1955年/アメリカ/監督:デルバート・マン/出演:アーネスト・ボーグナイン、ベッツィ・ブレア、エスター・ミンチオッティ、オーガスタ・チオッリ、ジョー・マンテル/第28回アカデミー作品・監督・主演男優・脚色賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
アラフォーの私からしてみりゃほんと他人事ではない映画ですよ。
一度も結婚したことのない同年代の友達なんて周りにいっぱいいます。「生涯未婚率の増加」や「女性の初産の高齢化」なんて聞くとなんだかいたたまれない気持ちになります。
現代日本特有の社会現象なのかと思いきや、60年以上も前から結婚適齢期の人間の関心事なんてあんまり変わらないんですね。
ズバリ言うなら【マーティ】は、自分の容姿にも職業にも自信がない心優しい青年マーティが、ただ婚活してる映画です。
探しても探しても良縁には恵まれない。なんなら34歳にしてすでに結婚は諦めかけている。
日本の1950年代といえば生涯未婚率はめっちゃ低かったはずですけど、アメリカでは親戚のおばちゃんがお見合い話を持ってきたりはしなかったんですかね?イタリア系って家族の繋がり強そうなのにね(マーティはイタリア系)。
参考 【生涯未婚率】男性23%、女性14%に急上昇 「皆が結婚する社会こそ異常」と指摘する専門家も
映画【マーティ】のあらすじザックリ
34歳の冴えない男に運命の出会いが訪れる
お肉屋さんで働く34歳のマーティ(アーネスト・ボーグナイン)は、今日も顔見知りのおばはん連中から以下のようなセクハラを受けています(男性でもセクハラでいいよね?ブライダル・ハラスメント?ブラハラ?)。
肉を買いに来ては世間話がてら近況をつついてくる馴染みのおばはん達。
いとこに教えてもらったダンスホールにでかけたものの、女性を誘っても断られ、ボ~ッと突っ立てるマーティに一人の男が話しかけてきます。
自分、ひとり?
俺の連れの女の子と踊ってやってくれへん?今日紹介されてんけど全然イケてへんねん。俺、違う子と遊ぶから。
引き取ってくれたら5ドルやるわ。
何やそれ!
その子の気持ちも考えろ!
若干お腹はプニプニしてるしお世辞にも“美形”とは呼べないけれど、相手の立場や気持ちを考えてあげられる良い男なんですよマーティは。
この下りでちょっと惚れそうになりました。
男が去ったのをこっそり見届けてから、置いてきぼりにされた女性に声をかけに行ってくれる優しいマーティ。すると女性はマーティの胸に泣き崩れます。
教師をしているクララ(ベッツィ・ブレア)という名のその女性は全然ブスでもなんでもない、むしろ綺麗な女性なんですけど、強いて言うならまあ…服装とか雰囲気がちょっと地味かな?って感じ。
マーティとクララはよほど馬が合ったようで、ペラペラと饒舌に話すマーティにクララは嬉しそうに相槌を打ち、お店を変えてお茶をしながら二人で爆笑するほど親密になっていきます。
いけマーティ!ええ感じや押せ押せ!もっとおもろい話せえ!
「持って行き方」が分かってない残念なマーティ
ところがここで厄介な事件が起こります。
明らかに別れ際のマーティの行動は失敗でした。アラフォーのおばちゃんが俯瞰で観てる分にはもう可愛くて笑ってしまうんですけど、若い二人にとっては大事件。決定的に足りなかったのはマーティの「経験値」。
これまで紳士的で堅実なふるまいを見せ、首尾よく翌日の約束もこじつけたマーティ。
私もそんな彼を観て「よっしゃマーティよくやった!今日はここまでにしとこ!」とエールを送っていた矢先、突然マーティはクララにキスを迫ります。
どあほ!
見るからに地味でオクテそうなクララにいきなりキスしてどないすんねん!
案の定びっくりしてマーティをはねのけるクララ。そこへ「持って行き方」が全然分かってない経験不足のマーティからダメ押しのひと言。
…ちょっとこっち来いマーティ。
そこ座れ。
「変化」を恐れる周囲の人々
幸いキスの下りについては、クララがこういうことに慣れていない自分が悪いと逆に謝ってくれるほどの良い娘だったから事無きを得ますが、この映画の着目すべき点はマーティの足りない経験値ではなくて、マーティを取り巻く周囲の環境にあります。
なんと驚くべきことに、せっかくマーティがパートナーを見つけたというのに同居の母親も長年の親友も、喜んでくれません。
それどころか疎ましそうにさえするんです。
母親は息子が結婚することで自分が家から追い出されるのではないかと恐れていて、親友は独身友達がいなくなるのが寂しいってわけ。
他人の幸せは素直に祝ってあげましょうよ。そしたら自分が幸せになった時も心から祝福してくれますやんか。
国や時代を超え、「結婚」「常識」「美醜」「あるべき姿」などの普遍的なテーマを扱った物語です。面白い。
映画【マーティ】の感想一言
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。