1987年/アメリカ/監督:ノーマン・ジュイソン/出演:シェール、ニコラス・ケイジ、ヴィンセント・ガーディニア、オリンピア・デュカキス、ダニー・アイエロ/第60回アカデミー主演女優・助演女優・脚本賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

何か悩んでます?
恋人がいるのに別の人を好きになってしまったとか?
しかもその相手が恋人の兄弟姉妹だったりとか?
まあ落ち着いて。
【月の輝く夜に】でもご覧なさいよ。
ドロドロの三角関係という現実が待ち受けていても、「みんなハッピー♪」な気分だけなら味わうことができちゃうよ(2時間限定)。
映画【月の輝く夜に】のあらすじザックリ
シェールがアカデミー賞授賞式に着用したのはほぼ見えてるシースルードレス
先に明かしておきますと、【月の輝く夜に】で主人公のロレッタ・カストリーニを演じた歌手で女優のシェールは、第60回アカデミー主演女優賞を獲得しています。
おはこんばんちは、朱縫shuhouです。 当サイト「天衣無縫に映画をつづる」では、よりよい映画に出会うため「名作と言われる映画をとりあえず一通り観てみる」ことを推奨しています。しかし名作と言っても世[…]
そして授賞式に臨んだ彼女の姿が、下手すれば映画本編よりも強烈なインパクトを残してしまったことは有名なお話。
だってドレスこんなんでしたので。

まあシェールは普段から露出狂とも取られてしまいそうな布地の少ないステージ衣装で有名な歌手ですから、これが通常運転と言えないこともない。
近年のレッドカーペットではさらにグレードアップしたセレブのネイキッドドレスが取り沙汰されることも多くなりましたが、シェールは間違いなくそんな流行を先取ったセレブの一人でした。
イタリア系アメリカ人一族の物語
ホントに素敵な映画です。大好き。
主人公は7年前に夫を亡くした37歳の一見くたびれたおばさんロレッタなんですけど、彼女を取り巻く家族も、ふらりと立ち寄った酒屋の夫婦も、いきつけの美容院の店員も、みんながとっても暖かくて、みんながそれぞれの人生を謳歌しているのが分かります。

若い人だけじゃなくてこんな風に年寄りが生き生きしてるのって良いですよね。
健康寿命延ばそうぜ。
恋人と再婚を決めたロレッタ
ロレッタの恋人のジョニー(ダニー・アイエロ)は今夜、意を決して彼女にプロポーズ。
ロレッタに求婚を受け入れてもらったジョニーは、シチリア島にいる危篤状態の母親に結婚の報告をするためすぐに飛行機で飛び立つことに。
空港でジョニーはロレッタにお願い事をして行きます。

しぶしぶ了承したロレッタは浮かれポンチ状態で、父コズモ(ヴィンセント・ガーディニア)と母ローズ(オリンピア・デュカキス)、そして5匹の犬を飼う祖父の待つ家に帰ります。
嬉しそうに結婚が決まったと報告するロレッタ。
しかしどうやら嬉しいのは「結婚する」という事実のみ。
母ローズに「ジョニーを愛してるの?」と訊かれ、抜群の間で「別に。」と返す場面は神がかった吹き出しポイント。

相手は誰でもええんかーい。
5年間兄と絶縁している弟ロニー
ジョニーから電話で催促されたロレッタは、気が進まないままジョニーの弟のロニー(ニコラス・ケイジ)の元へ。


あれ何かこのニコラス・ケイジ、アホみたいやな…。
画像切り出すとこ間違えたか。まあええわ。
パン屋の地下でパンを焼くロニーは、5年前仕事中にジョニーと話している時、スライサーに左手を挟まれ義手に。
それを知った当時の婚約者はロニーの元から去っていき、左手と婚約者を一度になくしたロニーはそれ以来ジョニーを恨んでいるのでした。
ジョニーへの恨み節と被害者妄想バリバリの言い分を捲くし立てるロニーに動じることなくケロリと放ったロレッタの言葉がなんとも言えない。

あなたは狼なのよ。
あなたは狼で彼女は罠。
罠をはずすために前足を噛み切ったの。
自由への代償よ。
ジョニーは悪くない。
分かったような分からんような。
しかしこの前の場面でも分かるように、今や立派な身体障害者となってしまったロニーを周囲の人達は腫れ物扱いしています。ジョニーのせいで人生のすべてを無くしただなんて逆恨みも甚だしいのに、ジョニー自身もパン屋の同僚も誰一人それを指摘することができない。
だって左手と婚約者を一度になくしたロニーは可哀想だから。
そんな中、初対面で怒りのベクトルが見当違いであることを真っ向から指摘してくるロレッタに、ロニーはいきなり恋をします。
そしてロレッタもいきなりそれに応えます。

いいのよ。
愛ってそんなもんでしょ。
忘れようとするロレッタ、気持ちを隠そうとしないロニー
勢いでついうっかりロニーとベッドを共にしてしまったロレッタは朝起きて我に返り、昨夜の出来事をなかったことにしようとします。
パン屋の地下で出会った時には狂犬のようだったロニーも、ロレッタに恋した今ではまるで借りてきた子猫。

俺には愛するものが2つある。
君とオペラや。
今晩オペラに付き合ってくれ。一晩に2つを楽しめたらきっぱり諦める。
いいですよねこんな告り方。言われてみたい。
しかしアレやね、自分と並べられてるのが「オペラ」やからなんか余計にかっこええけど、これが「ラーメン」やったらちょっとあかんかもね。

俺には愛するものが2つある。
君とラーメンや。
今晩ラーメンに付き合ってくれ。一晩に2つを楽しめたらきっぱり諦める。
あとこんな趣味の奴とかね。

俺には愛するものが2つある。
君とパチンコや。
今晩パチンコに付き合ってくれ。一晩に2つを楽しめたらきっぱり諦める。
ねえ?
なんかあんまりやねえ?
オペラを趣味とするようなハイソサエティな恋人をお持ちの方は是非言ってもらってみてください。
オペラ劇場での出来事
ここまでずっと気になってました。
ロレッタの前髪。
おしゃれ染めなのか光の加減なのかただの白髪なのかよく分からなくて。
正解は「白髪」でした。

オペラに誘われたロレッタが、言葉とはうらはらにウキウキ気分で髪を染めドレスを新調し変貌する場面はまるで【プリティ・ウーマン】の名シーンさながら(【月の輝く夜に】の方が前やけど)。
1990年/アメリカ/監督:ゲイリー・マーシャル/出演:リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ、ローラ・サン・ジャコモ、ラルフ・ベラミー、ジェイソン・アレクサンダー注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこ[…]
シェールって正統派美人ではないでしょう?
顔長いし。せいぜい「個性派美女」。
しかしホントにオペラ劇場の噴水の前でロニーと見つめ合う彼女の姿は月から落ちてきた夜の妖精みたいに美しい。

そしてその美しい姿で浮気相手とオペラ観劇に来ていた父コズモを見つけた時のロレッタのリアクションは最高(娘に浮気現場見られたコズモも最高)。

映画【月の輝く夜に】にこめられたテーマ
なんでしょうねこの映画って。
結構みんななし崩しなんですよね。
ロレッタもなし崩しに婚約者の弟と寝ちゃうし。
そもそもその結婚決めた動機もどやねんって感じやし。
散々浮気してたコズモもあっけらかんとなかったことにしてるし。
貞操を守り通したのはローズだけ。
ジョニーは母親が回復したらあっさりロレッタを捨てるし。

だけど最後にはニヤついてしまうハッピーエンドが待ってるんですよね。
直訳では「月に打たれた」となる原題の【Moonstruck】には、月の光に人を狂気に導く力があると考えられていたことから、「気が触れた」や「感傷でぼうっとした」と言った意味があります。
強烈な月の光を浴びることで、人は誰しも狂気のように普段の自分と違った行動を起こしてしまうことがあるのかも知れません。
でもその狂気のままに行動したところで、結局はおさまるところにおさまると、そんな風に思える映画です。
映画【月の輝く夜に】の感想一言
【月の輝く夜に】の鍵となる、しょっちゅう夫婦で家にやってくるローズの兄(ロレッタの伯父さん)の「コズモの月」のお話はかなり秀逸。
ここに全文書いても絶対伝わらないと思いますので、ぜひ本編をご覧になってみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。