1991年/アメリカ/監督:ガス・ヴァン・サント/出演:リヴァー・フェニックス、キアヌ・リーヴス、ウィリアム・リチャート、ジェームズ・ルッソ、キアラ・キャセリ、ウド・キア、フリー、ロドニー・ハーヴェイ、ジェシー・トーマス
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プライベートでも親友同士だったリヴァー・フェニックスとキアヌ・リーヴス主演の青春ドラマ。
代表作【スタンド・バイ・ミー】から5年後の少し成長したリヴァーと、自身のキャリアでもっとも優れた演技を見せるキアヌの2人が神々しい。
1986年/アメリカ/原作:スティーブン・キング/監督:ロブ・ライナー/出演:ウィル・ウィートン、リヴァー・フェニックス、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネル、リチャード・ドレイファス、キーファー・サザーランド、ケイシー・シー[…]
【グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち】のガス・ヴァン・サント監督による「ポートランド三部作」のひとつ、【マイ・プライベート・アイダホ】です。
1997年/アメリカ/監督:ガス・ヴァン・サント/出演:マット・デイモン、ロビン・ウィリアムズ、ベン・アフレック、ステラン・スカルスガルド、ミニー・ドライヴァー、ケイシー・アフレック、コール・ハウザー/第70回アカデミー助演男優・脚[…]
映画【マイ・プライベート・アイダホ】のあらすじザックリ
同性愛・売春・ドラッグ・ナルコレプシー・近親相姦
主人公はストレスを感じると発作的に強い眠気を生じる睡眠障害ナルコレプシー(居眠り病)を患う青年マイク(リヴァー・フェニックス)。
本人がストレスと感じていなくても精神的に追いつめられるとどこでも寝ちゃう。
「寝ちゃう」って言っても「あ、眠気が来た…ちょっとベッドで横になるわ」とかやってる猶予はありません。発作が起こると瞬時に眠りに落ちてしまうので、「寝ちゃう」と言うよりは「気絶する」に近いような感じ。
立ってても勃ってても(!)突然バッターンです。
車の運転とか危険作業とか絶対できないですね。
その上マイクはホームレス(溜まり場のような廃屋に寝泊まりしてる)で、男女構わず体を売って生きています。お金が無いから頻繁にはやってないけどドラッグにも手を出し、恐喝や盗みも平気。一応汚い大男ボブ(ウィリアム・リチャート)が統率する不良グループに混じってはいますが、本当の意味で仲間に心を許しているわけではなさそう。
ただ一人、スコット・フェイバー(キアヌ・リーヴス)を除いて。
マイクは密かに売春仲間のスコットに恋心を抱いています。
そりゃそうよ、個性派揃いの仲間内でもスコットの存在は異色。だってそもそも市長の息子だもんで、社会の底辺にいるここの青年たちとは育ちが違う。
“王子様”スコットは父親との確執など色々思うところがあってこんな生活をしているのですが、ひねくれている訳でも頭が悪い訳でもなく、体を売っても父親の側近に悪態ついてもどこかしら品があるし、「いつでも俺は“向こうの世界”へ帰れる」と言う自信と余裕が感じられるし、マイクを筆頭に「掃きだめに落ち着く以外に選択肢がなかった他の青年たち」とは放つ輝きが違います。
将来の夢も目標も持たないマイクは、スコットと一緒に盗んだバイクで自分を捨てた母親を探す旅に出ます。
行き先は“ポテトの州”、アイダホ。
私は異性としか恋愛をしたことがないごく一般的な人間ですが、静かな夜、たき火を見つめながらマイクがスコットに愛を告白する場面は、下手な男女のラブストーリーよりも胸高鳴ります。
2人の性質を表しているような視線もセリフも好きです。
恋しちゃうよこんなの。
でも抱いて寝てくれてもきっとマイクの寂しさは癒されない。「男同士じゃ無理だよ」からのこの優しさってズルいやないの。
衝撃の内容にそぐわない美しい景色
結構ギリギリの性描写もあるし(濡れ場はなぜか静止画ではなく俳優が意図的に動きを止めてる映像)、寒空に薄着で街角に立ち客を待ってたりとか、巨大な黒人に性行為を強要されたりとか、一歩間違えば死んでしまってもおかしくないような壮絶人生を送る青年たちが描かれる一方で、要所要所映し出される美しい景色に息を呑みます。
どこまでも続く道とか。
めっちゃ速い雲の流れとか。
故郷に戻る魚の遡上とか。
今観ているのが現実なのかマイクの記憶なのか私の記憶なのかも曖昧になるほど、まるで桃源郷のような淡い景色。
この映像のお陰で衝撃的な作品の内容が少し緩和されているような気がします。
余談ですが私はいつも視力検査の時の赤い屋根の画像を見ると【マイ・プライベート・アイダホ】を思い出します。
参考 視力検査の時の画像は「オートレフラクトメーター」と言うそうです。
最後の赤い車でマイクを拾ったのは誰なのか?
ラストでマイクは、かつてスコットと通ったアイダホの道沿いに佇んでいます。その時ナルコレプシーの発作に襲われまたしてもバタンキュー。
最初にそばを通りかかった車はマイクのカバンと靴を盗んで去って行き、その後に通りかかった車から降りてきた男性はマイクを車に乗せてくれます。
この人物は一体誰なのか?
答えはボーナス映像で明かされています。
はい。
マイクの兄貴のリチャード(ジェームズ・ルッソ)だったんですね。
スコットが眠っているマイクを抱えてリチャード宅を訪れた際にもラストと同じ赤い車が映り込んでいます。
ところで私は先ほど“兄貴のリチャード”と書きましたが、実はリチャードは“兄貴”であり“父親”。
【チャイナタウン】のモウレー夫人(フェイ・ダナウェイ)の「“妹”であり“娘”キャサリン」の設定と同じ。
1974年/アメリカ/監督:ロマン・ポランスキー/出演:ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ、ジョン・ヒューストン、バート・ヤング、ダイアン・ラッド、ペリー・ロペス、ジョン・ヒラーマン、ダレル・ツワーリング、ロマン・ポランスキー[…]
兄と聞かされていた男が実は父親であると云うこの事実は、本人たちから聞かされた訳ではなくマイクが「感じ取った」ものであるようです。
どんな事情があったにせよ母親と性行為に至った兄貴と一緒にいてマイクが幸せになれるのか不安は残りますけど、ボーナス映像の最後で雲がにっこり笑っているのを見ると、今後のマイクの人生は良い方向に向かったんだと信じても良さそうです。
映画【マイ・プライベート・アイダホ】の感想一言
突然グループから完璧に離脱するスコットに腹が立つけどそんな陳腐な感情はどうしようもない。
だって最初から「生まれた環境と住む世界が違う」ってみんな分かってたじゃないの。
自分に向けられていたと同じ冷たい視線をかつての仲間に送るキアヌ・リーヴスの演技が素晴らしい。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。