1962年/イギリス/監督:デヴィッド・リーン/出演:ピーター・オトゥール、アレック・ギネス、オマー・シャリフ、アンソニー・クイン、ジャック・ホーキンス、アーサー・ケネディ、アンソニー・クエイル/第35回アカデミー作品・監督・撮影・編集・美術・作曲・録音賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
世界中に名画は数あれど、切り取られたワンシーンを見ただけで即座に何の映画か分かってしまう作品も少ないでしょう。
例えば上の画像。
映画好きのあなたならもちろん、何の映画のどのシーンなのかすぐに分かりましたよね?
【アラビアのロレンス】は、そういった後世に残る名場面をたくさん生み出しました。
第一次世界大戦中、オスマン帝国からの独立を目指してアラブ人が起こした「アラブ反乱(1916年~1918年)」でアラブ人を支援したイギリス陸軍将校トマス・エドワード・ロレンス(ピーター・オトゥール)を描いた伝記映画。
何回観ても私には政治的背景なんてさっぱり理解できません。
でも忘れられない場面はたくさんあるし、ピーター・オトゥールの青い瞳とそこに映し出される黄色い砂漠と灼熱の太陽の対比は素晴らしいんです。
映画【アラビアのロレンス】のあらすじザックリ
複雑な舞台背景…一部では“英雄”と呼ばれた男ロレンス
映画では冒頭でバイク事故死させることでアラブ時代の自身との決別を描き、また映画の最後でロレンスの乗った車がバイクに抜き去られるシーンは、非アラブのトルコ人対アラブ人という民族対立の構図からスンナ派のハーシム家対ワッハーブ派のサウード家の部族間対立へと移り変わろうとする時代の流れに置いていかれようとするロレンス達のヒジャーズ王国を暗示していた。
出典:Wikipedia
こんなこと分かってなくていいです。
じゃあ書くなって?はは。
そもそもアラブとかトルコとかって日本人には馴染みの薄い「宗教」や「思想」がガッツリ絡んでて難解すぎ。「~を暗示している」とか言われたって…ねえ?
そこへ大戦を有利に運びたいイギリスの思惑も絡んだ日にゃあ、世界史に詳しくない私なんかにはさっぱりですわ。
日本人でないにしても「【アラビアのロレンス】は名画だ!」って言ってる世界中の人達全員が【アラビアのロレンス】のすべてを完璧に理解しているとはとても思えません。
だって映画の冒頭でロレンスの葬儀に訪れた当時の人々の反応からも分かるように、現地では英雄として讃えられた彼に対する評価ですら受け取る人によって様々なんですから。
製作側の意図をこねくり回して難しく解釈するのだけが映画じゃないじゃないですか。
こういった「難解だけど視覚や情緒に訴えかけてくる映画」を観る時は単に、「地平線から登ってくる太陽痺れる!」とか「指でマッチ消せるようになりてえ!」とか「オマー・シャリフかっこええ!」でいいんですよ。
ただ事実として、オスマン帝国から独立するためアラブ人達を率いて戦った異色のイギリス人がいたということが分かっていればいいんです。たぶん。知らんけど。
T・E・ロレンスという人物(趣味:マッチの火消し)
最初に登場した時のトマス・エドワード・ロレンス(ピーター・オトゥール)の役職。「地図作成課少尉」。なんとなく地味。
ロレンスはここから、死の直前には大佐にまで昇進しています。
知識は豊富だけど飄々としてつかみどころがなく、指でマッチの火を消すのが趣味の変人です。
イギリス軍上層部はこの変人であれば或いはアラブ人の反乱を扇動することができるかも知れないと目して、オスマン帝国に敵対するファイサル王子(アレック・ギネス)の元へロレンスを派遣します。
会見の席で、道理に見合えばさらっとイギリスに不利になる発言もするロレンスを訝しがるファイサル王子。
ロレンスはにっこり笑顔を返すだけ。
頭空っぽの売国奴と思うなかれ、ロレンスはきっと国がどうの人種がどうのという小さな了見で生きていない人です。いつでも「人として」正しい方に加担する。ちょっと変わってることは間違いないけどそこら辺の小市民とはスケールが違う。
部族の仲間を救った行動を讃えられアラブの伝統的な白装束をもらった時の無邪気なはしゃぎようから察しても、その心根は損得や利害抜きで自分の中の善悪のみに従って行動する子供のよう。
少なくとも映画の中ではそんな人物に描かれています。
ロレンスと対照的なハリト族のアリ
砂漠の戦場で大いにロレンスの力となってくれるのがハリト族のアリ(オマー・シャリフ)。
井戸の水を飲んでいたロレンス達の前にはるかかなた蜃気楼の中から現れる姿はまるで神の降臨。
いや黒いから悪魔か?
なんでもいいか、とにかくただの人間とは思えない神秘的な“何か”が、こちらへ向かって近づいてくる。
ここはロレンスが爆破した列車の上に立つシーンとマッチの火を吹き消すシーンに並ぶ有名な場面です。
ロレンスとは対照的な黒い肌に黒い衣装をまとい、男らしく言葉少なにロレンスの傍らで戦況を見守るアリ。
ホモっ気とマゾっ気を併発していたとされるT・E・ロレンス少尉は作中でも少々艶っぽいオーラを振りまいていて、どちらかと言えば“ヒーロー”というより“ヒロイン”のような印象ですから、【アラビアのロレンス】におけるヒーローは誰かと聞かれればこのアリと答えた方が私はしっくり馴染む気がしています。
オマー・シャリフといえば【ドクトル・ジバゴ】の時の「不倫に溺れるダメ夫」も良かったですけど、彼のような褐色の肌ってやっぱり砂漠がよく似合う。
…て、あれ?
寒~いロシアが舞台の映画【ドクトル・ジバゴ】で主人公ユーリ・ジバゴを演じた時のオマー・シャリフって、もっと肌の色が白かったよね?
見てみましょうか。
こちらがユーリ・ジバゴに扮したオマー・シャリフ。
…アリを演じてた時よりは白いような気もするけど、それほど白くもなかったか。
でも私は【ドクトル・ジバゴ】を最初に観た時、オマー・シャリフってロシア人俳優だと信じて疑いませんでした。ユーリ・ジバゴの時にはちゃんと“砂漠の民っぽさ”かゼロになってるもんね、お見事。
1965年/アメリカ・イタリア/監督:デヴィッド・リーン/出演:オマー・シャリフ、ジュリー・クリスティー、ジェラルディン・チャップリン、アレック・ギネス、ロッド・スタイガー、トム・コートネイ、ショブハン・マッケンナ、ラルフ・リチャー[…]
とか何とか、小難しい「アラブ反乱」のことは一先ず置いといて、好みの男性(この映画に女性は出てこないので、あなたが男性であろうが女性であろうが「好みの男性 」)に心奪われながらアラビアンナイトな世界観に溺れましょう。
映画【アラビアのロレンス】の感想一言
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。