1962年/アメリカ/監督:ジョン・フォード/出演:ジョン・ウェイン、ジェームズ・ステュアート、リー・マーヴィン、ヴェラ・マイルズ、エドモンド・オブライエン、アンディ・ディヴァイン、ジョン・キャラダイン、ケン・マレー
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
「男らしい男」って駄目ですか?
最近は共働き夫婦も増えて家庭での男性の役割も変わってきましたけども、私はやっぱり台所に立ったこともないような男性をカッコいいと思います。しっかり働いてくれれば家事なんて一切してくれなくていいです。
こういうのはもう時代遅れなんでしょうね。
今の若い女の子は例えば男臭い西部劇のヒーロー、ジョン・ウェインなんかを観ても「カッコいい!」とは思わないのでしょうか。
デューク(※ジョン・ウェインの愛称)は絶対料理なんて作ってくんないし、突然雨が降り出しても洗濯物も取り込んでくんない。風呂の給湯スイッチさえ押してくんないことでしょう。酒は飲むしタバコは吸うし帰りは遅いし…。
…分からんわな、そんなあれやこれやを差し引いても無条件にカッコええのがデュークの魅力なんやけど、それを活字でどう表現したところで伝わらんわな。
まあほんなら試しにいっぺん観てみてえな、デューク主演の西部劇。
【リバティ・バランスを射った男】なんかどうよ、夫婦で家事分担を希望する現代女子だって男らしいデュークにメロメロになると思うよ?
映画【リバティ・バランスを射った男】のあらすじザックリ
銃を持たずにやってきた弁護士が西部を変える
アメリカ映画界における「西部劇」というジャンルは1910年代にはすでに確立されていたそうです。
1903年/アメリカ/監督:エドウィン・S・ポーター/出演:ギルバート・M・アンダーソン、A・C・エイバディ、ジョージ・バーンズ、ウォルター・キャメロン注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてま[…]
その後1950年代までは順調に量産されたものの、1960年代に入ってTVで西部劇が放送されるようになると映画の西部劇は少しずつ衰退。
一般的には共に1969年公開の【明日に向って撃て!】や【ワイルドバンチ】などが「最後の西部劇」と言われたりします。
1969年/アメリカ/監督:ジョージ・ロイ・ヒル/出演:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス、ストローザー・マーティン、ジェフ・コーリー、ジョージ・ファース/第42回アカデミー脚本・撮影・作曲・主題歌賞受賞[…]
1969年/アメリカ/監督:サム・ペキンパー/出演:ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアン、エドマンド・オブライエン、ウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソン、ジェイミー・サンチェス注※このサイトは[…]
「最後の西部劇」の公開まであと7年もあるとは言え、本日の映画【リバティ・バランスを射った男】はすでに「西部劇の終焉」を感じさせます。
だってかつての西部劇であれば絶対的ヒーローであったはずのガンマン(牧場主)、トム・ドニファン(ジョン・ウェイン)が敗残者となってしまいますから。
地位も名誉も愛しい女も手に入れる勝利者は、法の知識があるだけで銃もまともに使えない弁護士のランス・ストッダート(ジェームズ・ステュアート)。
鞄ひとつ抱えて「銃」がものを言う荒々しい西部の町シンボーンへやって来たよそ者のランスは、のちにその教養とクソ度胸で町に秩序をもたらすのです。
保安官も避ける無法者リバティ・バランス
シンボーンの町民なら誰もが知る無法者の名前が映画のタイトルにもなっているアホのリバティ・バランス(リー・マーヴィン)。
もう無茶苦茶。
いやまあ“無法者”言うくらいやからね、無茶苦茶で正解なんやろうけど、ホンマに無茶苦茶。圧倒的悪者。とりあえず飲み干した酒瓶はどっかの民家の窓に投げつけるのがスタンダード。
それでいて丸っきりのバカってワケでもなく、銃にかけては町民達から一目置かれる牧場主トムに匹敵するほどの腕前らしい。シンボーンの保安官アップルヤード(アンディ・ディヴァイン)でさえ報復を恐れてかアホのリバティ・バランスの暴挙を見て見ぬふりするしかない。
あーそうか、私ずっと「トムがアホのリバティ・バランスを射ったらええやん」って思ってたんですけど、力が拮抗 してるから敢えて避けてたってことなんですかね。「本気でやり合ったら絶対どちらかが死ぬからそれなりの覚悟と動機が要る」みたいな。
この2人は最後まで正面切って対決はしませんから。
西部の掟「自分の身は自分で守れ」
乗り合い馬車で西部へやってきた大学を出たばかりのランスは、シンボーンの町の近くの山中でアホのリバティ・バランスの一味に襲われます。持ち物を何もかも奪われた上にボッコボコにされてぶっ倒れているランスを助けたのがトムでした。
トムと彼の従者ポンペイ(ウディ・ストロード)は、シンボーンの町の食堂へランスを運び込みます。
この時トムはよそ者のランスに、西部で生きて行くための心得を教えてくれます。
ここでは銃がないと話にならへんぞ。
自分の身は自分で守れ。
はい、これが今までの西部劇。
いいですか?
銃で無法者を駆逐するなんてよく考えたらどっちが無法者か分かったもんじゃないけどカッコええからまあええわって言うのが、今までの西部劇ね、OK?
秩序が生まれて不要になる者
ところがよ、さっきも書きましたけど、【リバティ・バランスを射った男】の勝利者はガリ勉(ガリ勉て)のランスなんですよ。
ランスはピーボディ氏(エドモンド・オブライエン)が編集長を務める新聞社を間借りして法律事務所の看板を掲げます。
相変わらずアホのリバティ・バランス率いる無法者軍団は好き放題やってるし、彼らの暴挙に対して誰も相談に訪れたりはしないんですけどね。それでもランスはシンボーンの町に法律事務所を開業する。
ランスを目の敵にしているアホのリバティ・バランスの挑発には目もくれず、町を訪れる人々が山賊に襲われることがないよう鉄道を敷く運動に尽力し、「準州」だったこの地を「州」に格上げするための努力を惜しまない。
こうしてランスは無法地帯だったこの町に少しずつ秩序をもたらすワケですよ。
ね?
そして法によって統治された世界には当然 無法者は不要。
でしょ?
でもそれってつまり、同時に「力(銃)で無法者を抑え込んでた者」も不要になるってことなんですよね?
そういうお話なんですよ。
いやだデューク!
行かないでーっ!
映画【リバティ・バランスを射った男】の感想一言
トムは威勢の良い食堂の一人娘ハリー(ヴェラ・マイルズ)に想いを寄せていて、彼女と結婚して一緒に暮らすための部屋まで増築していたんです。
それなのにハリーがランスに惹かれていることを知って潔く身を引く男らしさは、ハードボイルドの代名詞【カサブランカ】のリック・ブレイン(ハンフリー・ボガート)にも共通するものがあります。リックはもっとキザだけど。
「男らしさ」と言えばこのトムという巨漢、大好きなハリーに「サボテンの花 」を贈るんですよ。
包み紙もリボンも何も無し、掘り返した土が根っこにくっついたままの「サボテンの花」。
色気もへったくれもあったもんじゃないでしょ?
でもこれこそ「『男らしい男』の所業」と言っていいんじゃないの?
綺麗な花束じゃなくても家事手伝ってくれなくても、こんな風にふとそこら辺のサボテンの花を贈ってくれる不器用な男って衝撃的にカッコええやん。
ちゃう?
1942年/アメリカ/監督:マイケル・カーティス/出演:ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、ポール・ヘンリード、クロード・レインズ、コンラート・ファイト/第16回アカデミー作品・監督・脚色賞受賞注※このサイトは映[…]
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