1938年/アメリカ/監督:フランク・キャプラ/出演:ライオネル・バリモア、ジェームズ・ステュアート、エドワード・アーノルド、ジーン・アーサー、アン・ミラー/第11回アカデミー作品・監督賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

ハーモニカ買おうと思とんですよ、ええ。
え?そうそれ、ハーモニカ。
やっぱりね、人間つらいことがあってくじけそうになった時は、気分を落ち着けてハーモニカを吹くに限るんですよ。
お気に入りの椅子に腰かけて、頭を空っぽにして、大好きな愉快な曲を演奏する…すると不思議といいことが起こりますから。絶対。
…てまあこれ全部、
【我が家の楽園】の受け売りですけど。
嘘のように理想的すぎる展開からバレバレの落ちまで、ホームドラマの王道を突っ走ってるだけの映画だってのに、なんでしょうね、「心が欲する」この感じ。キャプラマジック。
フランク・キャプラ監督が3度目のアカデミー監督賞を受賞したハートフル・コメディです。
映画【我が家の楽園】のあらすじザックリ
守銭奴のおっさんと楽天家の爺さんの物語
【我が家の楽園】は、トニー(ジェームズ・ステュアート)とアリス(ジーン・アーサー)が主となったラブストーリー……ではありません。
若い2人の、「父親と祖父の友情」が主軸になったホームドラマです。
無慈悲で冷酷な銀行家でトニーの父親アンソニー(エドワード・アーノルド)と、好きでもない仕事に就いて身を粉にして人生を歩むより友人を大切にして好きなことをしながら生きる道を選んだアリスの祖父バンダーホフ(ライオネル・バリモア)。
対照的な2人が次第に心を通わせるお話です。
不思議なバンダーホフ一家
事の発端はアンソニーの息子トニーが秘書のアリスを結婚相手に選んだこと。
アリスはバンダーホフの孫娘で、自由に生きる祖父と家族のみんなを誇りに思っています。
そんなアリスの家に初めて招待されたトニーは驚きを隠せません。
アリスのオカン(バンダーホフの娘)は、劇作家でもないのに始終タイプライターを叩いてる。理由は「タイプライターが間違って家に届いたから」。
返さんかい。
オトン(バンダーホフの娘婿)は、配達に来て食事に誘われそのまま一家に居座ってるおっさんと働き者のカラスと一緒に地下室で花火を作って遊んでる。
仕事せんかい。
妹(バンダーホフの孫娘)は四六時中下手なバレエを踊りまくり、印刷が趣味のその夫は自分の家のように嫁の実家でのびのび生活。
埃立つから止めんかい。
自立せんかい。
妹のバレエの先生であるロシア人は夕飯時になると「ご飯ある?」と入り浸り、このほどさらにバンダーホフは、銀行でおもちゃ作りの名人のおっさんを「拾って」きて一緒に住まわせる。
お前ら誰やねん。

この一家の軸になっているのはバンダーホフで、人格者であるがゆえに家族は愚か近所中から高い信頼を得ています。
屁理屈か正論か…一家の主バンダーホフ
「ほのぼのしててええなあこんな一家も…」と思う一方、国税局の役人が所得税未納でバンダーホフ家を訪れる場面では現実とのギャップを感じずにはいられない。
バンダーホフが税金を払わない理由は、「私はお金を出して服を買う。国は税金を払ったら私に何か見返りをくれるんか」というもの。
ええ、すごい屁理屈です。
こんな屁理屈がまかり通ったら誰も税金払わなくなって国は一気に破綻するがな。取りようによってはただのとんちの利いた鬱陶しい頑固じじい。

そもそも「好きなことだけして生きていく」って云うバンダーホフの理想(思想?)自体が夢見がちな中学生レベルではありますが、「生きていくのに必要な以上に稼いでも何も残らん」っていうのだけは正論だと思いますね。「子供に遺産を残したい」って人もいるでしょうけど、子供なんか正しく育てば自分でなんとかしよるでしょう。
逆説的に言えば、親の遺産がないと生きていけないような大人になって欲しくないってことです。
現にこれまで父親にコミュニケーションを取るゆったりした時間も満足に持ってもらえなかったトニーは、普通の生活以上にまだまだ稼ごうとするアンソニーを尊敬しているようには到底見えません。
バンダーホフは「働くこと」そのものを否定している訳ではありません。
「何が大切か」を問いかけているのですね。
「よう、ダンスを教えてやろうか」
頑固じじいはさておき(弱者にとって善人であることは間違いないです)、特にストーリー上めっちゃ重要ではないけど大好きな場面がこちら。
トニーとアリスがデート中ベンチに腰掛け話していると、子供達がぞろぞろとやってきます。

ダンス教えたろか?
10セントね(ごっつ上から)。
そう言われて子供達からダンスの手ほどきを受ける2人。大人顔負けのダンスを披露する子供達。
フランク・キャプラっぽくてすごく好きです。平和で愛しい夜に思わず顔がほころんでしまいます。

完全に落ちが読めるラスト
ある日様々な悪条件が重なり、バンダーホフ一家は全員逮捕されることになります。結婚の挨拶にたまたまバンダーホフ家を訪れていたカービー一家も同罪とみなされ一網打尽。
有罪となり高額な罰金を請求されたバンダーホフ一家を救ったのは、彼らを愛する人々。裁判を傍聴していた人々は、その場で出せるだけのお金を寄付していきます。

同じくフランク・キャプラの監督作品【素晴らしき哉、人生!】と被ってるこの展開。
まあ、完全に読めます。
1946年/アメリカ/監督:フランク・キャプラ/出演:ジェームズ・ステュアート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア、ヘンリー・トラヴァース、トーマス・ミッチェル、ボーラ・ボンディ、ワード・ボンド注※このサイトは映画のネタバレ[…]
たまたまその場に居合わせただけとはいえ、拘置所に入れられるという不名誉をこうむり激昂したアンソニーとバンダーホフ家は決裂、アリスは裁判後行方をくらまし、父に失望したトニーは会社を辞め家を出ていきます。
この後の展開も完全に読めます。
推理小説とかの落ちが全然読めず、いつもラストで鳩が豆鉄砲ばりにびっくりする羽目になる私でも、読めます。
しかし涙が出るほど感動するんです。私なんかは100%泣きます。先が読めてるのになんで涙が出るのかは分かんないです。もともと感動屋さんではあるんですけど。絶対泣けてきます。
ラストシーンに名セリフとかないしね。
ただ2人のおっさんがハーモニカ吹いてるだけ。
でも熱くこみ上げてくるこの気持ちは一体なんなんでしょう。
泣ける理由の一つはこれかな。アンソニーの心が解けた瞬間の破顔一笑のこの表情。

この表情だけでそれはもう泣けてくるわいな。
映画【我が家の楽園】の感想一言

最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。