1961年/アメリカ/監督:スタンリー・クレイマー/出演:スペンサー・トレイシー、バート・ランカスター、リチャード・ウィドマーク、マクシミリアン・シェル、マレーネ・ディートリヒ、ジュディ・ガーランド、モンゴメリー・クリフト、ウィリアム・シャトナー/第34回アカデミー主演男優・脚色賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
問題。
- 「野ウサギ」
- 「狩人」
- 「野原」
この3つの単語を使って文章を作れ。
3秒で答えてください。
1秒。
2秒。
3秒。
はい、では答えをどうぞ。
何ですと?
できないですと?
早く、早くお逃げなさい!
ナチに断種 されますよ!
ドイツの第二次世界大戦中の「法の名のもとに犯した罪」を裁いた実際の軍事裁判を基にした映画、【ニュールンベルグ裁判】です。
映画【ニュールンベルグ裁判】のあらすじザックリ
期間8ヶ月、記録1万ページに及ぶ裁判
「ニュールンベルグ裁判」とは、第二次世界大戦中のドイツの戦争犯罪を裁いた国際裁判のこと。開催地がドイツのニュルンベルク市であったことからこう呼ばれています。
被告人24名、期間8ヶ月、裁判記録1万ページにもおよぶ大きな裁判。
裁判の詳細な全容なんて2時間や3時間じゃとても映像化できたもんじゃないでしょう。映画【ニュールンベルグ裁判】では、とりあえずナチス支配下で不当な判決が下された2つの裁判がクローズアップされます。
2人の判事に挟まれて被告人席に睨みをきかすダン・ヘイウッド裁判長を演じるのは、名優スペンサー・トレイシー。
ダンは元メイン州の判事で、誰もが嫌がったこの裁判を引き受け、老体をおしてはるばるニュルンベルクまでやって来ます。
【ニュールンベルグ裁判】にはスペンス(スペンサー・トレイシーの愛称)を始め、バート・ランカスターやリチャード・ウィドマーク、マレーネ・ディートリヒ、モンゴメリー・クリフト、そして太ってしまったけど確かな演技力のジュディ・ガーランドなど、名優たちが目白押しています。
残念ながらオスカー獲ったのは超有能弁護士ハンス・ロルフを演じたマクシミリアン・シェルだけだけど、できるものなら全員に演技賞をあげて欲しいくらい。
例えばバート・ランカスター。
バート・ランカスターは、被告人のひとりで、世界的に有名な法律家であり元法務大臣でもあるドイツ人のエルンスト・ヤニングを演じます。
アドルフ・ヒトラーやヨーゼフ・ゲッベルスの命令(或いは忖度)で無実のユダヤ人や反乱因子に有罪判決を下し続けてきたヤニングは、他の被告人とは違って法廷で言葉も発せず俯くばかり。
ところが法廷が再び戦時中さながらの「無実の被告人を糾弾する場所」の様相を呈した時、彼は目を大きく見開き証言席で声を荒げます。
背筋を伸ばし拳を握りしめ言葉を発するたびに顎が上下する特徴的な演説の仕方がまるでドイツ人そのものだったので、もしかしてと思ってバート・ランカスターの出自を調べたものです。結果ランカスターは生粋のアメリカ人であることが分かった訳ですけど。
“ハイエナ”と呼ばれた悪人面のリチャード・ウィドマークもカッコよかった。彼はやり手の検察官タッド・ローソンを演じます。
ローソンによって夫を死刑に追い込まれたドイツ人の未亡人ベルトホルト夫人(マレーネ・ディートリヒ)にしてみれば悪人だけど、彼は彼なりに、戦後強制収容所解放部隊に所属していた時に収容所で目にした惨状を忘れられないんですよね。
ローレンスが証拠として法廷で流す強制収容所の記録映画は衝撃的。ダンと同じく、しばらく食欲も失せるほど。
山と積まれた死体がブルドーザーで押し運ばれたり…。
本当の映像なのかなあれは…。
民族や人種がかかわる不当な判決
さて、冒頭の問題の模範解答を発表します。内容は以下でしたよね。
問題。
- 「野ウサギ」
- 「狩人」
- 「野原」
この3つの単語を使って文章を作れ。
さて正解は、
こんな感じ。
どうでしょう。簡単ですよね。
これは何かと言いますと、ナチスが断種が必要かどうか判断をするために行っていたテスト。
断種ってのは手術で生殖能力を失わせることで、これによって遺伝的疾患や精神的疾患を持つ人の繁殖を抑制したんですね。昔は「断種法」という法律が定められていたこともあるそうです。
こんな簡単なテストにも答えられない人は知能的?情緒的?精神的?…まあ、色んな所に問題があるから子供作られなくしちゃうよってこと。要するにこれ以上アホを増やすなと。
裁判にはこのテストに答えられず実際に断種された男性ルドルフ・ペーターゼン(モンゴメリー・クリフト)や、ユダヤ人のフェルデンシュタイン氏と関係を持ったとされるアーリア人のイレーネ・ホフマン・ウォルナー(ジュディ・ガーランド)が証人として召喚されます。
繰り返される「ドイツ人だって知らなかった!」
この裁判でヤニング以外の被告人を始めとする全ドイツ人が何を証明したかったのかと言うと、恐らく「私たちはユダヤ人が虐殺されてたなんて知らなかった」ことなんでしょう。
ベルトホルト夫人も、ダンの下宿先のお手伝いさんも、ヤニング以外の被告人も、ドイツ人はみな口を揃えて「戦争も虐殺もすべてヒトラーやゲッベルスら一部の権力者の責任です!信じてください!私たちは何も知らなかったんです!」と言います。
でもローソン検察官にしてみれば、ドイツ中に何万ヶ所もあった強制収容所で、何百万人ものユダヤ人が虐殺されているのに、
ですよ。
そんなこと言われても本当に知らなかったのかも知れないし、ヒトラーの統制下では仮に知ってたところでどうしようもなかったんでしょうけど、「知らなかった」でまかり通る世の中なんてウンコちゃんである!とローソン検察官は被告人、果ては暗に「ドイツ人全員」をも追及して行きます。
一方、自身もドイツ人であり被告のヤニングを熱烈に尊敬するハンス弁護士にしてみれば、
ってことになるんですよね。
こんなことを言っては何ですが不毛な裁判と言うか、今さらヤニング達を罰したところで首謀者はみんな自殺してるし歴史は変わらないし死んだ人は生き返らないし、それでも何らかの判決を下さなければならない訳で、実際に判決を下したジェフリー・ローレンス裁判長もさぞかし精神的に追い込まれたことでしょうね。
映画【ニュールンベルグ裁判】の感想一言
もしかして裁判官の人って平均寿命短いんじゃない?
仕事でしょっちゅう人の生死を預かるような判決を下さなければならないなんて、精神的にめちゃくちゃ消耗しそう…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。