【アマデウス】

映画【アマデウス】あらすじと感想。サリエリのモーツァルトへの愛憎劇

【アマデウス】

1984年/アメリカ/監督:ミロス・フォアマン/出演:F・マーリー・エイブラハム、トム・ハルス、エリザベス・ベリッジ、ジェフリー・ジョーンズ、ロイ・ドートリス/第57回アカデミー作品・監督・主演男優・脚色・美術・衣装デザイン・メイクアップ・音響賞受賞

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

モーツァルトのおとん?
©amadeus/アマデウスより引用

この映画を観て初めて、「愛憎」という言葉はなにも男女間にだけ使われるものではないと認識しました。

 

“神童”とあがめられ、何ら努力することなく音楽に愛され、神の旋律を奏でる才能を持つ音楽家モーツァルト(トム・ハルス)。

不運にもそんなモーツァルトと同じ時代に生まれたばっかりに人生のすべてを狂わされてしまうアントニオ・サリエリ(F・マーリー・エイブラハム)のモーツァルトへの愛憎を描いた作品。

 

アカデミー賞8部門受賞の珠玉の名作、【アマデウス】です。

 

 

 

サリエリの愛憎を描いた映画【アマデウス】のあらすじザックリ

精神病院の個室でピアノを弾く自殺未遂をはかった老人の元に、若い牧師がやってくる。老人はこの曲を知っているかと聞きながらいくつか演奏するが、牧師が知らない曲ばかり…。しかしふと聞いたことがある曲が流れ、「この曲は知っています」と言うと、老人の目は突如ギラつき、「これはモーツァルトの曲だ。私が殺した」と懺悔を始める。

 

事実とだいぶ違うアントニオ・サリエリの人物像

ピーター・シェーファーによる同名戯曲の映画化作品である【アマデウス】では、主人公であるアントニオ・サリエリが、さも「信心深くあったにもかかわらず世間から正当な評価を受けられず傍若無人の天才モーツァルトの陰でくすぶり続けた可哀想な狂人」のように描かれていますが、実際は全然違っていたようです。伝記映画ではよくあることですね。

モーツァルトについて語るサリエリ
©amadeus/アマデウスより引用

晩年病気がちではあったけど精神病院に入るようなことはなかったし、モーツァルトを毒殺したとされる当時のウィーンにはびこっていた黒い噂も、現代ではかなり信憑性が低いとされています。

大体サリエリはサリエリでまっとうに成功してる人なので、モーツァルトに対して映画で描かれているような激しい嫉妬心を燃やしていたかと言われれば疑問。

彼は彼で、モーツァルトに嫉妬するほど才能のない人ではなかったようです。

 

 

衝撃的で思い出深い不朽の名作

【アマデウス】を最初に観た時、何の映画か全然分かっていなかった私

 

それまで私にとって映画といえば、ヒットしている最新作を無難に映画館で観る程度でしたが、ある日なんとなく色んな映画を観てみたいと思い立ち、

朱縫shuhou

「入口」が分からん。

まずはアカデミー賞受賞作でも観てみるか…。

と最初に手に取ったのが【アマデウス】だったのです。

あ行から順番に観て行こうとか思って、「マデウス」の「あ」から行ったのかも知れません。よく覚えていませんが。

 

それにしても当時の私を褒めてやりたい。

出演者は知らない俳優ばかりだったし、あらすじも何の話なのかも知らないまま、先入観一切なしでこれほど映画を面白いと思ったのは初めてだったので。

少々退屈なオペラ合戦
©amadeus/アマデウスより引用

そして【アマデウス】を観たことをきっかけに、私は古かろうがマイナーだろうが、様々な映画を観てみたいと思うようになりました。

今でも好きな映画ナンバーワンです。

おすすめ中のおすすめ。

 

 

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

とりあえず、主人公のアントニオ・サリエリに、どうやら恨まれている様子のあなた

そうそう、かわいい巨乳のお姉ちゃんとキャッキャ言うてはしゃぎ回ってる、そこのアホっぽい青年

アホっぽいモーツァルト
©amadeus/アマデウスより引用

うん君きみ。

君ちょっと、名前何て言うの?

 

えっなになに?

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト??

あっ、

朱縫shuhou

タイトル名前やったんや!

って

もーこっからでしたからね。

 

どれほど何も知らずに【アマデウス】に挑んだかが伺い知れるでしょう?

 

そして神童アマデウスは音楽以外はバカでした

この映画を観た人の大半は「モーツァルトってバカやったんやー」って思うんでしょうね。前述のとおり、伝記映画にべらぼうな脚色なんて当たり前ですけど、モーツァルトが奔放な人物であったことは間違いないようです。

モーツァルトの性格についてですが、いろいろと説があるようです。とても明るくてユーモアのある人物だという説と、楽天的で性格が悪く、浮気癖があり浪費が激しいという説です。

(中略)

現在の価格でいうと億に近い金額を稼いでいたともされています。ですが、モーツァルトは晩年、貧困に苦しむこととなり、周囲の人たちへ借金の手紙を送ることとなります。

その原因は浪費癖だとされています。モーツァルトは高価な衣服を好んで着ていました。服と同じように引越しを繰り返し、次から次へと住む家までも交換していきました。

出典:モーツァルトの容姿と性格

幼い頃から目隠しでピアノを弾くことができ、書く前から頭の中に楽譜が完成しているほどの音楽の才能の持ち主。

こんな人物に「少しは謙虚になれ」と言っても無理なのかも知れません。

目隠ししてもピアノ弾けちゃうモーツァルト
©amadeus/アマデウスより引用

楽器を演奏したり楽譜に向かって作曲したりしている場面もシビれますが、作中でモーツァルトがもっとも輝くのはオペラの指揮をしているシーン。

指揮するモーツァルト
©amadeus/アマデウスより引用

この時ばかりは薄らバカボンも輝いて見えます。

【アマデウス】でモーツァルトを演じるに当たりトム・ハルスはピアノと指揮を猛勉強したそうです。

 

しかし「天は二物を与えず」ってこんな人のことを指してるんでしょうね。

この神童には音楽以外の才能はまるでなかったみたいです。

 

 

サリエリが授かった「モーツァルトの才能を見抜く才能」

冒頭に出てくる精神病院の老人は、モーツァルトではなく彼に焦がれてやまない元宮廷作曲家のアントニオ・サリエリ

皇帝に仕える宮廷音楽家サリエリ
©amadeus/アマデウスより引用

女、酒、あらゆる享楽を遠ざけて、人に尽くし信心深くありますと神に誓い、その代わり音楽の才能をくださいと幼い頃から願っていました。

 

それほど音楽を愛するサリエリももちろん、“神童”モーツァルトの噂は耳にしていました。

それほど音楽の才能に恵まれた人物だなんて、さぞかし自分以上に信心深く敬虔で、尊敬するに値する人格者に違いない、と会える日を楽しみにしていたサリエリ。

ところが初めてモーツァルトを観たサリエリは愕然。

モーツァルトは神への信仰心など欠片も見当たらない、女のケツを追いかけ回してケラケラ笑ってる薄らバカだったから。

アホに負けてるサリエリ
©amadeus/アマデウスより引用
サリエリ

わし…

わしあんなアホに負けとんのかえーっ!

お察しします。

 

モーツァルトには及ばないにしろ、サリエリも音楽の才能には恵まれていました。

しかし才能があるがゆえにモーツァルトの才能がいかに神がかっているのか、追い越しようもないのか、サリエリはいち早く気づいてしまいます。

 

皮肉にもモーツァルトの才能のすべてを見抜けることがサリエリの突出した才能だったのです。

 

モーツァルトだか神だか訳わからなくなってくる

モーツァルトと接していく間にどんどん思考がおかしくなっていくサリエリ。

出会った当初はモーツァルトを「まるで神の使者のよう」と形容していたのに、最後には「私は神に勝ったのだ」なんて言って、モーツァルト自身がもう神であるかのように錯覚してしまっています。

神をあがめるサリエリ
©amadeus/アマデウスより引用

 

狂喜のサリエリと俯伏のモーツァルト

晩年のモーツァルトは浪費癖がたたって借金苦に追い込まれ、その体も病魔に蝕まれていきます。

病床に伏すモーツァルトとサリエリが、一緒に曲を楽譜に起こす作業をする場面もエクセレント。

死にかけモーツァルト
©amadeus/アマデウスより引用

モーツァルトはベッドに寝そべり上半身だけ起こし、そのベッドの足元に机と椅子と楽譜を置いてサリエリが座り、そしてモーツァルトが言う通りにサリエリが音符を書いていく…。

モーツァルトの言う通り譜面を書くサリエリ
©amadeus/アマデウスより引用

モーツァルトが力強く拳を振りかざすと打楽器の音が響き、しなやかに手をなびかせると管楽器の旋律が小川のように流れて行きます。

この時のですよ。

今にも死にそうなくらい弱ったモーツァルトと、それとはまったく対照的な、今まで一度も映し出されることのなかったサリエリの活き活きとした表情ときたら!

モーツァルトの音楽に直に触れることができた時のサリエリの喜びと興奮ときたら!

足元から髪の先まで、サブいぼ(鳥肌)がゾゾゾゾゾ~っと一気に駆け上る感じ。

 

すごいじゃないの。

すごいコンビネーションじゃないの、あなたたちさあ。

 

同じ音楽を愛する者同士、分かり合えないことはないでしょうに…。

モーツァルトがこれほど追い込まれるよりもっと以前に、奔放なモーツァルトを堅実で敬虔なサリエリが支え、共に高め合っていくことはできなかったのでしょうか。

 

 

盛髪ばりばりのエリザベス・ベリッジがめちゃめちゃかわいい

音楽家と言えば、学校の音楽室に飾ってある音楽家の肖像、おもろかったですよね。バッハとかシューベルトとかね。「なんやねんそのヅラ~コントやんけ~」って思ったもんです。

時代と国によってはああいったヅラが大流行した時期があった訳ですが、【アマデウス】ではあんなもんちゃいますよ。

もー盛る盛る。

盛りすぎ。

特に女性。

盛り髪のエリザベス・ベリッジ
©amadeus/アマデウスより引用

デカけりゃデカいほどオサレな風潮があったみたいですが、どうにもこうにも…。

みるみるデカくなっていくモーツァルトの妻のコンスタンツェエリザベス・ベリッジの頭に笑いを禁じ得ないのは私だけ?

 

コンスタンツェがサリエリを嫌う謎

コンスタンツェ
見送る召使もおりませんけど。

ちなみにモーツァルト家を訪ねてきたサリエリを、コンスタンツェがツンケンしながら追っぱらう理由は、劇場公開時にはカットされていたシーンを観ていないとよく分からないと思います。

劇場公開版は158分。レンタルする時やDVDやBlu-rayの購入時には、カットされたシーンを追加した180分の「ディレクターズ・カット版」を探してください。

コンスタンツェの伝説的おっぱいポロリ
©amadeus/アマデウスより引用

劇場公開版にはコンスタンツェの伝説的おっぱいポロリも収録されておりませんのでご注意を。

 

「世界三大悪妻」のひとりと言われるコンスタンツェ

そんなモーツァルトの妻コンスタンツェですが、映画【アマデウス】では演じたエリザベス・ベリッジのキュートな外見との相乗効果もあって、「ちょっと頭は足りないけど心底モーツァルトを愛していたいじらしい女性」といった感じで描かれていますが、実際は「世界三大悪妻」のひとりに数えられるほどのワルい妻であったと言われています。

どんなワルさ加減かと言いますと、

  • 贅沢な暮らしで散財
  • モーツァルトの遺体を共同墓地へ入れる(いまだにモーツァルトの遺体の所在は不明)
  • モーツァルトの死後直筆楽譜を売りさばく

などなど。

 

しかしこれらのお話もサリエリ同様、信憑性が薄く近年見直されているようです。

今で言うジャニオタのような人達からの嫌がらせのデマもあったかも知れないし、いつの時代も天才やスターの妻になる人は大変ですね。

 

「世界三大悪妻」には他に、古代ギリシアの哲学者ソクラテスの妻クサンティッペと、ロシアの小説家レフ・トルストイの妻ソフィア・アンドレエヴナが挙げられています。

 

 

映画【アマデウス】の感想一言

朱縫shuhou

まさに愛憎

サリエリのモーツァルトへの畏れと愛ゆえの憎悪、そしてコンスタンツェを始めとする女性陣の髪が、怖いくらいに盛られた作品。

 

いつもは脚色過多の映画に文句たれてる私ですが、【アマデウス】でのサリエリは無理なく良い塩梅でキャラクターとして仕上がっているので問題ないと思います。

 

…後世の私達に多少悪いイメージがついてしまったのは気の毒でしたが…。

 

 

>> 翌年(第58回)のアカデミー最優秀作品賞はこれ!

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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