1948年/アメリカ/監督:ジョン・ヒューストン/出演:ハンフリー・ボガート、ウォルター・ヒューストン、ティム・ホルト、ブルース・ベネット、バートン・マクレーン、ジョン・ヒューストン/第21回アカデミー監督・助演男優・脚色賞受賞
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アメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)の「映画スターベスト100」の男性俳優部門で、堂々の1位に輝いたハンフリー・ボガート。
本作はそんな彼の最高傑作だと私は思います。
かの有名な【カサブランカ】のリックより、アカデミー主演男優賞を獲得した【アフリカの女王】のチャーリーより、【黄金(1948)】でドブズを演じた時のハンフリー・ボガートの方が断然輝いている。
1942年/アメリカ/監督:マイケル・カーティス/出演:ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、ポール・ヘンリード、クロード・レインズ、コンラート・ファイト/第16回アカデミー作品・監督・脚色賞受賞注※このサイトは映[…]
1951年/アメリカ・イギリス/監督:ジョン・ヒューストン/出演:ハンフリー・ボガート、キャサリン・ヘプバーン、ロバート・モーレイ、ピーター・ブル、セオドア・ビケル、ウォルター・ゴテル/第24回アカデミー主演男優賞受賞注※こ[…]
黄金を目の前にした人間の心の変化をあさましく醜悪に描きつつも、最後には実に清々しく澄み渡った気分にしてくれる名画です。
ジョン・ヒューストンが監督(カメオ出演もしてる)、彼の父親ウォルター・ヒューストンが物語のキーマン的老人ハワードとして出演し、親子そろってオスカー獲ってます。
映画【黄金(1948)】のあらすじザックリ
乞食のようにメキシコをさまようアメリカ人
金も仕事もなく、メキシコの港町タンピコをさまようきったないアメリカ人ドブズ(ハンフリー・ボガート)。
時は1925年。
メキシコ革命(1910年~1917年)から10年も経っておらず、未だに山賊やそれに対抗する軍隊なんかが横行してて、なんだか殺伐とした雰囲気が漂う舞台背景です。
「恵んでくだせえヒューストン様」
ふらふらと町を歩くドブズは、同じアメリカ人であるらしい白いスーツの紳士に擦りよります。
旦那!
旦那!
同郷のよしみで小銭恵んでくだせえ~…。
ドブズが1日に3度も物乞いするこの紳士こそ、監督のジョン・ヒューストン。
ドブズは1度目に恵んでもらった金で酒とタバコとクジを買い、2度目に恵んでもらった金で散髪をし、3度目に恵んでもらった金で女を買おうとします。
最初にもらった金で飲食しているドブズにクジを押し売りする子供は【冷血(1967)】のロバート・ブレイクです。
かわいい。それに演技も上手なんですよ。
1967年/アメリカ/監督:リチャード・ブルックス/出演:ロバート・ブレイク、スコット・ウィルソン、ジョン・フォーサイス、ポール・スチュワート、ジェフ・コーリー、ジェームズ・フラヴィン注※このサイトは映画のネタバレしようがし[…]
ドブズが散髪をしている場面の音声解説では、25歳も年下の妻ローレン・バコールとの子供を作るためのホルモン注射によって、この頃ハンフリー・ボガートの頭髪はほとんどなかったことが暴露されています。
【黄金】のために長さの違うヅラを3つも作ったんだってさ。
アホみたいに若い嫁もらうからそんな苦労せなあかんなるねん、もお~…。
ちなみにドブズが白いスーツの紳士に金を恵んでもらうのも3度なら、ドブズが金帽子(アルフォンソ・ベドヤ)率いる山賊に出会ってしまうのも3度なんですけど、この「3」という数字は何かを暗示しているのでしょうか?(読み取れなかった)
「金が絡むと人間は変わるのさ」
ドブズと同じくホームレス状態だったカーティン(ティム・ホルト)、それに黄金を探す夢を持つ山師の老人ハワード(ウォルター・ヒューストン)に出会ったドブズは、3人で一攫千金を夢見て金鉱を目指しシエラ・マドレ山脈を登ります。
どことなく仙人のように人智を超えた存在感を放つハワードは、出会った当初から若いドブズとカーティンに言ってきかせていました。
何人かで金鉱を探している間はまだええ。
問題は黄金が見つかってからや。
金が絡むとどんな人間でも変わってしまうんや。
この段階ではまだ、ハワードに対して「何言ってるんやこのジジイ」と小馬鹿にした視線を送るだけのドブズとカーティン。
カーティンはともかく、このあと100%ハワードの言ったとおりに変貌していくドブズを絶対にお見逃しなく。
特に中盤から自分のことを「ドブズ様」とか言っちゃう辺りに彼の器の小ささが見て取れますから。
10ヶ月の苦労が徒労に終わる時
金鉱自体は意外とあっさり見つかります。
3人は10ヶ月の間掘って掘って掘りまくり、普通に生活してれば一生困らないであろう量の砂金を手に入れます。
ところがその砂金は、まあドブズのせいと言うか運命のいたずらと言うか、一瞬にして普通の砂に混じって消えてしまうんですよ。
事実を知って呆然とするカーティン。
この時代の貨幣価値がよく分からないので、じゃあ仮に「10億円」だとしましょうよ。
10ヶ月かけて稼いだ10億円が、空へと舞い上がって消えてしまったとしましょう。
あなたならどうしますか?
「拾い集める」とかはなし。
もう完全に「消えてる」と仮定して。
もとの職場に戻って同じように10ヶ月働いても、もう10億円も稼ぐことはできません(金鉱は枯れてる=仕事自体がない)。
めっちゃ泣く?
疲れるだけやで。
自殺する?
まあそれもええかも知らんけど。たったの10億円でホントに死ぬの?
正解は仙人ハワードが教えてくれます。
笑う。
神か自然が仕掛けた壮大な冗談やん!ユーモアあるでえ~!
それも腹がはち切れそうなくらいもうめっちゃ笑う。
やっぱり人間こうなったら笑うしかないんですね。
万国共通。
この大笑いのお陰でウォルター・ヒューストンはオスカー獲ったんちゃう?ってくらいこのシーンは最高です。
映画【黄金(1948)】の感想一言
山賊が軍隊にじゃんじゃん処刑されたり、ドブズたちと同じように一攫千金を狙って山に登ってくる果樹園主のコーディ(ブルース・ベネット)を3人で殺してしまおうとしたり、基本的には殺伐とした内容であるのに、鑑賞後の清々しさだけは青春ドラマのそれに匹敵するというこのギャップが大好きです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。