1972年/アメリカ/監督:ロナルド・ニーム/出演:ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、キャロル・リンレイ、シェリー・ウィンタース、ロディ・マクドウォール、ステラ・スティーヴンス、ジャック・アルバートソン、パメラ・スー・マーティン、アーサー・オコンネル、レスリー・ニールセン/第45回アカデミー歌曲賞受賞
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!
1970年代に流行ったパニック映画(≒ディザスター 映画)の先駆け。
まあ大体においてこういう映画はお偉いさんの利権や見栄が引き金となって大災害を引き起こす。
【タワーリング・インフェルノ】の社長(ウィリアム・ホールデン)然り、【タイタニック】の船長(バーナード・ヒル)然り。
1974年/アメリカ/監督:ジョン・ギラーミン/出演:ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、スーザン・ブレイクリー、リチャード・チェンバレン、O・J・シンプソン[…]
1997年/アメリカ/監督:ジェームズ・キャメロン/出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、ビリー・ゼイン、デビッド・ワーナー、フランシス・フィッシャー、ダニー・ヌッチ、ビル・バクストン、グロリア・スチュアート、キャ[…]
本日の映画の“引き金君”は、客船「ポセイドン号」の船主。
「底荷 が足りないから高速で進むのは危険」と言う船長(レスリー・ニールセン)を振り切って全速前進命令。案の定大晦日に船は転覆。
自分は速攻死んでしまって生き残った人々のことなんて知ったこっちゃないのかも知れへんけどさあ、ひっくり返った船の内部を海面に向かって這い上がって行くのって大変なんやでマジで。
気ぃつけてや責任者、ホンマ。安全第一でな。
映画【ポセイドン・アドベンチャー】のあらすじザックリ
豪華客船は大抵無茶して沈没する
デカくて豪華だけど実はかなりの老朽船「ポセイドン号」でニューヨークからアテネへの旅を楽しむ乗客たち。
しかし大晦日の夜、乗客たちがホールで新年を祝って乾杯した直後、大波にのまれたポセイドン号は180度ひっくり返ってしまいます。
この時の衝撃で船長を含む船員や乗客はほとんど死亡。ついさっきまでニューイヤー・パーティで賑わっていた煌びやかなホールは、運良く生き残っても家具に挟まれたり天井へ叩きつけられたり割れたガラスが刺さったりして大怪我をしている乗客らがただただ呻 く地獄絵図と化します。
ホールが船の何階にあるのか分からないけど、生き残った乗客たちはポセイドン号が完全に沈没するまでに海上へ出るため、「船底」目指して船内を「登って行く」ことを余儀なくされるのです。
「ポセイドン・アドベンチャー」とはよう言うた
原作はポール・ギャリコの同名小説。
タイトル【ポセイドン・アドベンチャー 】とはよう言うたもんです。
逆さまになった船内を「船底」目指して「登る」彼らの物語は、まるで遊園地のアトラクションのよう。いやごめん、彼らにしてみたら生死かかってんのに不謹慎やけども。普通に何人も死ぬし。
でもね、壁に立てかけた2~3階くらいの高さのツリーをよじ登ったり、焦げた死体が転がる厨房を横切ったり、つるつるの階段(階段と言っても裏側だからもはや“ただの急斜面”)を這い上がったり、何分間も息を止めて水中を泳いだり、こんなアドベンチャー観てると「ちょっと面白そう…」とか「やってみたい…」なんて無責任なワクワクが頭をかすめてしまうんですよ。
逆さまになった船のセットも含めてCG一切不使用の映像には息を飲むけど、所詮スクリーンの前の観客なんて気楽なもんですわ。
危機的状況にあって人々を牽引する「強者」たち
やや群像劇っぽい【ポセイドン・アドベンチャー】。
体を売らせたくなくて6回も逮捕した元娼婦のリンダ(ステラ・スティーヴンス)とめでたく結婚して新婚旅行の真っただ中にあるマイク・ロゴ警部補(アーネスト・ボーグナイン)や、多忙な雑貨屋ジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)など、「船底」を目指す一行には“熱い男”が目白押し。
中でも一番熱いのが、ジーン・ハックマン扮するフランク・スコット牧師。
新婚旅行で浮かれるロゴと違って、スコット牧師の行き先は転属先のアフリカの新興国の教会。早い話が左遷 されていらっしゃる。
それと言うのも彼の説教が一般的な教会の説教とは趣が異なっているから。
スコット牧師は以下のような説教をするんです。
神は勝利者を欲していられるのですぞ!
神はためす人を愛していられるし、神はそのかたちの如くに人間を創りたもうたものであり、決してわざわざ人間を劣るように創りたもうたのではありません。
神は臆病者や、泣きごとを並べる人や、人にものを乞う人たちに用はないのです。あなた方がそうするように要求された一つひとつの試練は、そのまま一つの神を尊う行為なのですぞ!
自分自身を尊重し、自分自身のために立ち上がるのですぞ、そうすればあなた方は神を尊重し、神のために立ち上がることになるのです。
もし神があなた方を助けることができない場合があるとしたら、あなた方は自分には度胸があること、あなた方は自分の独力でそれをやりとげる意志のあることを神に知らせ、自分たち自身で戦いなさい。そうすれば、神は招かずともあなた方の味方になって戦って下さるでしょう。
あなた方が成功した場合、それはあなた方が神を受け入れたためなのであり、神があなた方の心の中にあるためなのですぞ!
もしその戦いをしりごみして避けたりなどしたら、あなた方は神を否定したことになるのですぞ!
出典:「ポセイドン・アドベンチャー」小説
映画ではここまでは聞かせてもらえないんですけど、いい説教だと思うんで原作小説からゴッソリ引用しました。
「弱者を救わない」って言うてんちゃうわ
要するに「自分らでける(=できる)人間やねんからしっかりせえ!」ってことでしょ?
裏を返せば「求めてばかりの奴は救われへん」とも受け取れる、元スポーツ選手(色んな競技やってる)という異色の経歴を持つスコットならではの体育会系寄りの説教ですから、万人には受け入れられないのかも知れませんけど、私はこの哲学には大いに共感できます。
しかしスコットがアメリカの教会を追われるということは即ちスコットの先輩にあたるジョン牧師(アーサー・オコンネル)も一部の信者も、(恐らく)スコットに転勤を命じた司教連中も、この考え方に異を唱えているということなんですが、いやいやいやいやちゃうやん、って思いません?
誰も「神は弱者を救わへん」って言うてんちゃうやん。
「“戦えば”神は救いに来てくれる」って言うてるやん。
勝敗はどないでもええからまずは「自分を信じて戦え」って言うてんちゃうの。
これの一体どこがあかんの?
実際スコットは作中で「君は強者の味方だ」って言われてしまうんですけど、神ってのは例えば船が沈没寸前のこの状況で、ナーンにもせずに祈ってるだけの人でも救ってくれるの?
戦う者に手を差し伸べて、祈ってるだけの人を見放さざるを得なくても、「強い奴しか救わへんのか」って皮肉られるの?
…牧師さんも大変やね、としか言えんわ。
なんか【サタデー・ナイト・フィーバー】にも似たような描写があったな。
主人公トニー(ジョン・トラボルタ)の兄貴フランク(マーティン・シェイカー)が牧師を辞めた理由のひとつに「救ってくれ!」の重圧があった気がする。
1977年/アメリカ/監督:ジョン・バダム/出演:ジョン・トラボルタ、カレン・リン・ゴーニイ、バリー・ミラー、ジョセフ・カリ、ポール・ベイブ、ドナ・ペスコウ、マーティン・シェイカー注※このサイトは映画のネタバレしようがしまい[…]
映画【ポセイドン・アドベンチャー】の感想一言
スコット牧師の末路が結構衝撃的な映画なんですけど、実は原作小説の方がもっとショッキングです。
小説では完全に「神への生贄」状態ですから。
それでもスコット牧師のような人が「お前の言う神は強者しか救わへん」って言われてしまうなら世も末ですね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。