1991年/アメリカ/監督:ジョナサン・デミ/出演:アンソニー・ホプキンス、ジョディ・フォスター、スコット・グレン、テッド・レヴィン、アンソニー・フィールド/第64回アカデミー作品・監督・主演男優・主演女優・脚色賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
怖いのが苦手な私は、「何となく怖そう」という理由だけで避けているホラー映画やサスペンス映画がいくつかあります。
この映画も例にもれず、公開当時大ヒットしていたにもかかわらず全く観る気になれませんでした。
今ではあの映画館の大画面でレクター博士の迫力を味わわなかったことを後悔しています。エグいのはエグいにしろ「怖い」って内容じゃなかったのにチキショウ。
そんな思い出が蘇るサスペンス映画の傑作、【羊たちの沈黙】です。
映画【羊たちの沈黙】のあらすじザックリ
「ハンニバルシリーズ」時系列
【羊たちの沈黙】は4部作で完結し、この【羊たちの沈黙】はその1作目にあたります。
【ハンニバル・ライジング】(2007年)
【レッド・ドラゴン】(2002年)
【羊たちの沈黙】(1991年)
【ハンニバル】(2001年)
残念ながら主人公のFBI訓練生クラリス・スターリングを演じアンソニー・ホプキンスに引けを取らない存在感で観客を魅了したジョディ・フォスターが出演しているのは【羊たちの沈黙】のみ。
【ハンニバル】のクラリスをジョディ・フォスターが演じていたら少しは観れたんじゃないのか、とか未だに考えてしまいますけどね。
ちなみに【ハンニバル】ではジュリアン・ムーアがクラリスを演じています。
2001年/アメリカ・イギリス・イタリア/監督:リドリー・スコット/出演:アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア、ゲイリー・オールドマン、レイ・リオッタ、フランキー・R・フェイソン、ジャンカルロ・ジャンニーニ、フランチェスカ・ネ[…]
原作はトマス・ハリスの同名小説。
女性を殺害し皮を剥ぐ猟奇殺人犯の心理とは?
FBI訓練生のクラリスは、世間を震撼させている殺した女性の皮を剥いで遺棄するという連続猟奇殺人事件の犯人“バッファロー・ビル”(テッド・レヴィン)を探すヒントを得るため、服役中の元精神科医で凶悪殺人犯のハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)と面会することになります。
「FBI捜査官」ではなく「FBI訓練生」というこの設定が、まだ未熟でトラウマを抱えるクラリスがレクター博士に懐柔されまいともがく姿に現実味を持たせています。
レクター博士は「異常者」と鑑定されているため刑務所ではなく精神病院に収監されていますが、その警備は刑務所並み。窓もなく光も差さない地下奥深くのガラス張りの独房に閉じ込められています。
レクター博士に会うまでに、周囲から彼の頭脳の明晰さと残忍な性質を散々注意されるクラリス。
ちょいちょい。
なんなんよ。
やめてよそんなん言われたら余計怖なるやん。
人を射抜くハンニバル・レクター博士の視線
何重にもロックされた鉄格子の扉を開け、レクター博士が収監されている地下に辿り着くと、左手に別の入院患者の独房が2~3室並んだ細い廊下の先にポツンと椅子が置かれています。
どうやらその椅子の前にあるのがレクター博士の独房らしい。
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その一番奥の独房で、
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収監されている他の精神病患者たちの前を通り抜けやってきたクラリスを待っていたのは、
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口元に笑みをたたえこちらを見据える落ち着いた雰囲気の紳士。
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大声で自己主張してるわけでも、BGMが効果を演出しているわけでも、表情がアップで映し出されるわけでもないのに、ただ立ってこちらを見据えているだけなのに、初登場のこのシーンで完璧にレクター博士に食われます。
ヌメっとした空気に自分ごと周囲が飲み込まれていくみたいです。
「レクター博士」が憑依してんのかアンソニー・ホプキンスは。
余りに危険な人物のため、鉄格子だけでなくガラスで隔てられているのですが、そんなもん意味ない。
ガラス越しでも普通に殺されそう。
目力おかしいって。
元精神科医ということも影響してか、人の心の奥深くまで見透かすような強烈な視線よ。
ともすれば震え上がって腰が抜けそうなところを、クラリスは感情を悟られまいと気丈にレクター博士と対峙します。
タイトル【羊たちの沈黙】の意味を考察
現在も上院議員の娘が猟奇殺人犯“バッファロー・ビル”に誘拐されたままであるため、早急な事件解決を迫られるFBIに対し、レクター博士が情報を教える見返りとして要求したのは「クラリスが自分の過去を話すこと」。
きっと最初に会った瞬間からクラリスが「何か」を抱えて苦しんでいることは分かっていたのでしょう。
父を亡くした後に引き取られた酪農を営む伯父のもとで、明け方に屠殺される子羊たちの悲鳴(彼女にはそう聞こえた)を聞いたことがクラリスの強烈なトラウマになっていました。
そりゃそうよ、家畜の屠殺シーンなんて子供でなくてもヘビーやん。
それを聞き出したレクター博士は、満足げに“バッファロー・ビル”を特定するヒントをクラリスに教えてくれます。
救えなかった子羊たちを今度こそ
タイトルの「羊たち」が指すのは、クラリスの幼少期に救えなかった子羊たちであり、彼女のトラウマである。彼女がFBI捜査官となり上院議員の娘を救うことによって、トラウマを克服する(羊たちの悲鳴が止む)という物語である。
出典:Wikipedia
【羊たちの沈黙】…「羊たち」はクラリスが見殺しにするしかなかった「農場の子羊たち」の意味と、原題【The Silence of the Lambs】の「Lamb」という単語からは「子羊=いけにえとされる動物の代表」の意味としても受け取ることができます。
すなわちこの事件の場合は「猟奇殺人事件の被害者たち」です。
クラリスは自身のトラウマそのものである「子羊たち」と被害者を重ね合わせ、事件を解決することで今でも聞こえる悲鳴を鳴り止ませて(=「沈黙」)知らず知らずのうちにそのトラウマを克服しようとしているのではないでしょうか。
今回の事件とクラリスのトラウマとの共通点をその洞察力で即座に見抜いたレクター博士が、事件解決後クラリスに「子羊たちの悲鳴はまだ聞こえるのか?」と問いかけた時は背筋がぞわっとしました。
実話?バッファロー・ビルって実在するの?
余りにも事件が真実味を帯び過ぎて、実話の映画化だと思っている人も多い作品。
残念ながら(?)【羊たちの沈黙】は完全にフィクションです。
ただしモデルになった人物がいます。
素性の知れない猟奇殺人犯に対する便宜上の「呼称・あだ名」として使われた“バッファロー・ビル”。
実在したバッファロー・ビルとは、19世紀から20世紀初頭に実在したアメリカ西部の開拓者・ガンマンで、バッファローを狩る猟師でもありました。
仕留めたバッファローの皮を剥いだことから、女性の皮を剥ぐ猟奇殺人犯の呼称に充てられたわけですね。
さらにあだ名ではなく人物像としては、シリアルキラーとして有名なエド・ゲインとテッド・バンディがモデルになっているそうです。
もし知らない人がいたら調べてみてください。エド・ゲインは調べて後悔する人もいるかも知れませんけど。閲覧注意ばっかりだよ。
テッド・バンディは閲覧注意ってワケでもないけど、やっぱり相当イカれてるよね。
映画【羊たちの沈黙】の感想
現実にこんな人の心を見透かす凶悪殺人犯に付け狙われたらどうしたらええねんと想像したらビビッて夜も眠れません。少しでも会話しようものならいつの間にかうまーいこと操られてしまってるかも知れませんしね。
しかし安心してください。
ハンニバル・レクター博士も架空の人物。
前出の“バッファロー・ビル”と同じく、モデルとなった人物には諸説ありますが、こんな奴は実在しません。
「人食いハンニバル」=殺した被害者の臓器を食すことで知られる紛れもない凶悪殺人犯なのに、クラリスに対する紳士的な振る舞いからどうしても心底憎むことができません。
逆に「味方(?)になってくれたらこれほど頼りになる人もいない」と思わるダークヒーロー。
「いやいや、殺人鬼やからその人」と言い聞かせなければならないほどの不可思議なカリスマを持ったハンニバル・レクター博士の物語。
【羊たちの沈黙】以外は全然おもろないけど、時間が許せば4部作まとめて一気に観てしまうのもいいかも。
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