1979年/アメリカ/監督:フランシス・フォード・コッポラ/出演:マーロン・ブランド、ロバート・デュヴァル、マーティン・シーン、フレデリック・フォレスト、サム・ボトムズ、ローレンス・フィッシュバーン、ハリソン・フォード、デニス・ホッパー/第52回アカデミー録音・撮影賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
何度観たって意味が分からない。
そりゃそうですよね、ベトナム戦争末期なんてもう、前線の軍人だって一体なんのために、誰を相手に戦っているのか、正義だか悪だか何が何だか分からなくなっていたことでしょう。
その混沌を巧みに表現した映画だと思ってますけども。
ただただ、観ているとだんだん意識が遠のいて行く感じだけはあります。
焦点が定まらず、放心してくると言いますか…。
カンボジアにカーツ大佐(マーロン・ブランド)が築いた王国にたどり着く頃には、あれほど無惨に死体がゴロゴロ転がる異常な景色であるにもかかわらず、息を呑むでもなく、目を覆うでもなく、頭の中に霞みがかかったような夢見心地で、ぼんやりと鑑賞している自分に気が付きます。
これが実戦のさなかだったら真っ先に殺られてんなあ…、私…(ぽわ~ん)。
フランシス・フォード・コッポラ監督によるベトナム戦争を描いた名画、【地獄の黙示録】です。
映画【地獄の黙示録】のあらすじザックリ
輝かしい経歴!ミラクル軍人カーツ大佐抹殺命令
まるで“戦争”にとり憑かれているかのような(少なくとも私にはそう見える)アメリカ陸軍のウィラード大尉(マーティン・シーン)は、上層部から極秘の指令を受けます。
指令の内容は、これまでエリート街道まっしぐらだった元特殊部隊隊長のカーツ大佐(マーロン・ブランド)を探して抹殺せよというもの。
カーツ大佐はある時突然命令を無視して失踪、カンボジアのジャングルの中で現地の兵士を組織して自らの王国を築いていると言います。
軍の命令は無視するし、おかしなことを唱えている音声も録音されているし、まあカーツ大佐が上層部曰く“不健全”になってしまったことは分かるけど、それにしても「暗殺せよ」とまで言われるなんて、一体どういうことなのよ。
軍の口実としては「独断でベトナム人スパイを4人処刑した」から。
「4人」?!
この泥沼のベトナム戦争中に、たったの「4人」処刑したから暗殺される?!
ウィラードでさえ「俺は6人は確実に殺した」って言ってるってのに。
どうこじつけてでもカーツ大佐を抹殺せねば、という軍上層部の焦りが見て取れます。
本編には直接関係ない話3つ
①主演俳優マーティン・シーンは3番目
ところで、いつもこの映画酷いと思うんですけど、主役は明らかにウィラードであるはずなのに、クレジットのトップに出てくるのは終盤のほんの数分しか出てこないマーロン・ブランドなんですよね。
そればかりか、大スターであるマーロン・ブランドを別格として差し引いても、彼の次にはビル・キルゴア中佐を演じたロバート・デュヴァルが来てます。超メインキャストのマーティン・シーンは三番目。
ロバート・デュヴァルも当時からかなりのスター俳優ではあったけどもよ。俳優のネームバリューうんぬんってか、役柄の重要度が違うでしょうよ重要度が。
キルゴア中佐ナパーム発射命令出しただけやん。
クレジットの順番ってのは色んな大人の事情があるんでしょうね。
②無名時代のハリソン・フォードとローレンス・フィッシュバーン
マーロン・ブランドとロバート・デュヴァル以外にも、【地獄の黙示録】には無名時代の大物俳優が二人出演しています。
「スター・ウォーズシリーズ」のハン・ソロ船長役で一躍スターダムにのし上がったハリソン・フォードと、
「マトリックスシリーズ」で主人公ネオ(キアヌ・リーヴス)の師とも言える屈強な戦士モーフィアスを演じたローレンス・フィッシュバーンです。(クレジットでは“ラリー・フィッシュバーン”と記載されてる)
【スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望(1977)】は【地獄の黙示録(1979)】よりも前に公開されているので、すでに【地獄の黙示録】の公開時ハリソン・フォードは大スターでしたが、【地獄の黙示録】は常識はずれの撮影期間を要したことでも有名(1976年から1977年まで撮影。その後編集だけで2年かかってる)で、映画に起用された頃はまだまだ駆け出しのヒヨッコ。
青春時代の古いアルバム見てるみたいで楽しい。
ローレンス・フィッシュバーンなんてプレイメイト相手に戦場で筆おろしする童貞やからね。
1977年/アメリカ/監督:ジョージ・ルーカス/出演:マーク・ハミル、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、デヴィッド・プラウズ、アレック・ギネス、アンソニー・ダニエルズ、ケニー・ベイカー、ピーター・メイヒュー/第50回アカデ[…]
1999年/アメリカ/監督:ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー/出演:キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィービング、ジョー・パントリアーノ、マーカス・チョン、グロリア[…]
さらにどうでもいいことには、ハリソン・フォード扮するルーカス大佐が操作する陸軍のテープレコーダーはSONY製。
洋画で日本製のもの見つけるとなんとなく嬉しくなりません?
③カーツ大佐にはモデルがいた?
カーツ大佐のモデルはCIA工作員のトニー・ポー(本名アンソニー・アレクサンダー・ポシュニー)という人物だと言われています。
しかしこの説はフランシス・フォード・コッポラ監督自身が否定しています。
否定してはいるんですけど…。
CIAではポシュニーの準軍事組織を組織する能力を評価し、1959年に諜報星章を授与した。その2年後の1961年、ポシュニーはJ・ヴィントン・ローレンスと共にラオスに送られ、北ベトナム及びパテート・ラーオに対抗するべくモン族民兵の編成及び訓練を命じられた。モイ族は当時のアメリカ政府基準にて「野蛮」とされていたが、ポシュニーは訓練を通じて彼らから敬意を払われるようになる。彼はモイ族民兵らに対して、敵兵の耳を持ち帰れば賞金を払うと持ちかけ敵兵の耳を集め、ボディカウントの為だとして耳を詰めた袋をビエンチャンの米大使館へ送りつけた事もある。さらに心理戦の一環として、敵地に生首を投下した事も2度あった。
-中略-
その後の数年を通じて、彼はアメリカ政府の戦争のやり方に幻滅を覚えるようになる。
出典:weblio辞書「トニー・ポーの概要」
いやあ~…。
とぼけんな、絶対モデルにしとるやろ。
ベトナム戦争末期の狂気はもう見てられない
ウィラードは、海軍の哨戒艇に乗せてもらって、カンボジア目指してヌン川を進みます。
そしてその道中に泥沼状態のベトナム戦争末期の狂気がじゃんじゃんばりばり景気良く映し出される。
「嘘やろ?」って思う描写もたくさんあるけど(堅気っぽいベトナム人女性が普通に手榴弾持ってヘリコプターを破壊しようとする、アメリカ軍が楽しそうにベトナムの村を焼き払う、など)、他のベトナム戦争映画を観ても似たような描写があるのできっとフィクションではなくて、史実に基づいているんでしょう。
あかんわあ~私、ベトナム戦争。
怖いわあ~。
キルゴア中佐よ、サーフィンはアメリカでやりなはれや
まずウィラードの一行が出会うのがビル・キルゴア中佐率いる第一騎兵師団。
「騎兵」ってくらいなんで、攻撃するとき西部劇の騎兵隊みたいなラッパを鳴らすんですよね。
これがまたカッコいいんですよ。
「ベトナム戦争怖いんですう~」とかカマトトぶっといて恐縮ですけど、あのラッパはあかんやんか。絶対カッコええもん。
でもサーフィン好きのキルゴア中佐が、「ええ波が来てる」って理由だけで海岸近くのベトコン基地を奇襲し、ナパームで林を焼き払った瞬間にふと我に返ります。
おいランス!見てみろあの波!
あれ乗れるか?!
アホか!
サーフィンしたさに奇襲かけてどないすんねん!
何にもカッコええことないわアンポンタン!
プレイメイトの慰安ステージで興奮してる場合かいな
次にウィラードたちを待っていたのは、プレイメイトのお姉ちゃんたちによる特設慰安ステージ。
要するに「戦場の兵士のみなさん、わが国のためにありがとう!今日は楽しんでね!」ってことで、本国から本物のプレイメイトが派遣されてるワケです。
たまにはこうやってきれいなお姉ちゃんでも見せてもらわないと、戦場の兵士たちもやってられへんわな…。
でもこの場面でもハッとする瞬間があります。
このステージのあとのウィラードのモノローグ。
これね。
アメリカ軍とベトコンの、「ここは戦場で、何かのために戦っている」という意識の高低差ね。
プレイメイトの慰安ステージに熱狂する兵士たちを見て「可哀想に、そりゃやってられへんわな…」とか思ってる私も、結局は平和ボケした意識の低い人間ですわ。
この独白と、あとに出てくるカーツ大佐の小児麻痺の予防接種の話は要するに同じことを言っているような気がします。
カーツ大佐も、そして心の底ではウィラードも、ベトコンの崇高な戦いの精神を讃え、彼らには到底敵うはずがないことを理解してしまっているんではないでしょうか。
「指揮官誰や!」「俺じゃあ~!」嘘つけ!
プレイメイトに別れを告げて、船を進めるウィラード一行。
すると泥沼のベトナム戦争末期にあって、流行の最先端と言いますか、泥沼中の泥沼の戦闘を繰り広げている一団に出会います。泥沼の帝王。キング・オブ・泥沼。泥沼マスター。
「誰か」を攻撃しているらしい兵士がたくさんいますけど、誰に聞いても指揮官が分からない。
ってことは、目標物も任務の内容も引き際も分からない。
ただ永遠に「何か」を攻撃している。
首をもがれたトカゲ状態。
これはマズいな、キルゴア中佐呼んでこようか?
あの人暇そうやし。
カーツ大佐は何をどうしたかったのか
ウィラードたちがヌン川を遡上していく過程で映し出される悲惨なベトナム戦争の実態までは、「王道のベトナム映画」って感じ。
カンボジアに入り、いよいよカーツ大佐の王国に近づくにつれて、なぜか崇高で荘厳な雰囲気が漂ってきます。
吊り下げられてる血だらけの死体も、無造作に並べられてる生首も、カーツ大佐の生み出した芸術作品みたい。
この芸術作品の山に囲まれて、カーツ大佐は一体何を考え、何をしようとしてたんでしょうか。
ウィラードに本とか新聞とか読み聞かせながらぶつくさ言ってますけど、皆目分からないんですよ。
こんな崇高な精神を説かれたところで、私だって軍上層部の面々みたいに「あいつはもうイカれてしもうた。殺っちまえ」ってなると思う。
あかんがな。
「出ていけ!」って言われて出て行ったらしい報道カメラマン
カーツ大佐の王国には、この場所にはそぐわないアメリカ人報道カメラマンが約1名紛れ込んでいらっしゃいます。
「カーツ大佐の写真撮ったら殺されそうになったわあ~参った参った」とか言ってるんで、恐らく軍上層部にコソコソ写真送ったり情報流したりしてるのはコイツ。
大袈裟なまでにカーツ大佐を心酔している感じで、俺はカーツ大佐の壮大な思想を何もかも理解してるぜ!と言わんばかりにウィラードに自慢(?)していましたが、カーツ大佐自身に「やかましい!出て行けこの野良犬!」とカチコン言わされ尻尾巻いて立ち去ります。
そしてそのまま最後まで出てこない…。
あれ?
意外とビビってホンマに王国を出て行ったんかな?
そらこんな役デニス・ホッパーしかでけへんわ(なんとなく)。
映画【地獄の黙示録】の感想一言
導入部からずっとウィラードの独白で語られていた物語は、亡きカーツ大佐の独白で終わります。
これが一体何を意味しているのやら…。
カーツ大佐の思想が頭から離れなくなってしまったウィラードの今後はどうなるんでしょうね?
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。