1977年/アメリカ/監督:デヴィッド・リンチ/出演:ジャック・ナンス、シャーロット・スチュアート、アレン・ジョゼフ、ジーン・ベイツ、ジュディス・アンナ・ロバーツ
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

夢って脈絡ないですよね?
“将来の夢”じゃなくて寝てる時に見る夢ね。信じられないようなイケメンと付き合ってる夢とか、大災害に巻き込まれて死んでしまう夢とか。大抵は朝起きて「なんであんな夢みたんやろう…」ってなりますやんか、良くも悪くも。
本日の映画はそんな、まるで夢でも見ているかのような作品。
しかも良い夢じゃなくて悪い夢。
早く覚めたい。
早く起きたい。
ナニあの人けのない荒廃した世界。
ナニあのコブのついた変な女の子。
ナニあの胴体包帯ぐるぐる巻きの奇形児。
ナニあの髪の毛逆立ってるキテレツ頭の主人公。
こわいよこわいよ。
ワケ分かんないよ。
【イレイザーヘッド】です。
参考 タイトルの「イレイザーヘッド」とは、鉛筆の頭に付いてる消しゴムのこと。
映画【イレイザーヘッド】のあらすじザックリ
デヴィッド・リンチによる意味の分からない映画
【エレファント・マン】、「ツイン・ピークス」、【マルホランド・ドライブ】を手掛けた“カルトの帝王”デヴィッド・リンチの長編デビュー作。
1980年/イギリス・アメリカ/監督:デヴィッド・リンチ/出演:アンソニー・ホプキンス、ジョン・ハート、ジョン・ギールグッド、アン・バンクロフト、フレディ・ジョーンズ、ウェンディ・ヒラー注※このサイトは映画のネタバレしようが[…]
断続的にではあるものの撮影と編集に5年以上もかけた大作(?)です。
【イレイザーヘッド】がデヴィッド・リンチの脳内を具現化したものだとしたらやっぱりこの人かなりイカれてる(←讃 えてる)。
映画は爆発頭の主人公ヘンリー・スペンサー(ジャック・ナンス)が宇宙的な空間を浮遊しているようなイメージから始まります。
ふわ~。

ふわ~。

ふわ~。

てちょっと待って?
ソレなに?!

梅干しの種?

驚くべきことにこの梅干しの種の中には人がいます。

ついでに言っておくとヘンリーの部屋のラジエーターの中にも人がいます。

誰かって?
知りません。
とにかく梅干しの種の中の人が何やらレバーを引くとギリギリと音がしてヘンリーが口から吐き出した胎児のようなへその緒のような物体が水たまりに落ちたあと、真っ白な光の中へ吸い込まれてゆきます。
ここで映像は現実(?)に切り替わります。

現実のはずだけどまだ夢の中のような頼りなげな風景をフラフラと歩くヘンリー。たどり着いた先はボロくて陰気臭いアパートの自室。鍵を開けようとしていると隣室のお色気おネエちゃんがムラムラと話しかけてきます。

あなたヘンリー…?
お友達のメアリーちゃんから「夕食に来てね」って伝言預かってるわよ…。
メアリーってのはどうやらヘンリーの恋人らしい。恋人から夕食に招かれた割には浮かない顔してメアリー宅へ向かうヘンリー。
メアリー宅ではヘンリーにとっての地獄が待っていました。

初対面なのになぜか超絶不機嫌なおかん。やたらにしゃべる空気を読めないおとん。生ける屍 状態のおばあ。
そいておかんから聞かされる衝撃の事実。

メアリーは出産したんや!
父親はあんたやろ!
さらにもういっちょ。

生まれた子供は未熟児や!
すぐに子供を病院から引き取って、メアリーと結婚しい!
ああもう何?!
ヘンリーの身にいったい何が起こってるの?!
意味不明な内容はともかく映像技術は凄い
公開当時(現在もか?)、多くの批評家が【イレイザーヘッド】には内包するテーマとストーリーがある、と主張したそうですが、テーマもストーリーもないんじゃない?と私は思っています。
実際デヴィッド・リンチだって【イレイザーヘッド】を「ダークで頭を悩ませる物事についての夢」と語っています。
ただの夢なんでしょうきっと。

いやいやそうは言ってない。
少なくともめちゃくちゃでは絶対ない。「夢みたいに」まとまってる。
ロバート・アルトマンの【ナッシュビル】の記事でも似たようなことを書きましたけど、テーマもストーリーも無い中から何かを生み出すって大変なんですよ。たぶん。
1975年/アメリカ/監督:ロバート・アルトマン/出演:ヘンリー・ギブソン、スコット・グレン、ジェラルディン・チャップリン、ジェフ・ゴールドブラム、グウェン・ウェルズ、ロニー・ブレイクリー、ティモシー・ブラウン、キース・キャラダイン[…]
あなたがもし映画監督だったとして、「テーマもストーリーも要らんからとにかく1本映画撮ってみろ」って言われて、【イレイザーヘッド】撮れます?

しかも【イレイザーヘッド】はテーマやストーリーこそ謎であるにせよ、映像技術は群を抜いています。
これを30代やそこらで撮ったとは、やっぱり鬼才と呼ばれる監督は凡人とは違うと言わざるを得ませんよね。
奇形児スパイク君はかわいいと言えなくもない
上の項では深く触れませんでしたが、ヘンリーとメアリーの愛の結晶・奇形児のスパイク君(※撮影現場でこう呼ばれていたそうです)は確かにグロテスクな姿かたちをしているものの、吐き戻したり(何を食わされてるのかはよく分からない)夜泣きしたりしてる様子は普通の赤ちゃんそのもの。
ヘンリーが傍から離れると恋しがってニャーニャー泣いたりして、かわいいと言えなくもないんです。
ただちょっと見た目に気持ち悪いだけ。

いいじゃんヘンリー、育てなよ。ちょっと抱っこでもしてあげたらいいのに。
ほらほら、よく見たらかわいいよ?


ギャーッ!気持ち悪ーっ!
(※病気になってブツブツできてる)
映画【イレイザーヘッド】の感想一言
聴覚的には不穏なノイズと無機質な機械音。
視覚的にはヘンリーを始めとする登場人物のどこか現実離れしたキャラクターデザインと荒廃した工業地帯の景観。
これらをもって、妊娠中の妻を支えてきたわけでも出産に立ち会ったわけでもない一人の男が突如として「父」となり、得体の知れない生き物を育てる孤独や恐怖を感じさせる映画です(あ、これがテーマか?)。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。