1946年/アメリカ/監督:フランク・キャプラ/出演:ジェームズ・ステュアート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア、ヘンリー・トラヴァース、トーマス・ミッチェル、ボーラ・ボンディ、ワード・ボンド
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

【或る夜の出来事】、【オペラハット】、【我が家の楽園】で3度アカデミー監督賞に輝いた名監督フランク・キャプラによる、胸に染み入るファンタジー映画、【素晴らしき哉、人生!(1946)】。
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1938年/アメリカ/監督:フランク・キャプラ/出演:ライオネル・バリモア、ジェームズ・ステュアート、エドワード・アーノルド、ジーン・アーサー、アン・ミラー/第11回アカデミー作品・監督賞受賞注※このサイトは映画のネタバレし[…]
【素晴らしき哉、人生!(1946)】には天使が出てきます。
「天使」と言えば下の画像のように、赤ちゃんか幼い子供の姿をしてると思ってませんか?
少なくとも私は思っていました。
ところがどっこい【素晴らしき哉、人生!(1946)】で主人公ジョージ・ベイリー(ジェームズ・ステュアート)を救う二級天使はなんと 爺さん なんです。よぼよぼの好々爺。天使感ゼロ。
…あかん。
こうやって気軽にdisるから私の所にはいつまで経っても天使が来えへんのや。
相手が赤ちゃんだろうが赤ずきんちゃんだろうが爺さんだろうが天使は天使!素直な気持ちで鑑賞しましょう。
よし私も良い行いをしよう。
まだ【素晴らしき哉、人生!(1946)】を観ていない人にコッソリ良いことを教えてあげます。

これナイショね。
映画【素晴らしき哉、人生!】のあらすじザックリ
天国で何やら相談している神様と天使
のっけから宇宙の映像で一瞬面くらいますが、スペースものではありません。火星のコロニーって訳ではなく、ここは天国。
ここで今まさに神様たちが相談しているのは、死にかけたひとりの人間を救うか否か。
クリスマスに自殺をはかった小さな町ベッドフォード・フォールズの優しい青年ジョージ・ベイリー(ジェームズ・ステュアート)。彼の無事を願う人々の祈りが、天国の神様の元に届いたのです。
なんて夢のある設定でしょうね。

そして神様からジョージ・ベイリーを救う役目を仰せつかったのが、まだ翼をもらえていない二級天使で元時計職人のクラレンス(ヘンリー・トラヴァース)。


神様はまずは過去に遡り、このおっちょこちょいのクラレンスにジョージがどんな人物であったのかを話して聞かせるのでした。
気の毒な程にツイてないジョージ・ベイリー
健康で頭が良くたくさんの友達に囲まれてよく遊びよく働くジョージには、たった一つ残念な点がありました。
俗に言う「損な役回り」の体質なのです。

幼い頃雪遊びをしている時には、池に落ちた弟のハリー(トッド・カーンズ)を助けて片耳の聴覚を失います。
奉公先の薬局の主人に薬の配達を頼まれた時には、主人が処方薬と劇薬をうっかり間違えていることを伝えることができず折檻されます(その後誤解は解けて主人は涙ながらにジョージに謝罪)。
父親は住宅ローン会社の社長とはいえ温情経営であるため家計は常に苦しく、大学の学費も何年もかかって自分で工面。お金が貯まってやっと大学にも旅行にも行ける!と思ったら今度は父親が急死。急遽それまでの予定をすべて取りやめて会社を継ぐことになってしまいます。
不要になってしまったジョージの大学資金で次男のハリーが大学に進み、大学でハリーはフットボール選手として優秀な成績を修め、オマケに4年間の在学期間があけるとちゃっかり嫁まで連れて帰ってきます。ジョージとは似ても似つかない運命のもとに産まれたハリーは、戦争が始まったら始まったで海軍に入隊し名誉勲章を授かるほどの目覚ましい活躍を見せ、地元の名士に。
嫉妬してしまうくらいの成功者っぷり。

親しい友人らもどんどん町を出て目指す道へ進んで行く中、ジョージだけはただの一度も町から出ることなく、町の人達のために尊敬する父と同じ温情経営で働くのでした。
幼馴染みのメアリーとの運命の再会
長い間独り身だったジョージにもついに恋の足音が聞こえてきます。
お相手は(ジョージは気付いていませんでしたが)幼い頃からずっとジョージを想い続けてきた同じ街に住むメアリー(ドナ・リード)。
ジョージがメアリーを口説く時の名セリフがこちら。

「よし、月をプレゼントしよう!君は月を飲み込む。そして指先や髪の先から月の光がこぼれ始める」
こんな歯の浮きそうなロマンティックなセリフ、実際面と向かって言われようもんならめっちゃ爆笑するかめっちゃ引くかのどちらかなんでしょうけど、映画で観る分にはどうしてこんなにも素敵に響くんでしょうね。絶対笑う癖に誰かに言ってもらいたいとさえ思う。
そして二人は晴れて結婚式を挙げ、いざ世界一周新婚旅行へ!
…と思った矢先。
世界恐慌の煽りを受けて銀行から預金を下ろせなくなった人々がジョージのローン会社に殺到。

優しいジョージと、ジョージを最も理解する妻となったメアリーは、新婚旅行の資金を無利子無催促無証書(正気か!)で皆に少しずつ貸し与えた後、あり合わせの材料を調達し、精一杯飾り付けた「幽霊屋敷」と呼ばれるボロボロの空き家で新婚初夜を過ごします。
どんなけええ夫婦やねんなもう。涙出るわ、そのピュアな心が羨ましくて。
消えてなくなった8000ドル
旅行も大学も億万長者になる夢も諦めたけれど、理解ある美しい妻と4人の子供に恵まれ、ささやかに幸せな日々を送っていたジョージを、またも不運が襲います。ここら辺でちょっと悲鳴上げそうになってくるんですけどね。「もう止めてあげてーっ!」って。
次の不運は何かと言うと、共同経営者であるジョージの叔父が、銀行に預けるはずだった8000ドルを紛失してしまうのです。そのお金がなければ会社はお終い。家族も自分も露頭に迷うことになります。

仕方なくジョージは敵対関係にあるけど町で一番の大金持ちであるポッター氏(ライオネル・バリモア)のもとへお金を借りにやって来ます。

貸すかドアホ!
金無いんやったら死んだらどないや?
生命保険で8000ドルくらいまかなえるやろ?
人の心を無くした守銭奴です。人の皮を被ったカネゴンです。カネゴンの皮を被ったポッターです。こんな大人にだけはならないようにしましょう。
小さな町で唯一8000ドルの大金を用立てられるポッターに断られ、生命保険証書を大事に胸ポケットにしまいこみ、いよいよ死ぬより他に手はないと思い詰めるジョージ。
彼はクリスマス・イヴの凍える川に身を投げようと、橋の欄干から下をのぞき込みます。

その時、ジョージより一瞬先に川に飛び込んだ者が!


自分から飛び込んだくせに助け求めるとか。
ジョージは何が起こったのか訳も分からないまま、上着を脱ぎ捨て川へ飛び込み、溺れる「何者か」を救い出します。
この時救った老人こそが、神の使いの二級天使クラレンス。

助けてもらってホクホクのクラレンスは、ジョージに向ってドヤ顔でこう言います。

ええ、まあ……。
自分が「産まれなかった」世界?
自殺は回避したものの根本的な問題解決には当然いたっておらず、自暴自棄になるジョージを見てクラレンスが言います。

ホンマかいな、じゃあ自分が「産まれへんかった」世界へ行ってみるか!
一陣の風が吹いたかと思うと、さっきまで猛烈な勢いで吹雪いていた雪は止み、飛び込んだ時に負ったジョージの傷は消え、失ったはずの聴力も戻り、そこには「ジョージが産まれなかった世界」が広がっていたのです。

そこでは子供の頃池に落ちて死んでしまったハリーの墓と、劇薬を処方して子供を殺した罪で20年も投獄され気が触れてしまった薬局の主人と、地味な身なりで生涯独身を貫くメアリーと、強欲ポッターに牛耳られすっかり荒廃してしまった町がありました。

自分の人生の素晴らしさを思い知ったジョージはもとの世界に戻りましたが、もう死のうなんて思ってません。
彼はまっしぐらに愛する家族が待つ自宅へと駆けて行きます。
訪れる人々…なぜに最初からそうせなんだ
家に帰ると妙なことが。
次から次へと町の人達が訪ねてくる。
メアリーが町のみんなに呼び掛け、それに応えた人々が少しずつお金を持ち寄り、ジョージのために集まってきたのです。

たちまち机の上には数えきれないほどのお金の山が出来上がりました。
たかが金ですよ。ジョージのためならたかが金です。「されど金」とか言うのは無し。たかが金!
たかが金くらい、暖かいあなたのためならいくらでも用立ててくれる人達がいたというのに。
人を救ってばかりの人生だったジョージには「他人の力を借りる」ことなど思いつきもしなかったのでしょう。
リン!
涙を拭うジョージとメアリーの傍らで、クリスマスツリーに飾られたベルが陽気に鳴り響きます。
それを聞いていた娘が一言。

やったね、クラレンス!
映画【素晴らしき哉、人生!】の感想一言
ジョージが素晴らしい人間であるのはもちろん、メアリーや子供達やクラレンスや町の人達など、彼を取り巻く人々の暖かさが総出で押し寄せてくるのがいいんですよね。「良心」を描き続けたフランク・キャプラの集大成。
今ではクリスマス映画の定番として必ず挙げられるこの名作が、公開時はまったく評価されていなかっただんて信じられます?
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。