1964年/アメリカ、イギリス/監督:スタンリー・キューブリック/出演:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン、スリム・ピケンズ、キーナン・ウィン、ピーター・ブル
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
なんなんですかね、このおもろくてしゃあない感じ。
「ブラック・コメディ」って、時事や政治を把握してなければ理解しがたかったり、日本人には伝わりにくかったりするものもありますけど、総じて私は好きな作品が多いです。
中でも最も好きと言ってもいい映画がこれ。
米ソ冷戦時代が舞台ですが戦争映画ではなく、【2001年宇宙の旅】、【時計じかけのオレンジ】と合わせて「スタンリー・キューブリックのSF3部作」と呼ばれるSF映画、【博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか】(長いんで、以下【博士の異常な愛情】とします)です。
映画【博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか】のあらすじザックリ
要するに思春期の頃と同じ発想
思春期の頃って、先生とか見て笑うのめっちゃおもろかったですよね?
欠点とか下ネタとかエロとかもうテッパン。思春期の彼らは朝礼で校長先生のヅラがずれとっただの、体育教師が屁こいただの、保険医の首筋にキスマークがついとっただのと言っては爆笑しておる訳ですよ。
でも例えば、私がヅラでも屁こいてもキスマークつけてても絶対おもろないんです。
本来であれば隙がないはずの「偉い人」がちょっとアホなことをしでかし、そして見つからないようにコッソリ笑いものにするからこそ面白く感じられる訳です。
要はこの心理と一緒で、【博士の異常な愛情】はアメリカ・イギリス両軍将校やロシア大使や高名な科学者、果てはアメリカ大統領(≒アメリカ政府)に至るまで、「偉い人」を痛烈に風刺しているからこそ庶民の密かな笑いを生んでます。
なんしか出てくる偉い人全員がおちょくってんのかって思うくらい頭のイカレれたアホばっかり。そのアホさ加減ときたらオープニングでアメリカ合衆国空軍がわざわざ宣言をしなければならないほど。
実際にはこんなこと起こらへんからご安心ください。
出展:【博士の異常な愛情】字幕
あ、分かってます。ご丁寧にどうも。
ホントにこんな事態になってたら地球終わってますやん。大国の首脳部がこんなアホばっかりだと思いたくないわ。
1人3役をこなした喜劇俳優ピーター・セラーズ
【博士の異常な愛情】の主要なおもろい人物を3役もこなすのは、私の大好きなピンクパンサーが登場する映画「ピンクの豹シリーズ」でクルーゾー警部を演じた喜劇俳優ピーター・セラーズ。
トム・ハンクスやジム・キャリーやロビン・ウィリアムズ、古くはチャールズ・チャップリンやジャック・レモンなど、ホント世界的なコメディアンって多芸すぎて笑うしかない。
その①マンドレーク大佐
「ピーター・セラーズその①」は、【博士の異常な愛情】の中で唯一グッジョブを見せるマンドレーク大佐。
すべての発端となるソ連への核攻撃命令が頭のイカれたリッパー准将(スターリング・ヘイドン)の独断であることにいち早く気付き、リッパー准将の説得と核攻撃阻止を試みる常識人。
水道水にフッ素が混入しているのはソ連の陰謀だという妄想に取りつかれているリッパー准将が書いたワケの分からんメモ書きから攻撃中止の暗号を解読する推理力もお見事。
基地の公衆電話から大統領にコレクトコールで電話をかけようとして断られた時も、近くにあった自動販売機を破壊して小銭を調達するという機転を利かせます。
でもさすがに公衆電話の受話器を取って何やら番号を回し、
大統領につないでくれ。
と言い出した日にゃあ、
あかん!
コイツも頭おかしなった!
っと一瞬よぎりますが、ちゃんと電話は大統領につながって攻撃中止の暗号を伝えることができます。グッジョブ!
て んなアホな。
その②アメリカ大統領
「ピーター・セラーズその②」はハゲ散らかしつつ事態の収拾をはかるアメリカ大統領。
「一番の常識人はマンドレーク大佐よりアメリカ大統領なのでは?」と思うのも束の間、ソ連首相とのホットラインの会話を聞いているとまるでバカ。
保守的なアメリカ大統領と意見を違えるのは緊急呼び出しで駆け付けたものの早く愛人秘書が待つベッドに戻りたいダージドソン将軍(ジョージ・C・スコット)。
まず重大会議中のガムと私用電話をやめい。
首脳陣が会議室で遊んでいる間にも攻撃中止の暗号を受信することができなかったB52から血気盛んなカウボーイハットのコング少佐(スリム・ピケンズ)を乗せた核爆弾が投下され、地球滅亡のカウントダウンが始まります。
その③ストレンジラヴ博士
100人いたら80人が作中で一番好きなキャラクターに挙げるんじゃないでしょうか?
少なくとも私はその8割に入ってます。
「ピーター・セラーズその③」は一応【博士の異常な愛情】の主人公であるドイツ人科学者ストレンジラヴ博士。
挙動がいちいちおかしい。
おかしくない挙動がない。
口元には常にニヤニヤといやらしい薄ら笑いを浮かべ、仰々しい車椅子に乗り、室内なのに濃いめの色眼鏡をかけ、右手にはなぜか黒い手袋をはめています。オマケに髪のうねりが気持ち悪い。
変なのは見た目だけで発言はまともなのかも?
はい残念。
小難しく言い回していますが、とどのつまりストレンジラヴ博士が考えているのは「性的な魅力あふれる女性達(複数)との子孫繁栄」と「ヒトラー総統」のことだけ。
酒池肉林の地下帝国の構想にテンションMAXとなったストレンジラヴ博士は、抑えきれない衝動によって、こともあろうにペンタゴンの戦略会議室で「ハイル・ヒトラー」をやらかします。
ラストでソ連大使は何やってんの?
そんなアホ構想の傍らでなにやら怪しい動きをしているソ連大使…。
アメリカ人がアホ構想に盛り上がっている隙をついて懐中時計に内蔵された小型カメラでこっそりペンタゴンの内部を撮影しているようです。執念のスパイ根性。
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てゆーか…
今「地球滅亡かも」とかそんな話してんのに、ペンタゴンの隠し撮りとか意味なくね?
あこいつもアホやったんや、忘れてた。
カット賛成!自粛してくれてよかった
【博士の異常な愛情】は本来、「ペンタゴンの戦略会議室で首脳陣がパイ投げをする」という場面で終わる予定だったそうです。
いややめてやめて、
やりすぎ。
カットしてくれてよかった。お陰で絶妙な塩梅で幕を閉じますよこの映画は。
映画【博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか】の感想一言
いやあ~…
暁に綺麗なキノコ雲やんかあ~…。
て 人類滅亡しとるがな!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。