【ディア・ハンター】ロシアンルーレット

映画【ディア・ハンター】あらすじと感想。ロシアンルーレットと鹿狩り?

1978年/アメリカ/監督:マイケル・チミノ/出演:ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、ジョン・カザール、ジョン・サヴェージ、メリル・ストリープ、ジョージ・ズンザ、シャーリー・ストーラー、チャック・アスペグレン/第51回アカデミー作品・監督・助演男優・音響・編集賞受賞

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【ディア・ハンター】ロシアンルーレット
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

人それぞれ色んな映画の観方があると思います。

事前にその映画に関することを調べ倒し、原作も評論もパンフレットもばっちりチェックしてから鑑賞する人もいるだろうし、まったく何も知らない状態から観てみる人もいるでしょう。

 

私は「後者からの前者」派で、最初に観る時は(どうしても耳に入ってしまうもの以外は)余計な下知識を一切持たないようにしています。

そして鑑賞後、難解だった部分を色々調べて「ああ~!そういうことね!」ってなるのが快感でして、ええ。そのあとまた改めて観直したりするんです。

 

作品の内容をズバリ投影していることが多い「タイトル」も然り。

普段から故意に調べないようにしているため、本日の映画【ディア・ハンター】に関しても、最初に邦題を知った時はDear Hunter(親愛なる狩人へ)」って意味なんだと思ってました。

朱縫shuhou

ベトナム戦争の映画やろ?

人間を「狩る」から「狩人へ」なのかな?

ところがどっこい、つづりがちゃうやん!

 

×「Dear」 → ○「Deer(鹿)」でした!

 

【ディア・ハンター】です!

 

 

 

映画【ディア・ハンター】のあらすじザックリ

ペンシルベニア州クレアトン。製鉄所で働くマイケル、ニック、スティーブン、スタン、アクセル、ジョンは休日になれば全員で鹿狩りに赴くごく平凡な仲間たちである。そんな彼らにもベトナム戦争の影が迫っていた。マイケル、ニック、スティーブンは徴兵され、町ではスティーブンの結婚式も兼ねた壮行会が行われる。

 

 

ベトナム戦争と小さな町の6人の若者たち

【ディア・ハンター】はおおまかに3つの章で構成されていて、まずはペンシルベニア州の小さな町クレアトンでの平凡だけど賑やかな暮らしが映し出されます。

【ディア・ハンター】ロバート・デ・ニーロ
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

いつもつるんでるマイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーブン(ジョン・サヴェージ)、スタン(ジョン・カザール)、アクセル(チャック・アスペグレン)、ジョン(ジョージ・ズンザ)の6人。

今日も彼らはマイケルとニックとスティーブンの3人のベトナム出征壮行会を兼ねたスティーブンの結婚式でドゥ・ザ・ハッスル。

【ディア・ハンター】
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

驚くべきことにスティーブンの妻アンジェラは別の男との子供を妊娠中。それでも愛し合っていると主張する新郎新婦は誓いのさかずきを交わします。

「これをこぼさなければ2人は永遠に幸せになれます!」

司会者が盛り上げる中、2人の未来を暗示するように新婦の純白のドレスに滴り落ちる赤いワインが不気味です。

 

町じゅうの老若男女が集まりバンド演奏でダンスに興じて盛り上がり、酔いつぶれて眠ってる爺さんもいれば調子に乗ってカワイ子ちゃんのケツを触る司会者も出てくる。

なんとも平和な日常の風景ですよ。この結婚式の場面は小一時間ばかりも続きます。

【ディア・ハンター】クリストファー・ウォーケンとメリル・ストリープ
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

 

結婚式の翌日には鹿狩りへ

結婚式&壮行会の翌日、新婚のスティーブンを除いた5人はいつものようにマイケルのキャデラックで鹿狩りへ。

山へ向かう道中、車を停めて用を足したあと、最後になったアクセルを残してマイケルが車を発進させ、みんなでおちょくる場面がすんごい楽しそう。

車内の様子は映らないけどきっと大爆笑のはず。

「お前ら鬼かーっ!」って追いかけるアクセルも、数m先まで行って戻ってくるマイケルたちも、戻ってきたと見せかけて「うっそぴょーん!」とカブせてくるボケも大好き。

仲間と無邪気にじゃれ合うこんな時間って、中年になると懐かしすぎて涙が出そうになるんですよね(遠い目)。

 

この時の鹿狩りではマイケルが見事に大物を仕留め、5人はいちいちおおはしゃぎしながら町へ戻るのでした。

 

 

ベトナム戦争へ赴く3人の若者たち

長い日常の描写のあと、唐突に舞台はベトナムへ。

【ディア・ハンター】ベトナム戦争
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

【ディア・ハンター】は紛れもなく「戦争」がテーマの映画であるものの、直接的な戦闘シーンはほぼありません。いきなり舞台がベトナム戦争真っ只中の最前線に移ったかと思ったら、気が付くと3人は捕虜として拘束されています。

 

この基地のベトナム兵が捕虜を使って楽しんでいたのがロシアンルーレット。もちろん実弾装填済み。

向かい合わせに座らせた2人の捕虜のどちらかに金を賭け、平然と「当たる」まで引き金を引かせ続けるベトナム兵。

床下に拘束されているマイケル達は床板の隙間からその様子を見て銃声を聞くたびに震え上がる。スティーブンにいたっては正気を保つのがやっとなほどに。

【ディア・ハンター】ロシアンルーレット
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

極度の怖がりの私にとってもこの場面は直視不可能案件のひとつです。

ただでさえベトナム戦争を扱った映画は苦手だってのに…戦闘シーンがなくてもこんなにむごいだなんて聞いてねえよ。「早く引き金引けやコンニャロー!」とバシバシビンタしてくるベトナム兵にはマイケルならずとも「mother○ucker!」って叫びたくなる。

 

絶体絶命の状況の中、マイケルが命がけで利かせた機転によって彼らはこの危機を脱します。

【ディア・ハンター】ロシアンルーレット
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

それにしても瞬く間にその場にいたベトナム兵を全員抹殺するだなんて、爽快ではあるけどよもやあの人非人 にんぴにんどもを一瞬で楽にさせてくれようとは…。もっと苦しませてやれば良かったのに。

こっちも体を張ったゲームで楽しませてもらおうじゃないの。鼻フックとかケツバットとかどないや。

 

 

「ロシアンルーレット」と「Deer hunting(鹿狩り)」

2年の兵役を終えクレイトンの町に戻ったマイケル。歓迎する懐かしい仲間たち。しかしマイケルは昔のままの彼らのノリについていけず、次第にふさぎ込んでいきます。

【ディア・ハンター】ロバート・デ・ニーロとジョン・カザール
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

共にベトナムへ赴いたニックとスティーブンも心と体に癒えない傷を負ったまま。

 

何とか気を取り直して仲間と鹿狩りに出かけるマイケルでしたが、今や彼は目の前にいる鹿を「撃てなく」なっていました。

【ディア・ハンター】鹿狩り
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

マイケル達は食用の鹿を獲っているわけではありません。「狩猟」を楽しんでいるだけです。

「鹿狩り」と「ロシアンルーレット」。

どちらも命をもてあそぶ行為であって、出征前には「鹿みたいなもんは一発で仕留めることに意味があるんや、はっはあ~!」と笑っていたマイケルは、ベトナム戦争の経験からそのたった「一発」の弾丸の威力を思い知り、以前のように鹿狩りを楽しむことができなくなっていました。

 

キャデラックで冗談を言い合い無邪気にじゃれあってた若者たちの平凡な日々はもう戻ってきません。

【ディア・ハンター】ロバート・デ・ニーロ
©The Deer Hunter/ディア・ハンターより引用

マイケルは無事に戻り人々はなんら変わっていないと言うのに、前半の印象と余りに違う町の雰囲気に心が痛む。ストレートな戦闘シーンなんてなくても、こんなにも戦争を嫌悪できる名作です。

 

 

映画【ディア・ハンター】の感想一言

朱縫shuhou

実際に戦地でロシアンルーレットが行われていたという事実はありません。ベトナム兵の描き方がかなり極端に歪められているという指摘もあります。

でもこれまで暗黙の掟として描かれて来なかった「呪われたベトナム戦争」を堂々と題材に取り上げたことにより(また本作がオスカーを受賞したこともあり)、【ディア・ハンター】以降ベトナム戦争を扱った映画は確実に増えました。

ベトナム戦争と向き合う機会を与えたという意味でも大きな功績を遺した映画なんですね。

 

 

>> 翌年(第52回)のアカデミー最優秀作品賞はこれ!

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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