1940年/アメリカ/監督:チャールズ・チャップリン/出演:チャールズ・チャップリン、ポーレット・ゴダード、ジャック・オーキー、ヘンリー・ダニエル、レジナルド・ガーディナー、ビリー・ギルバート
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

バスター・キートン、ハロルド・ロイドらと並んで“世界三大喜劇王”と讃えられるチャールズ・チャップリン。
彼が携わった数々の映画の中でも、ビジュアルだけなら一番有名かも知れません。
先に書いておきますけど私はチャーリー(※チャールズ・チャップリンの愛称)の映画をレビューするのが嫌いです。
なぜなら何をどう書いたところで実に100年以上も前から活躍する彼や彼の作品についてはすでに世界中で語り尽くされているし、サイレント時代の彼の“笑い”と“哀愁 ”の表現方法はほぼリアクション芸であるため、どうやってレビュー書いたらええか分からへんから(トーキーになってからは少しマシ)。
どなっしょうもないんやでこのちょびヒゲのおっさんは。
愛してるよチャーリー、【独裁者】です。
映画【独裁者】のあらすじザックリ
【独裁者】公開時の時代背景
ご存知のとおり【独裁者】はナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーを痛烈に風刺した映画です。

若い頃私は、この映画はヒトラーの死後に作られたものだと漠然と思っていました。
だってヒトラー(及びナチス・ドイツ)を無茶苦茶おちょくってるんですよ?
ヒトラー本人の演説を徹底的に研究した上でやたらに誇張してみたりとかね?その演説のあと階段からすっ転んだりね?バナナの皮踏んですっ転んだりね?(※そんなシーンはない)
こんな映画が製作されたことを知ったらヒトラーが黙ってるはずがないと思ったし、知っていたとしたらチャップリンなんかあっという間に消されているはずだと思ってたんです。

でもヒトラーがドイツで政権を獲得したのが1936年で、映画が公開されたのが1940年(日本公開は1960年)。
ガッツリ被っとるんですよね。

一説によるとヒトラーは【独裁者】を3回も観たとも言われています。
どう思いながら観てたんでしょうね?部下の前では怒ってみせるけど独りの時はコッソリ笑ってたりしてね。
アドルフ・ヒトラーと誕生日が4日しか違わないチャップリン
大体にして同じ1889年生まれのアドルフ・ヒトラーとチャールズ・チャップリンは、誕生日もたった4日違いの4月20日(ヒトラー)と4月16日(チャップリン)。
「後世の人間が安全地帯でおちょくってる」んじゃなくて、「バリバリ同時代を生きている人間が世界一の独裁者をおちょくってる」んです。

知れば知るほど偉大な映画だってことが分かりますよね。



ああごめん、水野氏のあのセリフを使いたかったんやけどチャップリンと云えばここはやっぱりチョージさんを出しとかなあかんかなと思って。
【独裁者】ラストのチャップリン大演説全文
【独裁者】と云えばラスト4分のチャップリンの大演説。
胸が熱くなる日本語字幕全文をここに記載します。英文字幕も一緒に書き取る根性はありませんでした、ごめんなさい。
俯きがちな目線で小さな声を絞り出すように始まり、次第に大きな声で拳を振り上げるに至る大演説。
【独裁者】をご覧になった方はこの名場面を思い出しながら、未視聴の方はチャップリンの名演を想像しながらお読みください。
©The Great Dictator/独裁者より引用 すまない
私は皇帝になりたくない
支配するよりも人々を助けたい
ユダヤ人も黒人も白人も人類とはお互い助け合うもの
他人の不幸よりも幸福を望み憎しみあうべきではない
(以下引用文の出典はすべて【独裁者】字幕)
地球には全人類を包む豊かさがある
自由で美しくあるべき人生は貪欲により汚され憎悪が世界を覆い流血と惨めさが残った
スピードが自由を奪った
機械により貧富の差がうまれ知識を得た人類は優しさをなくし感情を無視した思想が人間性を失わせた
知識より大事なのは思いやりと優しさ
それがなければ機械も同然だ
航空機やラジオは世界を縮めそれは人類の良心に呼びかけ世界を一つに導くことが出来る
私の声は世界中にひびき絶望の淵にいる人々へ届く
彼らは支配体制の無実の犠牲者である
©The Great Dictator/独裁者より引用 人々よ 絶望してはならない
貪欲にもたらされた荒廃も人類の発展を憎む心も独裁者の死と共に消滅する
民衆は権力を取り戻し自由は再び人々の手に!
兵士よ 良心を失うな!
独裁者に惑わされるな!
君たちは支配されまるで家畜のごとく扱われている
彼らの言葉を信じるな!
彼らには良心も人間性もない!
君達は機械ではなく人間なのだ!
人を愛することを知ろう 愛があれば憎しみは生まれない
兵士よ 自由のために戦うのだ!
©The Great Dictator/独裁者より引用 “神の王国は人間の中にある”
君の中にも!
人々の中にも!
総てを創造する力は君たちの中にあるのだ!
自由で希望に満ちた世界を!
民主主義の名のもとに一つに団結しよう!
新しい世界のために戦おう!
雇用や福祉が保障された世界のために!
独裁者たちも同じ事を言った だが口先だけで約束を守らなかった 彼らは思い通りに人々を操った
約束を果たすために戦おう!
世界の解放のため国境を越え愛のある世界のために戦おう
良心のために戦おう!
科学の進歩が全人類を幸福に導くように
兵士よ 民主主義のために団結しよう!
(歓声)
©The Great Dictator/独裁者より引用 ハンナ
聞こえるかい?
顔を上げるんだ
雲が晴れていく
太陽が輝き 辺りを照らし始めた
人類が新しい世界に そこには貪欲も憎悪も野蛮さもない
見上げてごらん
©The Great Dictator/独裁者より引用 人間の魂には翼があったんだ
いま飛び始めた
虹の中にも飛び始めた
未来の希望の光に向けて 希望に満ちた未来が我々人類のもとに
だから上を見てごらん
映画【独裁者】の感想一言
私はこの大演説の中でも、群衆に語りかける前半よりハンナだたひとりに語りかける後半部分の方が好きです。これ聞くと一気に泣けてきます。
前半だってもちろん素晴らしい内容だし、チャップリンの抑揚ある演技も流石です。でもやっぱり言ってる事のスケールが大きすぎて想像力が追い付かない。誰だって親兄弟や愛する人のためならどんなことでもするけど、「世界平和のために募金して」って言われたら例え100円だろうが渋りますやん?
後半にも「人類」とか「太陽」とかスケール感のある単語は出てくるものの、飽くまでもこの部分はハンナのためだけに囁かれていて、前半の演説とは打って変わって「ただ自分が愛する人に上を向いていて欲しい」と云うごくシンプルで懐かしい感情にあふれてる。
これなら分かる。
分かるよね?
あの大演説のあとにこのほのぼのとした身近で優しい「囁き」を持ってくるチャップリンはやっぱり天才だと思います。
参考 ハンナ(ポーレット・ゴダード)=チャップリン扮する“床屋”が愛する威勢の良い女性。演じたポーレット・ゴダードはこの時、私生活でもチャップリンのパートナーだった。
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