたヴァン・ヘルシング氏は、宿敵ドラキュリア(ジェラルド・バトラー)の血を注射することで自分も不死の肉体を手に入れていましたが、そんな禁忌に手を染めていないピーター・カッシング版ヴァン・ヘルシング博士は完璧に普通の人間。
それなのに吸血鬼ドラキュラと互角に渡り合う。
2000年/アメリカ/監督:パトリック・ルシエ/出演:ジェラルド・バトラー、クリストファー・プラマー、ジョニー・リー・ミラー、ジャスティン・ワデル、コリーン・フィッツパトリック、ジェニファー・エルポジート、オマー・エップス注[…]
これまでのヴァン・ヘルシング像ではあり得なかった描写です。
怪奇映画の傑作でもあり、無敵のヒーローアクションでもあるような、この絶妙のバランス感こそ、ハマー・フィルムがヒット作を連発することができた要因のひとつなんだろうなって思います。
ほら、いつの時代も大衆は“宿命のライバル”とか“因縁の対決”とかが大好物ですやんか。
映画【吸血鬼ドラキュラ(1958)】の感想一言
ヴァン・ヘルシング博士が万能すぎるあまりドラキュラ伯爵の捉えどころのない不気味さは半減していると言わざるを得ません。それが悪い訳じゃなく、クリストファー・リーのドラキュラ伯爵はその強烈なビジュアルが浸透しすぎてキャラクター化しちゃってるから、「恐怖」の対象としては遠い位置にいるような気がします。
その代わりと言っていいのかどうか、【吸血鬼ドラキュラ(1958)】でドラキュラ伯爵よりも怖いのは、胸に杭を打たれた時の美女の悲鳴と苦悶の表情、及びそれを聞いても見ても眉一つ動かさず杭を打ち続けるヴァン・ヘルシング博士です。
やめて……。
ドラキュラより怖い……。
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