【エレファント・マン】

映画【エレファント・マン】あらすじと観た感想。結末は自殺なのか自然死なのか

1980年/イギリス・アメリカ/監督:デヴィッド・リンチ/出演:アンソニー・ホプキンス、ジョン・ハート、ジョン・ギールグッド、アン・バンクロフト、フレディ・ジョーンズ、ウェンディ・ヒラー

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【エレファント・マン】
©The Elephant Man/エレファント・マンより引用

【イレイザーヘッド】デヴィッド・リンチ監督による人間の尊厳と美醜に対する意識の本質を深くえぐる伝記映画。

全編モノクロで撮影された映像は、19世紀のロンドンの陰鬱で不気味な雰囲気を余すことなく表現しています。

 

場末の見世物小屋で象人間 エレファント・マンとして晒し者にされていた奇形の青年の実話は、ブロードウェイの舞台劇として世に出たそうです。ブロードウェイでヒットしたのは涙を誘う感動的な物語だったといいますから、同じ実話の映像化と聞いて映画館に足を運んだ観客はいささか戸惑ったことでしょう。

だって映画版はトラウマになるくらいショッキングな内容なんですもん。

そりゃあ感動的ですよ?涙を誘いますよ?

でも人間の汚い部分もありありと描かれますから(映画版は舞台劇が原作ではなく実話を基にしたオリジナル・ストーリー)。

 

こういう映画を観て己を顧みて、良い人間でありたいね。

【エレファント・マン】です。

 

 

 

映画【エレファント・マン】のあらすじザックリ

19世紀のロンドン。ジョン・メリックは生まれつき身体の強度の奇形による稀にみる外観のため「エレファント・マン」として見世物小屋に立たされていた。見世物小屋で彼を見かけ興味を持った外科医フレデリック・トリーヴスは、病院の屋根裏部屋で彼の様子を見ることにする。

 

 

“象人間”と呼ばれた奇形の青年ジョン・メリックとは

タイトルの【エレファント・マン】とは、19世紀のイギリスに実在した奇形の青年ジョゼフ・メリック(映画では“ジョン”・メリック)(ジョン・ハート)のこと。
“象人間”といってもオトンが象でオカンが人間ってことではなくて(んなワケあるか)、その由来はメリックを“出し物”のひとつにしていた見世物小屋の興行師による客引き口上だったようです。
興行師
この世は驚きで満ちている。
この生き物の母親は奇異な運命を背負った。なんと彼女は妊娠4ヶ月の時に野生の象に襲われた。襲われた場所は地図にも載っていないアフリカの僻地。その結果は形になって表れた。
ではご覧ください。
世にも醜い“エレファント・マン”です!

興行師がジョン・メリックをこうして宣伝していたのは本当だったようですが、実際にメリックの母親が象に襲われたのかどうか、確かな記録は残っていません。

【エレファント・マン】
©The Elephant Man/エレファント・マンより引用

ただ事実として、重度の奇形だったメリックは、体の大部分に肥大したコブのようなものがあり、変形した口でまともに発音することもできず、巨大な頭部を支えられないため横になって眠ることもできなかったと言われています。

現在では、メリックはプロテウス症候群という病を患っていたのではないかと推察されています。

【エレファント・マン】
©The Elephant Man/エレファント・マンより引用

【エレファント・マン】は、見世物小屋で見つけた彼に治療と援助を申し出る崇高な医師フレデリック・トリーヴス(アンソニー・ホプキンス)と出会ってからのメリックの半生を描いた映画です。

 

 

ジョン・メリックと彼を取り巻く人々

【エレファント・マン】に出て来る「悪い奴」と「良い奴」は半々ってとこ。

メリックを虐待する見世物小屋の興行師バイツ(フレディ・ジョーンズ)やメリックを見せ物にしてひと儲けを企む病院の夜警のおっさん(マイケル・エルフィック)なんかは「悪い奴」、奇病を患っているだけのひとりの人間としてメリックに接するトリーヴス医師や舞台女優のケンドール夫人(アン・バンクロフト)は「良い奴」です。

【エレファント・マン】
©The Elephant Man/エレファント・マンより引用

 

外科医フレデリック・トリーヴスとの出会い

現実世界では物語のように簡潔に人を「悪い奴」と「良い奴」には分けられませんけどね。

でも「良い奴」外科医フレデリック・トリーヴスの【エレファント・マン】での描かれ方は好きです。

トリーヴスは最初にメリックを見た時、無言で涙を流すんです。

ただ目を見開いて一筋の涙を流す。

【エレファント・マン】
©The Elephant Man/エレファント・マンより引用

「かわいそうに!」とかじゃないでしょう。ただメリックの異様な姿にショックを受けたんですよ。その涙に偽善的な匂いは一切ありません。

そしてメリックが患う稀な奇病の研究のためにバイツからメリックを譲り受けるんですね。譲り受けるというか、文字通りお金を渡して“買い取る”。

その後自分が勤める病院の屋根裏部屋にメリックをかくまって交流を深め、彼の眠れる才能を引き出したり彼のために寄附を募って生活を援助したりしてくれるんです。

【エレファント・マン】
©The Elephant Man/エレファント・マンより引用

でもその過程で自身も外科医として有名になっていくトリーヴスはふと考えるんです。

自分だってバイツ達と同様にメリックを利用してるだけなんじゃないかって。

朱縫shuhou

大丈夫やってトリーヴス!メリックも最後に「あなたのお陰です」って言ってるやん!

あんたはバイツ達とは違うって!

紛れもなくメリックを救った張本人であるトリーヴス医師なのに、彼ですら聖者ではなく生身の人間であったことが分かるこの描かれ方がね。人間味があって泣けるんですよ。

 

 

芸術を愛する秀才ジョン・メリック

ところでジョン・メリックは「象(=動物)」であるどころかその外見の恐ろしさとはうらはらに、実はたいへん教養のある人物で、詩を愛し、繊細な模型を造る手先の器用さも持ち合わせる才人です。

【エレファント・マン】
©The Elephant Man/エレファント・マンより引用

メリックの本質には一切目を向けず彼を理解しようともしない興行師バイツと、メリックの内面の美しさに気付き同じ人間として接するトリーヴス医師の対比は、人間社会の縮図のようで観ているこっちまで恥ずかしい気持ちになってくる。

自分が前述した「良い奴」だとは思わないけどさあ、せめて「悪い奴」の比重が高くならないように気を付けて生きたいよね。

ごめんなさい。ちゃんとゴリラ(夫)の内面を見ます。

飯まだ?

私を飯炊き婆のように扱うゴリラだけどきっと内面は美しいんでしょう。

 

 

映画【エレファント・マン】の感想一言

朱縫shuhou

トリーヴス医師らとの出会いを経てやっと人間らしい生き方を手に入れることができたメリックが自らベッドに横になり息絶えるラストは、自殺とも取れるんですけど、その真相は分かりません。

横になったら命の危険があると分かっていたメリックが横になって眠ったのだから自殺なのかも知れません。

でも最後に眠る時のメリックの、なんと安らかなことかですよ。

 

自殺であってもなくても、彼の心が平穏であったならそれでいいです。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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