1989年/アメリカ/監督:リドリー・スコット/出演:マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア、高倉健、松田優作、ケイト・キャプショー、神山繁、ジョン・スペンサー、ガッツ石松、安岡力也、内田裕也
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【ブレードランナー】、【グラディエーター】のリドリー・スコットがメガホンを取った、日本のヤクザのお家騒動に巻き込まれたアメリカ人刑事を描いた映画。
1982年/アメリカ/監督:リドリー・スコット/出演:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング、ダリル・ハンナ、ウィリアム・サンダーソン、ブライオン・ジェームス、エドワード・ジェームズ・オルモス注※このサイト[…]
2000年/アメリカ/監督:リドリー・スコット/出演:ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、リチャード・ハリス、オリヴァー・リード、ジャイモン・フンスー/第73回アカデミー作品・主演男優・衣裳デザイン・録音・[…]
ラスボス佐藤浩史を演じた松田優作(松田龍平・松田翔太のおとん)のハリウッド進出第一作目にして遺作。
撮影当時すでに松田優作の体は癌に侵されていて、それを周囲に知らせず撮影に臨んでいたエピソードは有名だけど、今の若い人は松田優作すらよく知らないんでしょうねえ…(“松田優作”の後ろにわざわざ“松田龍平・松田翔太のおとん”と記載したのもそういう配慮です)。
2014年に亡くなった名優・高倉健も出てるよ。ボソボソと英語なんかしゃべっちゃってね。ハリウッドスターのマイケル・ダグラスやアンディ・ガルシアになんら引けを取りません。
【ブラック・レイン】です。
映画【ブラック・レイン】のあらすじザックリ
ヤクザのお家騒動に巻き込まれた気の毒なアメリカ人
ニューヨークのとあるレストランで食事中の市警の刑事ニック(マイケル・ダグラス)とチャーリー(アンディ・ガルシア)のお二人。
レストランの中央では不穏なムードのアジア人軍団が真っ昼間から何やら会合をしています。
「あれ日本のヤクザや…まあマフィアみたいなもんやな」なんて言いながら眺めていると、また別のアジア人数人がつかつかと店に入ってきて、あっという間に2人殺し、小さな木箱を奪って逃走してしまいます。
その木箱には何が入っているのか、先に言ってしまいますと、偽札(ドル紙幣)を造るための版です。
それも片面のみ。
木箱を奪っていったのは佐藤浩史(松田優作)というチンピラ上がりのヤクザで、奪った版をチラつかせて、もう片方の版の所有者である菅井親分(若山富三郎)との交渉を有利に進めようとしているのです。
要するに組の若手を率いた佐藤のクーデターですね。
しかし松田優作のイカれた演技はいつ観てもやっぱりイカれてる。好きでしたよ「探偵物語」。工藤ちゃん。
こういう演技する日本の若手俳優って今で言うと誰だろう、藤原竜也とか?窪塚洋介とか?
悪事を働く奴の言い訳と悪事を働かないための考え方
ニックの目の前で逃走した佐藤は、意外とここではあっさり逮捕されます。
しかし日本は国内で指名手配されている佐藤の身柄引き渡しを要求。
ニックとチャーリーが日本への護送を担当することになりますが、2人は伊丹空港で護送先の警察官から差し出された日本語の書類の意味が分からず、きちんと確認することもなく、警察官に変装した佐藤の手下にまんまと佐藤を引き渡すという失態をさらしてしまいます。
何やってんねん!
実際の国際間の犯人引き渡しもこんなんやったらどうしよう…ってちょっと不安になる描写ですけど。もしくは視聴者バカにしてんのかって感じ。
身元不明の奴らに殺人犯を引き渡して読めない書類にサインしてハイ終了、とかあり得へん。
そんなわけでニューヨークに端を発したこの事件は、日本に舞台を移して引き継がれることになるのでした。
日本ではなんの権限も持たないニックとチャーリーが捜査の邪魔をしないように見張り役に抜擢されたのが、英語が堪能な松本正博警部補(高倉健)(通称“マサ”)。
基本的にはマサは「“できた人間”の理想像を具現化しすぎか!」って恥ずかしくなってしまうくらいできた人間なんですけど、ものっすごいええこと言ってたんで記載しておきます。
前提としまして、ニックはですね、本国ではただいま業務上横領の嫌疑をかけられてアップアップしている最中なんです。チャーリーはニックは汚職警官ではないと信じ切っているようでしたが、実際はクロ。真っ黒。
それをマサに指摘された時のニックの苦しい言い訳がこちら。
アホです。
子供がいて離婚して慰謝料払ってても悪いことせえへん人間なんていくらでもおるわドアホ!
子供がいて離婚した人がみんな汚職したら地球規模の無法地帯ができあがるやろうがこのアンポンタン!寝言は寝て言え!淀川で頭冷やして来い!
そんなニックにマサがかけた名言。
盗みはチャーリー(自分を信じている友達)を汚すことだ。
君自身を汚し俺をも汚す。
みんなが汚れると思えばおいそれと悪事はできない。
これですよこれ。
誰にだって自分を信じてくれてる友達のひとりやふたりいるでしょう。
自分が信じている人だっているでしょう。
悪事を働くってのは彼らをすべて汚れさせてしまうってことでね?
自分がクリーンであれば世界中の人々がクリーンであることができる、くらいのスケールで物事を考えましょうや。
ねえ?
ええ言葉やと思いません?
もちろん友達だけやない!
そうやってお前が手に入れた汚い金で育った子供たちは汚れてしまうんじゃニック!
分かったか!
とりあえず道頓堀川にダイブして頭冷やして来い!
タイトル「ブラック・レイン」の意味は?
「ヤクザのお家騒動」と書きましたが、ニックとチャーリーとマサの活躍で事前に食い止めることができたから良かったものの、実は偽ドル札製造をめぐるこの一件はそんなに小さな問題ではなかったはずなのです。
「ブラック・レイン」だとピンとこないかも知れませんけど、「黒い雨」だとどうでしょう?
歴史で習いませんでした?
「黒い雨」
核兵器、原子炉事故等による核爆発で生じた放射性物質と、高熱で瞬時に燃焼した家屋、樹木の煤などが強い上昇気流に乗って高空に達し、発生した雨雲から雨となって落下したもの。煤が溶け込んで黒い。強い放射能をもつ。
[補説]広島では原爆爆発後20分くらいから黒い雨が降った。出典:デジタル大辞泉
作中では原爆ではなく単に「空襲のあとに降ってきた黒い雨」となっていますけどね。
そもそも偽ドル札を造ろうとした動機について、戦争体験者である菅井親分は戦後にどやどやとやってきて自分たちの価値観を押し付けたニックたちアメリカ人への復讐のためだと言っています。
偽ドルを大量に造ってアメリカ経済を大混乱に陥れようとしたんですかね?
適当なポジションの無難なポリスアクションかと思ったら、
最後に結構デカめの重っ苦しいテーマぶっこんでくるなあおい!
ちなみに重いテーマのとこ申し訳ございませんが、上の画像の菅井親分の後ろにいるのは“ホタテマン”安岡力也と吉本新喜劇の「パチパチパンチ」で有名な島木譲二です。
シリアスなクライマックスだってのにこれ完全にミスキャスト。
普通に俳優起用したらええやん。なんでホタテマンと島木譲二なん(ホタテマンは俳優か)。関西人は島木譲二が画面に映るたびに何度も吹き出しているはず。
そんで島木譲二自身もちょっと笑ろてもうてるし。
映画【ブラック・レイン】の感想一言
大阪の繁華街を暴走族まがいのヤクザ屋さんが走り抜けるような陳腐な描写があったかと思ったら、最後の最後で日本人の敗戦の恨みをかましてくるという、場面によってスケールの大きさがコロコロ変わる珍しい映画です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。