1934年/アメリカ/監督:フランク・キャプラ/出演:クラーク・ゲーブル、クローデット・コルベール、ウォルター・コノリー、ロスコー・カーンズ、ジェムソン・トーマス/第7回アカデミー作品・監督・主演男優・主演女優・脚色賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
モノクロ映像でも差し障りなく観ることができますが、最新の技術を使ってカラーにしたりはできないんですかね?
もし修正に莫大なお金がかかったとしてもそれだけの価値があると思うんだけど。
第7回アカデミー賞主要5部門(最優秀作品・監督・主演男優・主演女優・脚色)を独占し、数々の映画にも影響を与えたクラシック映画の名作、【或る夜の出来事】です。
映画【或る夜の出来事】のあらすじザックリ
わがままな富豪令嬢の逃避行
豪華なヨットの一室で言い争う父と娘。
銀行家で富豪のアンドリュース(ウォルター・コノリー)とその令嬢エレン(クローデット・コルベール)。
エレンはアンドリュースの反対を押し切ってプレイボーイのパイロット、ウェストリー(ジェムソン・トーマス)との結婚を強行し、結婚の取り消しを迫るアンドリュースによって海上に軟禁されています。
現段階ではアンドリュースがこの結婚に反対する理由は「あの男はいけ好かん!」ってゆー説得力のないものなんですけど、最終的には「ただの頑固親父じゃなくてちゃんと娘の幸せを願ってのことだったのね」と納得できますのでご安心を。
アンドリュースとの口論の果てに、服を着たまま海に飛び込み泳いで逃げるじゃじゃ馬エレン。
ボートで追ってるのに彼女を取り逃がす使用人たち。大の男がそろいもそろって何やってんねん。クビ。
「軽薄」が服着て歩いてる新聞記者ピーター・ウォーン
エレンはウェストリーの待つニューヨーク行きの夜行バスに乗車中、クラーク・ゲーブル扮する新聞記者ピーター・ウォーンに出会います。
モノクロ映像でも“キング・オブ・ハリウッド”と呼ばれたクラーク・ゲーブルのオーラと渋みはあふれ出ちゃう。
クラーク・ゲーブルが演じた中で最も有名な役柄は【風と共に去りぬ】のレット・バトラー様だと思いますけど、私は【或る夜の出来事】のピーターの方が軽口を叩ける分だけ(ホントに僅差で)好きです。
1939年/アメリカ/監督:ヴィクター・フレミング/出演:ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル、レスリー・ハワード、オリヴィア・デ・ハヴィランド、トーマス・ミッチェル、ハティ・マクダニエル/第12回アカデミー作品・監督・主演女優・[…]
クルクルと頭と口がよく回り、いつも人を出し抜いて煙に巻き、つかみどころがなく飄々としているピーター。
ところが人妻であるエレンが気になり始めてからの彼ときたら、余裕からくる饒舌さもどこへやら、どんどん不機嫌になって恋したエレンにまで八つ当たりしてしまうという体たらく。
このツンデレ加減がたまりませんよ。
ジェリコの壁とヘイズ・コードとエレンの脚
夜行バスで隣の席になった2人。
これから始まるのはどんな困難な状況もその巧みな話術(悪く言えばただの二枚舌)で乗り切るピーターと、はねっ返りで口応えばかりするエレンの、極めつけに面白くてロマンティックな珍道中。こんなウィットに富んだおしゃれな会話ができる彼氏ほしい。
【或る夜の出来事】が製作された当時、ハリウッドにはヘイズ・コードという規制があって、性的描写や暴力描写が厳しく禁じられていました。
キスシーンは3秒以内でないとダメとか恐ろしい決まりがあったんですってよ。どうやってラブロマンス映画を撮れとおっしゃるんですかね?
しかしこのヘイズ・コードが、想定外にこの名作【或る夜の出来事】を生み出すことになります。
例えばピーターとエレンが2人でモーテルに泊まる際の「ジェリコの壁」。
“壁”と言ってもこれはピーターが部屋の中央に渡した紐に毛布をかけただけの、いわば「2人の貞操概念」。
ピーターはこの毛布を聖書に出てくる不落の城壁「ジェリコの壁」に例え、逃亡中2人でモーテルに宿泊する時には必ずお互いのベッドを隔てます。何しろ相手は一応人妻だからね。
逃避行の間中2人の恋路を隔て続けるジェリコの壁は、最終的にウェストリーからエレンを奪うことに成功したピーターが義父アンドリュースに「壁を崩していいですか?」と訊ねて毛布が落ちるというユーモアたっぷりのカットでもってハッピーエンドを表現するのに一役買っています。
ヘイズ・コードがなければこのカットは、例えばありきたりにピーターとエレンが熱い口づけと抱擁を交わしてはい終了!だったかも知れません。
2人がヒッチハイクをする場面では、散々ピーターが親指を立てまくっても1台も停まらなかった車が、エレンがちょっと脚見せただけで「うひょ~っ!」とばかりに急停車。
思春期真っ只中の小中学生が運転してる訳じゃあるまいし、べっぴんさんがちょっと脚出したとて実際こんなことはあり得ない。
しかしある意味この名シーンもヘイズ・コードのお陰で生まれたと言えないこともない。
そして製作者らが男女の恋をセックスなどで直接的に表現するのではなく、そこに至るまでの過程に重点を置いた結果産まれた最たるものが、【或る夜の出来事】に代表されるスクリューボール・コメディというジャンルです。名作を産み出すだけでは飽き足らず1つのジャンルまでも産み出してしまうとは…ヘイズ・コード恐るべし。
参考 スクリューボール・コメディ=映画のジャンルの1つ。ストーリーの多くは常識外れで風変わりな男女が喧嘩をしながら恋に落ちる内容。
【ローマの休日】も【卒業】も…オマージュがすごい
オードリー・ヘプバーンの人気を不動のものにした【ローマの休日】の「逃げ出した王女様」と「一介の新聞記者」という設定や、ダスティン・ホフマンが主演した【卒業】の「結婚式に乱入して花嫁を奪って逃げるラストシーン」など、後世の名画にも大きな影響を与えた作品です。
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映画【或る夜の出来事】の感想一言
「モノクロ映画なんか観ねえし!」とか言わないでください。
いざ観始めてみると面白すぎてカラーじゃないことなんて忘れてますよ?
しかしカラーライズ化はして欲しい…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。