2002年/アメリカ/監督:アレクサンダー・ペイン/出演:ジャック・ニコルソン、キャシー・ベイツ、ホープ・デイヴィス、ダーモット・マルロニー、ジューン・スキッブ、ハワード・ヘスマン、ハリー・グローナー
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
「哀愁」って言葉がぴったりの映画ですよ。
それも「男の晩節の哀愁」ね。
女性ってお婆ちゃんになっても連れ合いを亡くしても好きなことして楽しんでたりするのに、男性は引退して人生の目的を見失うとどうしてこうも悲哀が滲むのでしょうか。
それだけ家族のために脇目も振らず働いてきてくれたってことなんでしょうね。
世のお爺ちゃんたちありがとう!第二の人生楽しんで!
【アバウト・シュミット】です。
映画【アバウト・シュミット】のあらすじザックリ
定年退職後のオッサンは本当に心配
私の父親なんかでもそうでしたけど、仕事人間過ぎて「この人は退職後一体何を楽しみに生きるんやろう…」って心配になってしまう男性っていますよね。特に日本で言えば団塊と呼ばれる世代の方々。
朝から晩まで働いて、休日も接待ゴルフに勤しんで、家族の会話も親しい友人も全部が全部仕事関係。仕事しかしてないから当然身の回りのことは妻に任せっきり。大学時代の一人暮らしなんて遠い思い出、炊事も洗濯も掃除もできたもんじゃありません。
そんな男が妻に先立たれたりした日にゃあ…お察しくださいってなもんですよ。
夫を亡くした妻は長生きするけど、妻を亡くした夫は数年で死んでしまうって統計もありますやんか。男性と女性の平均寿命の差を加味しても、やっぱり男性って仕事を無くすと脆いものなんだなって思います。
最近は「ザ・仕事人間!」みたいな男性も少しずつ減ってきているのかも知れませんけど、若いうちから仕事以外の趣味を作るなどして老後に備えた方が良いですよ。
【アバウト・シュミット】の主人公ウォーレン・シュミット(ジャック・ニコルソン)みたいになりたくなかったらね。
笑えるけど笑えない
保険会社を定年退職したばかりのウォーレン・シュミット。66歳。41年間連れ沿った嫁はん(ジューン・スキッブ)と2人でネブラスカ州オマハで暮らしています。
一人娘のジーニー(ホープ・デイヴィス)はコロラド州デンバー在住で、もうすぐ結婚予定。怪しげなウォーターベッドのセールスマンをしている婚約者のランドール(ダーモット・マルロニー)は、ウォーレンに言わせれば「ジーニーには相応しくない」男性。
盛大な退職祝賀会の翌日からもう家で何をしていいのか分からないウォーレン。
ジャック・ニコルソン自身が少しコミカルに演じているし、どの場面もクスッと笑えるように面白おかしく描かれてはいるんですけど、俯瞰的に見ると常にウォーレンには孤独感と喪失感が付きまとっていて心寂しくて観ていられない。
退職した会社に行ってみても、もう誰も貴方を必要としてる人なんていませんよ。
ゴルフでもしたら?
囲碁とか将棋は?
ゲートボールとかウォーキングとか映画観るとか、何でもいいからとにかく夢中になれることを見つけてください。お願いします。
最後の手紙と絵をどう受け取るか
そんなウォーレンの退職後の唯一の楽しみとなったのが、TVで見かけたアフリカの子供たちを援助する団体“チャイルド・リーチ”へ毎月22ドル寄附することによって縁ができた「養子」のンドゥグ君に手紙を書くこと。
ウォーレンはことあるごとにンドゥグに手紙を書きます。
周囲の人間への恨みつらみ、説教じみながら振り返る自分の半生、天が指し示した針路へ進む決断。
6歳の子供ンドゥグにはまだ文字は読めません。
それでもウォーレンは日々の出来事を手紙にしたためます。
ジーニーの結婚式を終えてオマハの自宅に戻った時、ンドゥグから郵便物が届いていました。そこにはンドゥグの世話をしているシスターからの手紙とンドゥグが描いた絵が同封されていて、それはウォーレンとンドゥグらしき2人の棒人間が太陽の下、手を繋いで笑っている絵なんですね。
この絵を見たウォーレンの目からは涙が溢れ出し、映画は幕を閉じます。
果たしてこの時のウォーレンって、一体どんな気持ちなんでしょう?
オーソドックスに「こんな自分でも誰かに必要とされているんだ!」と云う感動の涙が流れているのかも知れないけど、2人しか描かれていないンドゥグの絵を見て、いよいよ自分の身近には誰もいないことを改めて思い知らされているような気もしないでもない。
例えばウォーレンと違って今の生活が充実している人が“チャイルド・リーチ”に寄附をし養子から手紙をもらったとしても、ここまで感激はしなかったかも知れないですよね?
普通に嬉しいのは嬉しいでしょうけど、「ああ良いことしちゃった!」と微笑んで手紙を大事に引き出しにしまって終わりでしょう。
ところがウォーレンはこの手紙がもっと、信じられないくらいめちゃくちゃ嬉しいんですよきっと。
誰にも必要とされず空虚感が増すばかりの実生活で、唯一自分を頼って「ありがとう」と感謝の意を表してくれるのは養子になったタンザニアの少年ンドゥグだけ。
この絵がこんなに嬉しいなんて。
これほどまでに孤独だなんて。
相反する感情が一度に押し寄せ涙となってこぼれ落ちるラストのウォーレンを観ると、思いがけず老後が不安になってこっちまで泣けてくるんですよホントに…。
映画【アバウト・シュミット】の感想一言
とは言えウォーレンは老後のお金の心配がないだけまだマシではありますけどね。
これに「貧乏」が上乗せされた日にゃあホントに救いようもない。
身の周りのことに関しては、かなりの曲者だけど面倒見の良いロバータとくっついちゃえばいいのにって思ったのは私だけではないはず。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。