1954年/アメリカ/監督:エリア・カザン/出演:マーロン・ブランド、エヴァ・マリー・セイント、カール・マルデン,リー・J・コッブ、パット・ヘニング、マーティン・バルサム、リーフ・エリクソン/第27回アカデミー作品・監督・主演男優・助演女優・脚本・撮影・美術監督・編集賞受賞
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マーロン・ブランドと言えば【ゴッド・ファーザー】のドン・ヴィトー・コルレオーネだと思ってませんか?
1972年/アメリカ/監督:フランシス・フォード・コッポラ/出演:マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーン、ロバート・デュバル、ジョン・カザール、タリア・シャイア、ダイアン・キートン、リチャード・カステラーノ、モーガナ[…]
1974年/アメリカ/監督:フランシス・フォード・コッポラ/出演:アル・パチーノ、ロバート・デュヴァル、ダイアン・キートン、ロバート・デ・ニーロ、タリア・シャイア、ジョン・カザール、リー・ストラスバーグ、マイケル・V・ガッツォ、G・[…]
まあそうでしょうけど。
ドン・コルレオーネが醸し出す圧倒的存在感を実は、マーロン・ブランドはまだまだ駆け出しのヒヨッコの頃から身に纏っています。
若きマーロン・ブランドはそれにプラス匂い立つような色気まで振りまいている。
マーロン・ブランド、もう無敵。
【波止場】です。
マーロン・ブランド主演映画【波止場】のあらすじ
ギャングが牛耳る波止場の現状
ジョニー(リー・J・コッブ)をボスとするギャングが牛耳る波止場で働く日雇い労働者達は、いかに不利な雇用条件であろうとジョニー達の報復を恐れて反抗することも裁判所で証言することもできずにいます。
世界タイトルに挑戦したこともある元プロボクサーのテリー(マーロン・ブランド)もこの波止場で働く労働者の1人。
でも組織の幹部チャーリー(ロッド・スタイガー)の弟であるテリーはジョニーから(今のところ)かわいがられていて、荷受け場でも楽な仕事を優遇されています。
ギャングを恐れて誰もが口をつぐむ
ある晩テリーは、友達のジョーイをビルの屋上へ呼び出します。ギャングに支配された波止場の現状について証言台で話そうとしていたジョーイを説得するためです。もちろん説得は自発的なものではなく組織からの命令。
証言を思いとどまるように説得するだけだと聞いていたテリーが呼び出す役目を終えて地上から様子を見守っていると、ビルの屋上から突き落とされたジョーイが目の前で死んでしまいます。
現場にいた幹部らに詰め寄るテリーでしたが後の祭り。
話し合ったけど、なんかもつれたんやろ。
お前も気いつけろよ、はは。
従わなければ殺される。
この波止場では黙ってジョニーに支配されるしかないのです。
立ち上がるのは兄を殺されたイディと勇気ある神父
突き落とされたジョーイに駆け寄ったのは、波止場で働くジョーイの父親と妹のイディ(エヴァ・マリー・セイント)、そして町の教会のバリー神父(カール・マルデン)。
父親が波止場で身を粉にして働き立派な教育を与えたお陰で真っ直ぐだけどなかなかの箱入り娘に育ったイディは、勇気ある兄が殺されたことにブチ切れ。無謀にもたった1人でギャングに立ち向かおうとします。
部外者であるにもかかわらずこの波止場の現状を嘆くバリー神父も、密かに集会を開いて労働者自身が声を上げなければならないと煽り立てます。
そんな中「我関せず」を貫くのは他ならぬ波止場で働く労働者たち。
だって嫌だもん。
仕事もらえなかったり殺されたりするの嫌だもん。
ねえ【波止場】ってすごいでしょう?70年近くも前の映画ですよこれ。
さすがに殺されることはないにしろ、会社にとって不都合な人間が配置換えや解雇の対象となる現実はまだまだ過去のことではないじゃないですか。現代社会に置き換えても十分通用するお話なんですよ。
最後まで葛藤し続けるテリーと波止場の労働者達
「悪いものは悪い」と恐れず口にする清廉なイディに惹かれ、次第に感化されていくテリーでしたが、証言台に立つ決心だけはつきません。
そもそも施設を飛び出した孤児の自分達兄弟を拾ってくれたのはジョニーで、彼には育ててくれた恩も感じています。バリー神父からは「あんな奴に恩て、お前バカか!」と一蹴されますけど、育ての親には変わりない。ジョニーがいなかったら野垂れ死んでたかも知れない。
もし恩がなかったにしてもジョニーに逆らえばこの町だけにとどまらずアメリカ中の波止場で働くことができなくなるかも知れない。
それだけならまだいい。
仮に自分が証言したら、ジョニーの片腕である兄チャーリーはどうなる?
テリーは実際に証言台に立つその瞬間まで悩み抜きます。
権力者に逆らった者と一緒にされたくない者
長い葛藤の末、裁判所でジョーイの死にジョニーが関与したことを証言したテリー。
よっしゃ!よく頑張った!
ここから労働者一致団結して反撃や!
しかし町に戻ったテリーは英雄と称えられるのではなく、村八分にされてしまうんです。
どないしたらええんや、ホンマにこれでよかったんか…?
友達がみんな俺を避けていく…!
頭を抱えるテリーにイディが放ったひと言がめっちゃ良い。この人、箱入り娘のくせにさらっと核心つきよるんですよね。
そうやん?苦しい時に支え合うのが友達やん?逃げていく友達に媚びてもしゃあないやん?
正しいことしようぜ。
みっともなく足掻こう労働者の輪
翌日いつものように波止場へ行くと、テリーにだけ仕事は回されませんでした。でも誰もテリーをかばおうとはしません。
「今日はもう仕事ないから帰ってええで~」と言われてようやく(もうめっちゃ終盤)ブチ切れるテリー。今までの鬱憤を全部ぶちまけるかのようにジョニーに向かって悪口雑言の限りを尽くします。
あれっ?
ドンパチちゃうの?
いやいや、昼間やし。
いくらギャングや言うても衆目がありますんで。
「お前の母ちゃんデーベーソー!!」と子供のように激しく言い争った末場外乱闘にもつれ込み、ジョニー率いる幹部ら数人で袋叩きにされるテリー。数人の労働者達が「おい助けに行こうぜ」と小さな声でつぶやくも誰ひとりとして行動には移さず、こんな事態になってもまだ桟橋の上から大勢で静観している「“傍観者”を装った“当事者”」達。
ねえ天国のお父さん、この人達バカなの?
とか言ってる私だって、いざ現場に居合わせたら絶対こっち 側ですよ(自信満々)。
いや私に限らず大多数がこっち側でしょ。権力怖いやん。仲間外れ嫌やん。
【波止場】は中途半端に終わります。
ボコられてフラフラの状態で荷受け場へ歩いて行ったテリーがどうなったのかも、労働者達に無視されて焦るジョニーがどうなったのかも、労働者達が力を合わせてギャングを波止場から追い出すことができたのかどうかも、一切描かれていません。
ともすれば「テリー死んだ…?」と深読みしてしまいそうなラストですが、ヨタヨタと歩くテリーを見つめるバリー神父とイディが「一件落着!」とばかりに微笑んでいる様子を見ると、そういう訳でもないみたいです。
2人の笑顔が今後の波止場の変貌と発展を物語ってくれています。
【波止場】で「ヒーロー」と呼べるのはむしろこのイディとバリー神父で、最後の最後まで自分の保身と真実を天秤にかけて葛藤する主人公のテリーは波止場の他の労働者達と同じごく普通の人間です。
そのごく普通のテリーは、ある日突然どこからともなく湧き出てきた勇気に背中を押されてジョニーに逆らえるようになる訳ではありません。
イディやバリー神父やチャーリーと関わっていく中で少しずつ勇気を蓄え、やがて波止場の巨悪に立ち向かえるようになるまでになるんです。
何か出来そうでしょ?
小さなことでも何でもいいから、自分にも「何か」を成し遂げることができそうな気がしてくる偉大な映画だと思います。
よっしゃ始めましょ。
映画【波止場】の感想一言
周りに流され真実を偽っていないかと自分に問いかけてしまう名作。
それにしてもマーロン・ブランドはカッコいい。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。