1953年/アメリカ/監督:ウィリアム・ワイラー/出演:グレゴリー・ペック、オードリー・ヘプバーン、エディ・アルバート、ハーコート・ウィリアムズ、マーガレット・ローリングス/第26回アカデミー主演女優・原案・衣裳デザイン賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

初老と呼ばれる年齢に突入し、ゴリラ(夫)と手をつないで外出することもなくなり、子供の成長と映画だけが生き甲斐になった今、こんな甘いラブロマンス観たって若い頃みたいに泣くどころかこっぱずかしくて笑ろてしまうわ、くらいに思ってたんです、観る前。
いやいや、あかんあかん泣く泣く。
こんなもん絶対あかんよ。
泣くでしょ普通。
いやあ~つくづくすごい映画です。
【ローマの休日】です。
映画【ローマの休日】のあらすじザックリ
王女が24時間だけ庶民の生活を満喫する物語

何時間も真っすぐ立ってるってだけでももうしんどいよ初老は。
その上愛想振りまいてさ。気の利いた言葉選んでさ。豪華な衣装も窮屈でしょう。高いヒールの靴も痛いでしょう。やりたいこともできないし、いつでも衆目にさらされて落ち着かないし…。

王女なんかやってられるかゴルァ~!
そりゃこんな風になることだってありますよ。
ヨーロッパ諸国を親善旅行中の某国の王女アン(オードリー・ヘプバーン)がプッツン切れて、真夜中に大使館を抜け出してしまうことから物語は始まります。
道路で寝てるアン王女と王女を転がす新聞記者ジョー
改めて観ると結構酷い…というか色んな意味でギリギリの描写がある映画だったんですね。
まず大使館を出たアン王女はなんと、直前に打たれた鎮静剤のせいで道路で寝てます。

道路というか橋の欄干というかベンチというか。
幸いにもたまたま通りかかったグレゴリー・ペック扮する新聞記者ジョー・ブラッドリーに見つけてもらえて、彼が紳士だったから事なきを得たワケですけど、これ一歩間違えれば大事件ですよ。王女の強姦とか誘拐とか殺害とか、シャレにならん。
王女を拾ったジョーもよく観るとまあまあ無茶な御仁でしたね。
名前も住所も分からない面倒な少女を自宅アパートに連れて帰ってくれるなんて優しい…!と安易に思ったら大間違い。
ジョーは先にベッドで寝てしまったアンを、布団ごとバッサーってやって隣の長椅子に転がすんです。

そして自分がベッドに入ってぬくぬく。
…あーそんな感じ?
なんか勝手に、アンにベッドを使わせてジョーが固い長椅子で寝てあげてるイメージやったわ。
スクープ(金)のために王女を利用しようとしたことにしても、よく考えたら世界的ラブロマンスのヒーローとしてはあり得へんけどね。色んな人に借金し倒しだし。ギリギリ。ご愛敬。
ベスパに乗ってはしゃぐ姿や「真実の口」でのオードリーの可憐さは異常
翌日、ただの酔っ払っいだと思っていた少女が実は王女だと気づいたジョーは、アンをなんとか足止めし、スクープを狙って一緒にローマの街の散策に出ることに成功。
スペイン広場やコロッセオなど、ローマの有名観光地を回る2人を描いた名場面の数々。
中でも特に有名なベスパを運転するシーンや、「真実の口」でのジョーとのじゃれ合いのシーンでのアンは、一瞬で万人を虜にしてしまう可愛らしさ。
美しいのはもちろんだけど、その無邪気な飾らなさも最高。
アンはジョーを後ろに乗せて生まれて初めてベスパを運転します。よろめくベスパに危険を感じたジョーが後ろから慌ててハンドルを握ろうとすると、その手をはたき落とすんですよアン。
「私が運転します!」って。
根性あります。よっぽど楽しかったのが伝わってくる名場面。
その後警察に捕まってシューンとしてるのも、あざとさを通り超して3周くらい回ってやっぱり信じられないくらい可愛い。

「真実の口」で手がなくなったジョーを見てアンが目ん玉ひんむくシーンは、オードリー・ヘプバーンの自然な演技を引き出すためのウィリアム・ワイラー監督とグレゴリー・ペックの謀略であったことは有名ですね。
このシーンのオードリー・ヘプバーンは、演技じゃなくてホントにビックリしてるんです。


いやいや!嫌い!
ホントに手がなくなったと思ったじゃない!
しかし素でこんなセリフ出るかね?(原文知らんけど)
いいですか女子のみなさん。
男を虜にするには「いやいや!嫌い!」ですよ。
アービングのオイルライター型カメラは実在する
ちなみにジョーの相棒のカメラマン、アービング(エディ・アルバート)がアンの隠し撮りに使っているオイルライター型カメラは、実在する日本製の「エコー8」という製品。
映画と同じくホントに火も点くんですって。

【ローマの休日】で一躍有名になったようですけど、開発用途はなんだったんでしょうね?
諜報活動?
【博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて原爆を愛するようになったか】でソ連大使が懐中電灯に内蔵されたカメラでスパイ行為してたの思い出した。
1964年/アメリカ、イギリス/監督:スタンリー・キューブリック/出演:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン、スリム・ピケンズ、キーナン・ウィン、ピーター・ブル注※このサイトは映画のネタバレしよ[…]
ラストで結局ヤったのかヤってないのか
【ローマの休日】でよく取り沙汰されるのが「結局ジョーとアンはセックスしたのかしてないのか」ってことですけど。

映画が公開された1950年前半頃は、後期とはいえまだまだヘイズ・コードの規制の只中にあったため、さらっと観てたら2人がヤってるとは到底思えない感じに作られています。
キスをして、アパートに戻って服を乾かして、夢のような1日は、終わり。
でもその後の展開から言って、ここで2人がセックスでもしてないことには、別れる時の切なさの説明がつかない。
最後の記者会見の時の締め付けられるような感情の理由付けができない。
二度と会えない人を好きになってしまっただけではあれほど切なくないでしょうよ。
生まれて初めて男性に身を任せたというのに、次の瞬間にはもう一生会えないという現実が待っている。
こうでなければあれほど切なくないでしょうよ。
よって私は、この夜アンとジョーは愛を確かめ合っていると思っています。
参考 ヘイズ・コード(映画製作倫理規定、プロダクション・コード)=1934年から1968年まで導入されていたアメリカ合衆国の映画における検閲制度。「キスは3秒以内」など厳しい制約があった。
「素敵なキッチンのある部屋へ引っ越そうかな」
大体、女が男に「何か作りましょうか?」なんて言うのはもうお互い知れた仲だってことですよ。
王室で料理の教育を受け一流コック並みの腕前を持つアンですが、それを披露する機会はないと言います。
ここで手料理を振る舞いたくてもジョーのアパートにキッチンはありません。
この時のジョーのセリフが一番泣けます。

「君の手料理を食べるために引っ越そうかな」?
こんなもん、プロポーズですよ。
貧乏新聞記者が一国の王女に精いっぱいのプロポーズをしとるんです。
キッチンつきのアパートに引っ越して一緒に暮らす…そんなこと不可能だって分かってるけど、愛してるんですよ。
結婚したいと思うほどに。
よく言われることですけど、人って思い出だけで生きていけるんですかね?
「忘却の生き物」って、ホントに?
そういえば名画【カサブランカ】でハンフリー・ボガートも、イングリッド・バーグマンと別れる時に「君と過ごしたパリの思い出がある」とか言ってましたね。
1942年/アメリカ/監督:マイケル・カーティス/出演:ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、ポール・ヘンリード、クロード・レインズ、コンラート・ファイト/第16回アカデミー作品・監督・脚色賞受賞注※このサイトは映[…]
ホンマかいな?
思い出って美味しい?
つらくない?
スペイン広場でアイスクリームを食べ、ベスパに乗って街を滑走し、ギターで秘密警察の頭を殴り、川でずぶ濡れになりながらキスをした、一生に一度きりの思い出があれば、それだけで生きていけるものなのでしょうか。

ひとり物思いにふけりながら王女の会見場をあとにするジョーから漂う哀愁がたまりません。
とりあえずアービングと大家のジョバンニに借金をお返しなさい。
映画【ローマの休日】の感想一言

これはあかん。
ホンマにあかん。
一家に1本【ローマの休日】!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。