1974年/アメリカ/監督:フランシス・フォード・コッポラ/出演:ジーン・ハックマン、ジョン・カザール、アレン・ガーフィールド、シンディ・ウィリアムズ、ハリソン・フォード、テリー・ガー、ロバート・デュヴァル
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
自分の仕事で誰かが傷つくとしたらどうしますか?
一生懸命仕事をすればするほどどこかの誰かの身に危険が迫っているかも知れないと。ね?
「かも知れない」。
ミソはここ、「かも知れない」。
誰かに危険を及ぼすことが確実ならその仕事から手を引けば済むことじゃないですか。でもそれがどっちか分からない。
誰かに危険が迫っているかも知れない し、誰にも危険なんて迫ってないのかも知れない 。何やったらそれとは全然関係ない奴が危険な目に遭ってるかも知れない 。
ねえ、どないします?
どないしよかな。
監督はフランシス・フォード・コッポラ。
同監督の代表作【ゴッドファーザー(1972年)】と【ゴッドファーザーPARTⅡ(1974年)】の間に公開されたため少々影は薄いものの自分自身の疑心暗鬼に追い詰められていく主人公の心理を巧みに描いたサスペンスの秀作、【カンバセーション…盗聴…】です。
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1974年/アメリカ/監督:フランシス・フォード・コッポラ/出演:アル・パチーノ、ロバート・デュヴァル、ダイアン・キートン、ロバート・デ・ニーロ、タリア・シャイア、ジョン・カザール、リー・ストラスバーグ、マイケル・V・ガッツォ、G・[…]
映画【カンバセーション…盗聴…】のあらすじザックリ
盗聴のプロ、ハリー・コールの職人技
主人公ハリー・コール(ジーン・ハックマン)の職業は“盗聴屋”。
「録音保安技術者」なんて正式名称(?)で呼ばれたりもするんですけどね、とどのつまりは“盗聴屋”。それもかなりの凄腕で、その道で彼の名を知らぬ者はいないほどの「盗聴屋界の第一人者」。
興信所の類 がクライアントとの仲介に入ることくらいはあるのかも知れないけれど、ハリー自身は探偵でも刑事でもないから尾行や張り込みはせず、彼の仕事は飽くまで「盗聴」。様々な録音・集音・再生機器を駆使して遠く離れたターゲットの会話 を盗んでしまうわけです。
この日のターゲットは人混みで賑わう昼下がりの公園を散歩する男女2人。
相棒のスタン(ジョン・カザール)と共に公園の脇に停めたバンから状況を見守るハリー。
困ったわあ、クリスマスプレゼントどないしよ。
主人は何でも持っとるし…。
そんなもん要らんやろ。
俺からのプレゼントはまだ内緒。
ただの浮気調査で終われば良かったのにねえ。
なまじっかハリーに「長年の職人の勘」が備わっていたためただの浮気調査があらぬ方向へ流されてしまうところに【カンバセーション…盗聴…】の空恐ろしさがあるのです。
少しずつ精神崩壊していくハリー
盗聴したテープを繋げる際、ハリーは男女の会話の中に不穏な言葉が混じっているのを聞き取ってしまいます。
これを聞いた瞬間、ハリーは作業の手を止める。
そして一気にぐらつき始めるハリーの情緒。
というのもハリーはかつて自分の盗聴によってターゲットを殺してしまった過去を持つから。
もちろんハリーが直接手を下したわけじゃなく、ハリーの盗聴テープを聞いて何らかの秘密を知り得たクライアントが、ターゲットとその家族全員を惨殺したってこと。
その事実を知った時のショックも癒えないまま、またしても穏やかでない会話を手に入れてしまったハリーは動揺を隠せない。誰が誰を殺すのかなんて知る由もないくせに、勝手に妄想が膨らんでいく。
数日後、盗聴機器の展示会へ出向いたハリーは展示会後のパーティで、同業者に自分の会話を盗聴されてしまいます。
同業者は自社製品のデモンストレーションの意味を込めてシャレでやってみせただけ。
でも著名な“盗聴屋”であるハリーが逆に「盗聴される」だなんて、恐らくこれが初めて。
そもそも生来の性格なのか職業柄なのか、ハリーはパートナーのスタンや恋人らしき女性にすら心を開かない(電話番号も教えない)完全秘密主義者で、アパートの大家が自室のスペアキーを持っていることも許せない偏屈者。ちょっと強迫性障害入ってる。
仲間と酒をあおって気を抜いていた時とは云え「盗聴される恐怖」を身を持って知り、さらに公園の男女のあの会話を何度も繰り返し再生し続けたことも手伝って、ハリーの精神は少しずつ崩壊して行きます。
一方でハリーの情緒がおかしくなってゆく過程を客観的に見つめる視聴者は、今スクリーンに映し出されているのが現実なのかハリーの妄想なのか判然としないフワフワした恐怖に引きずり込まれて行くんです。
「深入りするな」ラストの電話はかかってきたの?
ラストについてネタバレせずに言及することは難しいので気にせず書きます。
【カンバセーション…盗聴…】の結末は考えれば考えるほどめちゃくちゃ怖いです。
公園を散歩していた男女の盗聴を依頼したのは男の勤務先の重役のおっさん(ロバート・デュヴァル)で、かつ女の夫。「妻が社内の誰かと浮気しているらしい」と疑う重役は秘書(ハリソン・フォード)を介してハリーに、予想通りの浮気調査をさせていたんですね。
ハリーが渡した盗聴テープで浮気相手も判明したことだし、あとはそっちでかたを付けてねって思った矢先、重役のおっさんが交通事故で死亡。
またしても自分が“盗聴屋”として関わった人物の死を目の当たりにしてしまったハリーの妄想は留まるところを知りません。
「交通事故」や言うてんのに。
…いや待って?
もしかしたら「会社重役、交通事故で死亡」って載ってた新聞の方が妄想で、ジャック・ター・ホテルの773号室で起こった悲劇が現実なの?
じゃあ秘書らしき男からかかってきた「深入りすんなよ」って忠告の電話も現実?
嘘でしょだってハリーの部屋に盗聴器はなかったやん。
剥がせるところはすべて剥がし盗聴器どころか猫の子1匹隠れる隙のなくなった自室でようやく一息ついてサキソフォンを奏で始めるハリーを映すのは、映画用のキャメラなのかハリーを見張る盗撮用のキャメラなのか。
ヤバイよ怖い。
「妄想と現実の区別がつかなくなる」ってシャレにならないくらい怖い。
映画【カンバセーション…盗聴…】の感想一言
ジワジワジワジワ狂人じみていくジーン・ハックマンの演技が真に迫りすぎて鳥肌もの。
本当にイカれてしまう寸前の人間って叫ぶでも暴れるでもなく一見こんな風に平静であるものなのでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。