1962年/アメリカ/監督:ロバート・アルドリッチ/出演:ベティ・デイヴィス、ジョーン・クロフォード、ヴィクター・ヴィオノ、メイディ・ノーマン、アンナ・リー、マージョリー・ベネット/第35回アカデミー衣裳デザイン賞(白黒)受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
すごい映画です。
何がって、若くて綺麗な女性(男性もか)が一切出て来ないんですよこの映画には。
主役は50代のおばちゃん2人。
その内1人は到底50代には見えなくて、シワシワの顔、垂れさがったお肉、くたびれたガニ股歩き…、まるで日本昔話に出てくる山姥 みたい。その山姥が縦巻ロールにヒラヒラのドレスワンピース姿で歌って踊ると言う、ある意味死ぬほど怖い映画なんです。
公開当時大きな話題となり今でも根強いファンを持つ奇怪な映画、【何がジェーンに起ったか?】です。
驚きの結末を楽しんでいただきたいのでネタバレは避けました。
映画【何がジェーンに起ったか?】のあらすじザックリ
夢見るベイビー・ジェーン・ハドソン
1917年、幼くしてすでに舞台に立ち人気を博していた“ベイビー”・ジェーン・ハドソン(ベティ・デイヴィス)。
舞台袖には金を稼いでくれるジェーンばかり可愛がる芸人の父親とその妻、そして舞台で喝采を浴びるジェーンを羨ましそうに見つめる姉のブランチ(ジョーン・クロフォード)がいました。
しかし18年後の1935年には立場は逆転。
子役時代の人気にあぐらをかいていたジェーンは「実力不足」の烙印を押されアルコールに溺れ業界人から煙たがられる存在になり、人柄も良く努力を惜しまず映画とも相性の良かったブランチは押しも押されぬ大女優に成長します。
ところが姉妹が揃って出席したパーティからの帰り道、自宅の門の前で痛ましい自動車事故が起こります。
この事故で背骨を損傷したブランチは一生車椅子生活を余儀なくされ、嫉妬心から故意にブランチを轢いたとみられたジェーンはブランチの身の回りの世話をしなければならなくなり、お互いに50代になった今もたった2人で昔と同じ邸宅に暮らしているのでした。
なぜか突然嫌がらせをエスカレートさせるジェーン
幼い頃からちやほやされていた影響でしょうか、とにかくジェーンは性格が悪くて悪くて、自分に仕事が来なくなったのもブランチが目立ち過ぎたからだなんて逆恨みしています。
ハドソン家に通ってくる家政婦のエルバイラ(メイディ・ノーマン)は、ジェーンは病気だから入院させるようにとブランチに忠告しますが、ブランチは中々聞き入れようとしません(どうしてこれほどまでにブランチがろくでなしの妹を大事にするのかはラストで明かされます)。
文句を言いつつもこれまで2人は何十年も、どうにか一緒に暮らしていました。
ところがジェーンは突然ヤケクソのように自分のやりたいことをやり始めます。
鳴き声が耳障りだったブランチの鳥を調理して皿に盛ったり、もう一度舞台に立つためピアニストを募集したり、エルバイラを解雇したり。
??
急にどないしたんや?
このジェーンの行動の引き金になった要因は以下の二つだと思われます。
- ブランチが内緒でジェーンを入院させて家を売却しようとしたこと。
- ジェーンがブランチの筆跡を完璧に真似ることができるようになったこと。
二つ目の要因が特に重要で、ブランチのサインを再現することができるようになったジェーンは偽サイン入りの小切手をじゃんじゃん切りまくります。おまけにジェーンはブランチの声色もマスターしてるので、顔さえ見えなければブランチの財産を思いのままにできる訳です。
偽サインの小切手がまかり通ると分かれば憎いブランチの世話をかいがいしく焼いてやる必要もなくなるもんね。
そこに病的な症状も加わって、ジェーンはますます狂気の山姥へと変貌して行くのです。
その白塗りは監督の指示かベティ・デイヴィスの独断か
私はハリウッド女優でベティ・デイヴィスが一番好きです。
私が初めてベティ・デイヴィスを観たのは【イヴの総て】で自身を象徴するかのような落ち目の大女優マーゴ・チャニングを演じた時で、その時の衝撃たるや電流が体を走り抜けたようでした。いやホントです。
1950年/アメリカ/監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ/出演:ベティ・デイヴィス、アン・バクスター、ジョージ・サンダース、ゲイリー・メリル、セレステ・ホルム、ヒュー・マーロウ/第23回アカデミー作品・監督・助演男優・脚本・衣裳デ[…]
すぐさまベティ・デイヴィスの出演作を手当たり次第に鑑賞しまくり、その中に本作【何がジェーンに起ったか?】も入っていた訳ですが、作品ごとに役に入り込むベティが演じた歴代キャラクターの中でも“ベイビー”・ジェーン・ハドソンは異様。
前述のとおり撮影当時のベティ・デイヴィスの実年齢もジェーン・ハドソンのキャラクター設定も「50代」であるはずなのに、画面に映し出されるジェーンはまるで100歳を超えようかという老婆。アルコールの飲み過ぎのせいか声もガラガラ。なんなのこれ、シワとかも作ってるの?
姉のブランチの方が断然若々しい(ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードは同年代)。
私ジェーン・ハドソン。
「あの」ベイビー・ジェーン・ハドソンよ?
コワイコワイコワイコワイ…!!!!!
(自分で「あの」って言うな!)
海辺で若者に囲まれてふわふわ踊るラストなんて背筋も凍る。
もともと正統派美人ではないベティは、若い頃から殺人者でも汚れ役でもなんでもござれの生粋の演技派女優ではありましたが、この頃からさらに「老い」や「醜さ」を惜しむことなくスクリーンにさらけ出す超ベテラン個性派俳優へと転身を遂げます。
「うへえ~こんなババアこええ~…」って思うのに何度も観たくさせるベティの演技はさすがです。
映画【何がジェーンに起ったか?】の感想一言
映画の内容のみならず、ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードの競演でも話題を呼んだ映画です。
当時ハリウッドで2人の確執は有名で(特にクロフォードは誰にでもケンカ売ってて、【グランド・ホテル】で共演したグレタ・ガルボとも同じシーンに出演することがありませんでした)、この映画のヒットを受けてロバート・アルドルッチ監督が【ふるえて眠れ】でもデイヴィスとクロフォードを共演させようとしたけど本人同士がこれを拒否するほど仲が悪かったそうです。
惜しいですね、双方素晴らしい女優ですから、2つの才能のぶつかり合いをもう一度観てみたかった。
ちなみに【ふるえて眠れ】にはクロフォードの代わりに【風と共に去りぬ】でメラニー・ハミルトンを演じたオリヴィア・デ・ハヴィランドが抜擢されています。
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