1942年/アメリカ/監督:ジョージ・スティーヴンス/出演:スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘップバーン、フェイ・ベインダー、レジナルド・オーウェン、マイナー・ワトソン、ウィリアム・ベンディックス/第15回アカデミー脚本賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
以前勤めてた会社に今まで見たことないくらい仕事ができる上司がいまして。
類人猿系の顔したちっさいおっさんなんですけど、指示は的確だし決裁も早いし小さなミスも見逃さなくてねえ。社長にもへつらわず部下にも偉そうにせず、相手が誰であろうと一貫して不愛想で寡黙。職場で仕事以外の余計なおしゃべりしてるとこなんて見たことありません。ただ淡々と完璧に仕事をこなすわけですよ。
一番すごいと思ったのが、社内の誰一人として彼のことを悪く言う者がいなかったこと。
誰一人としてですよ?
当時タバコを吸っていた私はタバコ部屋(喫煙所)に出入りしていました。タバコ部屋なんて普通は上長の愚痴のオンパレードですよ。女性はそうでもないけど男性社員なんて大抵「あのハゲ課長め」とか「無能のアホ部長が」とか言いながらタバコ部屋へ入ってきたものです。
そんな上長への悪口が許される無法地帯にあっても、先に述べた上司に対する悪口は一度も聞いたことがありませんでした。それどころか彼に関してだけは誰もが「尊敬するわ」「あの人にだけは一生勝たれへん」などと口にするんです。
…まあ当時から大方の予想はついていましたけどね。「多分この人って仕事しか できへんのやろな」って。
察しの良い方はもうお気付きかも知れませんね、件 の上司は今の私の夫です。
おーい。
今日の飯なにー?
どうしていきなりゴリラ(夫)の話しなんかし始めたかと言いますと、ゴリラの「仕事一筋で家事のひとつもようせえへんくせに周囲の人々の尊敬と称賛を集める男臭さ」がね、本日の映画【女性No.1】の時のスペンサー・トレイシーとかぶるんですよ。
ハリウッド随一の名優スペンサー・トレイシー捕まえてうちのゴリラ(夫)と似てるだなんて、おこがましいにも程があるのは百も承知。
でもみんな多少なりとも思ってるんじゃないの?
「うちの旦那福山雅治に似てるねん」とか。
「俺のカノジョってほぼ北川景子やん」とか。
それに比べたら“性質が似てるような気がして思い出される”くらい許されるよね。
映画【女性No.1】のあらすじザックリ
スペンサー・トレイシーとキャサリン・ヘップバーンが初共演
ハリウッドのベストカップルとして知られるスペンサー・トレイシーとキャサリン・ヘップバーンが初めて共演した映画。2人は実に9作もの映画で共演しています。
スペンサー・トレイシーとキャサリン・ヘップバーン共演映画一覧
- 1942年【女性No.1】←今日はここ。
- 1942年【火の女】
- 1945年【Without Love(原題)】
- 1947年【大草原】
- 1948年【愛の立候補宣言】
- 1949年【アダム氏とマダム】
- 1952年【パットとマイク】
- 1957年【デスク・セット】
- 1967年【招かれざる客】
ケイト(※キャサリン・ヘップバーンの愛称)はのちに、スペンス(※スペンサー・トレイシーの愛称)と出会った時の思い出をこんな風に語っています。
彼に「あなたと比べて私ちょっと背が高すぎるわね」と言ったら、「心配するな、すぐに僕に合うように小さくしてあげるよ」と言われたの。
ケイトは170cmを超える長身。一方のスペンスはせいぜい168cmくらい(「公称178cm」となっている資料も存在しますが絶対そんなに高くない)。
普通の男だったら自分より背の高い女優が相手役だなんて、ちょっと怖気づいてしまうところですよ。現にこれまでケイトはケーリー・グラント(187cm)やジェームズ・ステュアート(191cm)など、高身長の俳優とばかり共演していたんですから。
1938年/アメリカ/監督:ハワード・ホークス/出演:ケーリー・グラント、キャサリン・ヘプバーン、メイ・ロブソン、チャーリー・ラグルス注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご[…]
1940年/アメリカ/監督:ジョージ・キューカー/出演:ケーリー・グラント、キャサリン・ヘプバーン、ジェームズ・ステュアート、ルース・ハッセイ、ジョン・ハワード、ヴァージニア・ウェイダー/第13回アカデミー主演男優・脚色賞受賞[…]
あのハンフリー・ボガート(公称173cm…これも嘘っぽい)ですら映画撮影時にはシークレットシューズを履いて身長をごまかしていたと言うのに、スペンスは「自分が女優(=ケイト)に合わせる」のではなく「女優の方を自分に合わせさせる」とズバリ言ってのけたわけですね。
1951年/アメリカ・イギリス/監督:ジョン・ヒューストン/出演:ハンフリー・ボガート、キャサリン・ヘプバーン、ロバート・モーレイ、ピーター・ブル、セオドア・ビケル、ウォルター・ゴテル/第24回アカデミー主演男優賞受賞注※こ[…]
このスペンスの言動をどう受け取るかは人によって様々でしょうが、少なくともケイトと私は「なんて男らしいの!」と心奪われてしまったということです。
「年間No.1」の女性が結婚すると…?
そんな2人は映画【女性No.1】で、これが初共演とは思えない息の合った演技を見せてくれます。すでにこの頃から長年連れ添った夫婦みたい。
NYクロニクル紙の記者サム・クレイグ(スペンサー・トレイシー)は、同じ新聞社の別の部署に勤めるバリバリのキャリア・ウーマン、テス・ハーディング(キャサリン・ヘップバーン)を良く思っていませんでした。しかしいざ会ってみると知的で快活な彼女の魅力の虜に…。
その気持ちはテスとて同じで、2人はあっという間に恋に落ち、結婚。
ますます仕事に精を出すテスは「女性年間No.1 」の称号まで手にしてしまうのでした。
「働く女性」にはまだまだ不寛容
新婚初夜の「2人きりになりたいのに邪魔ばかり入っていたせない サムとテス」など、笑える場面盛り沢山のスクリューボール・コメディなのですが、ラストの描写だけはさすがに時代錯誤でいただけない。
参考 スクリューボール・コメディ=映画のジャンルの1つ。ストーリーの多くは常識外れで風変わりな男女が喧嘩をしながら恋に落ちる内容。
チャキチャキの江戸っ子みたいに活動的なテスは常に仕事に没頭していて、料理を始めとする家事の一切をやらないんですね?仕方がないからサムが慣れない手付きで卵を焼き、コーヒーを淹れる。ゆっくり2人で過ごす時間もない。
当然2人の距離はどんどん離れ、ついにサムは家を出て行ってしまいます。
テスのことを怒るでも無視するでもない「完全にキレたサム」が男らしくて死ぬほどカッコイイとこです、お見逃しなく。
そして問題のラスト。
サムに捨てられようやく自分の過ちに気付いたテスは、跪 いて「料理もします!仕事も辞めます!あなたに尽くします!」とサムに誓うんですよ。
とどのつまり「女性は結婚したら家庭に入るのがよろしい」とでも言いたいげなこの結末がね、1942年の映画だってことを差し引いてもちょっとモヤモヤするとこなんですけども。
映画【女性No.1】の感想一言
家事なんて夫婦のどっちか向いてる方がやったらええやんって思いますけど、サムとテスの場合どっちも向いてないからシャレになんないよね。
こうなったら2人で死ぬほど稼いで家政婦を常時雇用しておくしかないかな。
とりあえず「初夜」と「発酵するワッフル」はべらぼうに面白い!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。