1989年/アメリカ/監督:スパイク・リー/出演:スパイク・リー、ダニー・アイエロ、オジー・デイヴィス、ジョン・タトゥーロ、ルビー・ディー、リチャード・エドソン、ジャンカルロ・エスポジート、ビル・ナン、ロージー・ペレス
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

ファイザパウワッ !
ファイザパウワッ !
ファイザパウワッ !

映画【ドゥ・ザ・ライト・シング】のあらすじザックリ
「ロサンゼルス暴動」を予見したような映画

いつまでもこんな風に笑い飛ばしていたかった映画です。

ところが今やそうはいかない。
もともと「笑い飛ばす」ような内容では決してないのですが(いやオモロイねん普通に)、【ドゥ・ザ・ライト・シング】に描かれていると同じ「アメリカに根付く人種問題」を発端とした歴史的大事件が現実のものとなってしまってからというもの、この映画が発するメッセージはますます重く受け止められるようになりました。

その歴史的大事件とは「ロサンゼルス暴動(または「ロドニー・キング事件」)」のこと。
ロサンゼルス暴動
1992年4月 29日夕刻から5月2~3日にかけロサンゼルス市南部のサウスセントラル地域を中心に黒人・ヒスパニック系市民による商店街の放火,略奪が行われた事件。
(中略)
直接のきっかけになったのは,黒人青年ロドニー・キングがパトカーによる追跡の末白人警官によって暴行を受けた事件で,警官の過剰暴力行為が明らかだったにもかかわらず,陪審評決で警官は無罪となったことによる。これを人種差別的評決であるとし,評決がテレビ放映された直後に暴動は発生した。
出典:ブリタニカ国際大百科事典

【ドゥ・ザ・ライト・シング】公開の3年後(日本公開は1990年なので日本では2年後)に起ったこの事件は、映画を観て影響受けた人が集まってドッキリ仕掛けてる可能性を疑うくらい共通する部分が多々あります。
試しにロサンゼルス暴動の写真や映像を探して見てみてください。大抵の人は暴動の様子が映画そのもの過ぎてビビると思います。
怖いよ“BLK PWR(ブラック・パワー)”
【ドゥ・ザ・ライト・シング】と「ロサンゼルス暴動」の類似性について考察しているサイトは他にいくらでもありますのでこれくらいにしておきまして、過去に私がこの映画に関連して個人的にビビったことを書きたいと思います。

冒頭で私が叫んでいた「ファイザパウワッ! 」は一体何なのかと言いますと、ロサンゼルス暴動でのロドニー・キングに当たる青年、ラジオ・ラヒーム(ビル・ナン)が作中いつも聴いてる曲を歌ってたんです。
社会派ヒップホップの先駆者パブリック・エナミーの“Fight the Power”という曲なんですけども。
映画の冒頭で、主人公ムーキー(スパイク・リー)の恋人ティナを演じたロージー・ペレスがキレッキレのダンスを踊っている時バックに流れているのもこの曲。
これはこれでめちゃくちゃ痺れるんですけどね、あの頃私がハマったのはパブリック・エナミーではなく2PACでした。
パブリック・エナミーの少しあとにデビューしたヒップホップMCで、それまでのヒップホップとは全然違う新感覚の楽曲をガンガンリリースし倒してた人です。私にとって90年代のヒップホップといえば2PAC。いつも爆音で彼の曲を聴いてたものですよ。
ホントにその才能たるや筆舌に尽くしがたいほどであったのに、今では彼の末路の方が有名になってしまっているのかも知れません。

1991年にデビューして一気にスターダムにのし上がった2PACは残念なことに、1996年、25歳の若さで還らぬ人となってしまうんです。


いいえ、どちらも違います。
何の前触れもなくある晩突然「誰か」に至近距離から撃たれて死んだんです。
誰が撃ったのかは分かっておらず、事件はその後も未解決のまま。
ネットニュースなんてなかった当時、事件が起こってしばらく経ってからようやく彼の死を知った私はひっくり返るくらいビックリしました。普通に「次のアルバムまだかな~」なんて思ってたもんね、殺されてたのにね。B系の彼氏に教えてもらいましたよ確か、「2PAC死んだぞ!」とか言って。「B系」って分かる?古い?

2PACは「アメリカ東西海岸ヒップホップ抗争」の犠牲者だと言われています。
要するに“ギャングスタ・ラップ”の火付け役となった西海岸のヒップホッパーら(2PACはこっち)と、それに少々遅れを取った東海岸のヒップホッパーらの仲が悪かった訳ですよ、それはもう相手側の目立つMCなんて殺してやりたいほどによ。いやだから誰が殺したか「断定」されてはいないんだけどね?今でも「2PACは東海岸の連中に殺 られた」とまことしやかに囁かれているのです。

【ドゥ・ザ・ライト・シング】は黒人監督スパイク・リーが撮った映画であるものの、1970年代に流行った「ブラック・ムービー」とは一線を画すとして「ニュー・ブラック・ムービー」と呼ばれています。
私が【ドゥ・ザ・ライト・シング】を観る時ひしひしと感じるのは「人種の壁」と「ブラック・パワー」。
スパイク・リーも2PACもカッコいいけど、暴動とか抗争とか、やっぱり「ブラック・パワー」って底知れなくて凄いし怖いよ。
ラジオ・ラヒームの指輪「LOVE」と「HATE」
カッコいいと言えばムーキーが「なにそれゴッサかっこええやんけ!」と大いに食いつくのがラジオ・ラヒームの指輪(武器?)。

右手には「LOVE」、左手には「HATE」の文字が煌めきます。
アフリカ系アメリカ人の方々って普通にこういう豪奢なゴールドアクセサリーをつけているイメージですけど、これにはちゃんと【狩人の夜】という元ネタがあります。
イカれた牧師ハリー・パウエル(ロバート・ミッチャム)が「愛」に見立てた右手と「憎しみ」に見立てた左手を戦わせる寸劇までバッチリコピーしてみせるラジオ・ラヒームがプリティー。
1955年/アメリカ/監督:チャールズ・ロートン/出演:ロバート・ミッチャム、リリアン・ギッシュ、シェリー・ウィンターズ、ビリー・チャピン、サリー・ジェーン・ブルース、ジェームス・グリーソン、イヴリン・ヴァーデン注※このサイ[…]
映画【ドゥ・ザ・ライト・シング】の感想一言
2PACの半生は【オール・アイズ・オン・ミー】というタイトルで映画化されています。
2017年に。
デビュー当時から2PACを聴いてた私は正直「21年も経ってんのに今頃映画化?!」って思ったものですが、よく考えたら伝記映画って主人公の死後何年も経ってから製作されるのが当たり前だよね。
【十戒(1956)】とか。
「没後21年で映画化」なんて全然序の口やったわ、すんまへん。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。