1975年/アメリカ/監督:ロバート・アルトマン/出演:ヘンリー・ギブソン、スコット・グレン、ジェラルディン・チャップリン、ジェフ・ゴールドブラム、グウェン・ウェルズ、ロニー・ブレイクリー、ティモシー・ブラウン、キース・キャラダイン、マイケル・マーフィ、シェリー・デュヴァル、ネッド・ビーティ、リリー・トムソン/第48回アカデミー歌曲賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

1970年の映画【M★A★S★H マッシュ】で戦争の愚かさを笑いに変え、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞(アカデミー作品賞にもノミネート)した“反ハリウッドの巨匠”ロバート・アルトマン監督による地味で奇怪な群像劇。
1970年/アメリカ/監督:ロバート・アルトマン/出演:ドナルド・サザーランド、トム・スケリット、エリオット・グールド、ロバート・デュヴァル、サリー・ケラーマン、ルネ・オーベルジョノワ、ロジャー・ボーエン、ジョー・アン・フラッグ、G[…]
数あるロバート・アルトマン作品の中でも最高傑作との呼び声高い名作。
でも大衆受けするかと聞かれれば、彼が手掛けた他の多くの映画と同じく「なんとも言えません」と答えざるを得ませんね。試しにご覧になってみて「あ、これあかん」と思ったら素直に彼の作品(他のも全部)を観るのは止めた方が良いんじゃないかな。
私ですか?
ふふふ…上の文章をよくご覧になってくださいな。ちゃんと本日の映画を指して「名作」って書いてるでしょ?
大好きですよ【ナッシュビル】!
映画【ナッシュビル】のあらすじザックリ
「ハリウッドの異端者」ロバート・アルトマン
【ナッシュビル】にはなんと、総勢24名ものメインキャストがいらっしゃいます。アホでしょ?群像劇にもほどがあるやん。

そんなにたくさんメインキャストがいるなら中身もさぞかし重厚なことでしょうと思ったら大間違い、ストーリーゼロ。
かと言って大勢のキャストが全員で何かを訴えかけている訳でもない、テーマゼロ。
たまたまテネシー州にある音楽業界の中心都市ナッシュビルに集まった、ただそこら辺に転がってる有象無象の5日間を描いた映画です。
※アメリカ建国200周年で浮かれるアメリカ政府を皮肉っているなどの説もありますが、私は関係ないと思います。

いやあそれにしてもロバート・アルトマンって凄いと思いますよ正味。
普通ここまで「中身のない映画」撮れます?

いやいや、無理無理、逆逆。
試しに自分が小説家だとして考えてみてください。
あなたは新しい物語を生み出さなければなりません。となると、導入部か結末かクライマックスかは分かりませんけど、とりあえず大まかなストーリーライン、若しくは読み手や世間に訴えかけるテーマなどから考えませんか?
「南北戦争に翻弄されるアメリカ南部の女性の半生を描こう!」とか。
1939年/アメリカ/監督:ヴィクター・フレミング/出演:ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル、レスリー・ハワード、オリヴィア・デ・ハヴィランド、トーマス・ミッチェル、ハティ・マクダニエル/第12回アカデミー作品・監督・主演女優・[…]
「メガロドン級の巨大なサメが人を襲って海水浴場がパニックになるのってどうやろ?」とか。
1975年/アメリカ/監督:スティーブン・スピルバーグ/出演:ロイ・シャイダー、ロバート・ショウ、リチャード・ドレイファス、ロレイン・ゲイリー、マーレイ・ハミルトン/第48回アカデミー作曲・音響・編集賞受賞注※このサイトは映[…]
他にも「恋に破れたすべての人に届けたい」や「あっと驚く展開が待っている」など、ある程度の骨子を固めてから肉付けしていくでしょ?
反対に「なんのドラマ性もない日常を描く」って作業は、かなり厄介じゃないですか?それも群像劇でよ?

映画でもそれは一緒で、キャラクターばっかりアホほどいるのはいいけどそんなにいたところで一体何をどないしてひとつの作品にまとめ上げたらええねんってなりますやんか。
だって【ナッシュビル】を表にするとこんな感じになるんですよ?
普通の映画 | 【ナッシュビル】 | |
ストーリー | ○ | × |
テーマ | ○ | × |
事件 | ○ | × |
キャラクター | ○ | ◎ |
作品を構成する要素が「キャラクター」しかない。
「この表みたいな映画撮ってみて」って言われても絶対無理。
しかしこの難題を普通にやってのけるのが「ハリウッドの異端者」ロバート・アルトマン。いっぺん脳内がどうなってんのか覗いてみたい偉人のうちのひとりです。
メインキャストは24人!カメオ出演多数!
とにかく初見の時は登場人物を把握するだけでもひと苦労しますから、ここに画像付きでメインキャスト24人をご紹介しておきます。ロバート・アルトマン監督本人ほか、カメオ出演者についても(分かった人だけ)画像を貼っておきました。
【ナッシュビル】視聴の際の予習復習にご活用下さい。
メインキャスト24人一挙公開

①ヘヴン・ハミルトン(ヘンリー・ギブソン):カントリー歌手のおっさん。めっちゃちっさい。
②パール夫人(バーバラ・バクスレー):ヘヴンの嫁はん。政治の話は止まらない。












カメオ出演(分かった奴だけ)公開

ノーマンが運転するタクシーでヘヴン・ハミルトン主催のパーティにやってくるのは【M★A★S★H マッシュ】のエリオット・グールド。

グランド・オール・オープリーの打ち上げでヘヴン・ハミルトンやトリプレットらに挨拶に立ち寄るのは【ドクトル・ジバゴ】のジュリー・クリスティ。
1965年/アメリカ・イタリア/監督:デヴィッド・リーン/出演:オマー・シャリフ、ジュリー・クリスティー、ジェラルディン・チャップリン、アレック・ギネス、ロッド・スタイガー、トム・コートネイ、ショブハン・マッケンナ、ラルフ・リチャー[…]

冒頭、スタジオ録音中のヘヴンにコテンパンにこき下ろされるスタジオ・ミュージシャンのフロッグは、映画音楽作曲家のリチャード・バスキン。

フロッグと同様に、ロバート・アルトマン監督本人も冒頭のヘヴンのスタジオ収録場面に映り込んでいらっしゃいます。
ヘヴンから「ボブ」と呼びかけられるプロデューサーの男がそうです。声は聞こえるけど全然顔は見えません。
キース・キャラダインの「アイム・イージー」
【ナッシュビル】は音楽の聖地ナッシュビルが舞台なだけあって、作中多くの曲が流れます。そのうちキース・キャラダイン扮するトムが歌う「アイム・イージー」という曲がアカデミー歌曲賞を受賞。この曲は「AFIアメリカ映画主題歌ベスト100」の81位にもランクインしています。
参考 AFI=アメリカン・フィルム・インスティチュート。1967年に設立されたアメリカ合衆国において「映画芸術の遺産を保護し前進させること」を目的とする機関。
おはこんばんちは、朱縫shuhouです。 アメリカの映画団体AFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)が1998年から(ほぼ)1年毎に発表し始めた「アメリカ映画100年シリーズ」。ライン[…]
さてではここで、「アイム・イージー」の歌詞の一部をご覧ください。
人目をはばからず君を愛したい
不安になっても手を握ったりしない
自分の内面をさらけ出しはしない
君は僕のものじゃないから
僕の想いに応える気がないなら気をひくそぶりはやめてくれ
ゲームに興味はないし苦手なんだ
自分で言うほど君は自由じゃない
でも君に任せて僕は従おう
まるで当然のようにゲームにも乗る
君に任せたいから
出典:【ナッシュビル】字幕
ミュージシャンって卑怯だよね。こんな歌をステージの上から自分だけを見つめながら歌ってくれたらどんな女もイチコロですやんか。トムの甘いマスクで歌われた日にゃあ尚更ですよ。

この歌は最近作った。
今夜来ている“ある人”に捧げよう。

ところがトムは「アイム・イージー」の歌詞にあるような一途で繊細な心とは無縁の男。ただのヤリ○ン。「繊細」ではあるのかも知れないけど「一途」では絶対ない。
その証拠にライブハウスでこの曲を歌った時、観客席に少なくとも3人は彼と寝た女性がいらっしゃる(この直後に寝ることになる奴も含めて)。
トムが切なげに「アイム・イージー」を歌い始めた時、そいつら全員が「…もう。トムったら…」って表情をしているのが死ぬほど面白い。

お前やない。

お前やない。

お前でもない。

言うとくけど絶対お前ではないからな。
誰とも受け取れる誰でもない「君」 への塩梅が抜群。ミュージシャンはこうでなくっちゃ(偏見)。
ちなみにこのシーンもただ面白いだけであって特に意味があるワケではありません。
映画【ナッシュビル】の感想一言
メインキャスト24人のエピソードを繋ぐ次期大統領候補ビル・ウォーカーの街宣車演説がとにかく耳障り。一応ビル・ウォーカーの選挙活動は物語の縦軸になっているはずなんですけどそんなことは知ったこっちゃない。
ただただウザい。
あそうか、こんな風に“街宣車が街を隅々まで走り回ったところで市井の人々にとっては「やかましい放送」くらいにしか捉えられてないよ”って皮肉が込められてるのかな。
…いやちゃうな。
たぶんやかましい街宣車にも特に意味はないんやろな。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。