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【チャイナタウン】怠慢が一番の町で、フェイ・ダナウェイに救いはない

ハードボイルド
20秒で読める概要とあらすじ

1974年/アメリカ/監督:ロマン・ポランスキー/出演:ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ、ジョン・ヒューストン、バート・ヤング、ダイアン・ラッド/第47回アカデミー脚本賞受賞

ロサンゼルスの私立探偵ジェイク・ギテスは「モウレー夫人」と名乗る女性から水源電力局施設長で夫のモウレー氏の身辺調査を依頼される。氏と若い女性との浮気を突き止めたジェイクだったが、以前とは別人の「モウレー夫人」から名誉棄損で告訴すると叱責を受ける。

※このブログは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

私立探偵ジェイク・ギテス2

©Chinatown/チャイナタウンより引用

この映画で初めて、名優ジャック・ニコルソンが「呑まれる」瞬間を観ました。

私は数多のハリウッドスターの中でジャック・ニコルソンを最も恋い慕っておりまして、かなり私情をはさんだ偏った視点で観ても、この映画はフェイ・ダナウェイありきの名作だと思います。

すんごいですよね、一瞬あのジャック・ニコルソンまでも呑んでしまうほどの鬼気迫る演技と 眉毛のアーチ。

 

この年のアカデミー賞では作品賞こそ逃したものの、11部門でノミネートされその内アカデミー脚本賞を受賞したフィルム・ノワール、【チャイナタウン】です。

参考 フィルム・ノワール=フランス語で「暗黒映画」「暗い映画」を意味する

 

 

1930年頃のロサンゼルスの水事情について

ロサンゼルスって都市は「水」と縁が薄いんですね。もともと砂漠にできた町だもんで雨もあんまり降らないし、水道水も遠く離れたネバダ州から引っ張ってきてる。ライフラインが整った現代でもこんな状況なのに、1930年代当時の水の大切さたるや想像もつきません。

だって水道電力局施設長のモウレー氏(ダレル・ツワーリング)は、ダムの建設に反対したことで殺されるんですもん。

モウレー氏が水を調べてた辺り

©Chinatown/チャイナタウンより引用

「水のために人殺し」って…よく考えたらすごい動機。

まあ「水が莫大な金になる」んで、とどのつまりは「金のために人殺し」って訳ですけど。

 

 

脚本家ロバート・タウン「ジャックのために脚本書いた」

ジャック・ニコルソン扮する主人公の私立探偵ジェイク・ギネス。このおっさんがどうも「ジャック・ニコルソン」そのものにしか見えないと思っていたら、ロバート・タウン氏はジャック・ニコルソンを想定して脚本を書いたそうです。

 

斜に構えてるけど落ち込んでる人はほっとけなくて、

虫の居所が悪い時は周囲に当たり散らし、

無能な部下には容赦なくダメ出し、

でも頭の回転が速いのでオシャレな会話や下ネタにハマると一人でしゃべり続けてる…こんな性格のジェイクですけど、

 

道理で、ジャックっぽい。

 

身辺調査の依頼にきたのはどなた?

「モウレー夫人」
夫には女がいるんです。

調べてください。

にせモウレー夫人

©Chinatown/チャイナタウンより引用

この「モウレー夫人(ダイアン・ラッド)」の依頼によって事件は始まります。

調査を開始して間もなく、一見すると水のことしか頭にない堅物のモウレー氏は「モウレー夫人」の予想通り、若い女性と密会していました。

ジェイク、浮気現場を押さえる!

©Chinatown/チャイナタウンより引用

水道電力局施設長モウレー氏のスキャンダル!

ジェイクが撮った証拠写真は小さな町の新聞にデカデカと掲載され、ジェイクは一躍町の有名人に…。

 

ジェイク
俺じゃない…

誰だ写真を公表したのは…

朱縫shuhou
……えっ?!

あんたちゃうの?

後日。

モウレー夫人
初めましてジェイクさん

貴方を名誉棄損で訴えます

本物のモウレー夫人

©Chinatown/チャイナタウンより引用

朱縫shuhou
……ええっ?!

あんたに頼まれて調べたのに…

てか「モウレー夫人」て名乗ってるけど あんた誰?!

つまりこの写真を新聞に掲載させたのはジェイクじゃなくて、しかもモウレー氏の身辺調査を依頼してきた「モウレー夫人」は偽物で、本物のモウレー夫人(フェイ・ダナウェイ)は夫の不名誉を公表したジェイクを訴えようとしている?!

どゆこと?!

 

浮気調査なんかでのらりくらりと私立探偵やってたジェイクでしたが事態は急展開。ここからぐぐぐっと物語に惹き込んでいく引力が凄いです。

 

舞台は「チャイナタウン」ではない

まあ普通は「チャイナタウンは一体どこで出てくるんかいなあ?」と思いながら観ますよね?タイトル【チャイナタウン】なんですから。

しかし作中で「チャイナタウン」は一夜を共にしたジェイクとモウレー夫人のピロートークと、ラストの数分にしか出てきません。

 

私未だに不思議なんですけど、【チャイナタウン】を劇場や動画配信で観た人って、「チャイナタウン」について理解できてるの?「中華街やろ?横浜とか神戸みたいな」って、そーゆー意味じゃなくてさ。

私は本編だけを観ても全然意味分かりませんでした!

朱縫shuhou
(鑑賞後の私)で?

結局「チャイナタウン」ってなんやったん?

 

それがどうやって意味をこじつけることができたかと言うと、DVDの特典映像を見たから。

アメリカの治外法権にあるチャイナタウンを管轄する刑事は、「怠慢でいるのが一番」なんだそうです。熱心に仕事をすると逆に犯罪に手を貸していることがあるので、下手に首を突っ込まずに怠けていることが結局防犯につながる、というようなことが収録されているのですが、これを知らずしてどうやって理解すんの?この映画。

 

これがなかったら「チャイナタウン」については例のピロートークでジェイクがちょっと昔話をするだけ。

ピロートーク中

©Chinatown/チャイナタウンより引用

ジェイク
以前は地方検事局の刑事で、チャイナタウンを管轄してたんだ。

不運だった。傷つけたくない人を傷つけた。

いや意味分からへん。

 

ジェイクの「不運」は、またしてもチャイナタウンで

要するに、愛してしまったモウレー夫人を助けるつもりが首をつっこみ過ぎてモウレー夫人を死に追いやり、さらにその愛娘を黒幕ノア・クロスジョン・ヒューストン引き渡す手助けをする結果になってしまったってことなんですね。

教訓は頭に刷り込まれているはずなのに、これで「傷つけたくないのに傷つけた」のが2人になってしまったジェイク。

 

車の座席から地面すれすれに倒れ込むモウレー夫人を見て「怠け者の町だ」とつぶやく彼は、

 

…性分なんでしょうね…

 

どうしても「怠け者」にはなれないようです。

 

 

「私は父と…おわかり?」狂気漂うフェイ・ダナウェイ

ギラツク視線のフェイ・ダナウェイ

©Chinatown/チャイナタウンより引用

冒頭にも書いた通り、【チャイナタウン】は探偵としてのプライドと好奇心、陳腐な少しの正義感と揺れ動く愛情によって無関係のはずの殺人事件の深みにズルズルとはまって行くジャック・ニコルソンと、
そのジャック・ニコルソンを食ってしまうほどの演技を見せるフェイ・ダナウェイの2人の名優によっても不朽の名作となり得ています。

いくら脚本が素晴らしくても、主演がこの2人でなくてはここまで名画と語り継がれることもなかったでしょう。

 

モウレー氏を殺害した真犯人がモウレー夫人だと勘違いしたジェイクに詰め寄られ、何度も頬を打たれた挙句ソファに叩きつけられるエキサイティングな場面はスクリーンの前でも目まいを感じるほど。

加えてそのあとに嗚咽のように吐き出したセリフと表情が素晴らしい。

モウレー夫人
キャサリンは私ので…なの。

私は父と…お分かり?

ここでパニックになった普通の女性であれば、実の娘である自分に手をかけた父親を口汚くののしりわめき散らすのが関の山。

でもモウレー夫人はそうしません。

吐き出すように告白するモウレー夫人

©Chinatown/チャイナタウンより引用

口に出すのも汚らわしい自分達親子の罪を、「想像してみなさいよ」と促します。

そして問いかける言葉は「分かってよ」でも「分かるでしょう?」でもなく、ここへきてまでも自尊心の高さが垣間見える高飛車な言い回し

この迫力。この説得力。

でもすぐさま少し不安になって「信じられない?」と訊く女性的で妖艶な弱さ。

 

夫婦喧嘩でヒステリーを起こして皿でも投げんばかりにわめき散らす私としては見習いたいばかりです。

 

「ちょっとカメラ!早く追ってよカメラ!」

権力に巻き付いてる警察なんて当てにならない、キャサリンを車に乗せてチャイナタウンを飛び出したモウレー夫人。

拳銃を乱れ撃つ警察官、猛スピードで走り去るモウレー夫人の車、銃声を聞いて集まってくるチャイナタウンのやじ馬たち。

ほどなくして車は停まり、クラクションに続いてキャサリンの悲鳴が響く…。

朱縫shuhou
見えへん!

ちょっとどうなってんの?!カメラ早く!どこ撮ってんのよ!

早く車追って!早く!

すぐに車中の惨状は想像できるけど、ジェイクと私(観客)からは車の様子が一切見えないというもどかしいラストシーン。

敢えて客観的に映し出すことによって、結果的には「悪党に加担してしまった傍観者」でしかなかったジェイクの無力感が倍増されてます。

救えなかったモウレー夫人

©Chinatown/チャイナタウンより引用

 

 

ジョン・ヒューストンとアンジェリカ・ヒューストン

壮絶な最期を遂げた娘を横目に、泣き叫ぶ娘であり孫(ぐえ~…)のキャサリンを平然と抱きかかえ奪い去っていく半端ない存在感の極悪人ノア・クロス役のジョン・ヒューストン。

娘はジャック・ニコルソンと17年間もパートナー関係にあった羨ましい女優アンジェリカ・ヒューストンです。【アダムス・ファミリー】のモーティシア役が有名ですが、【女と男の名誉】でアカデミー助演女優賞受賞してます。

 

撮影当時もジャック・ニコルソンとアンジェリカ・ヒューストンが付き合ってたことを知っていれば、食事の席でクロス氏がジェイクに「娘と寝たのか?」と訊ねるシーンでなんとなく「うふ…っ」となれるでしょう。

ノア・クロスと食事をするジェイク

©Chinatown/チャイナタウンより引用

 

 

ロマン・ポランスキーのカメオ出演

監督のロマン・ポランスキーは、序盤でジェイクの鼻を切り付けるクロス氏の一味の用心棒としてカメオ出演してます。

ロマン・ポランスキー監督のカメオ出演

©Chinatown/チャイナタウンより引用

ロマン・ポランスキー監督といえば、チャール・マンソン事件で妊娠中の妻を惨殺されたことでも有名ですが、その後の13歳の少女への強姦容疑を知ってしまうと…なんだか作中で娘に手を出したノア・クロスと重なって気色悪いんですよねえ…。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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ハードボイルド
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「天衣無縫」と「温故知新」を信条として、主に古い洋画を好む映画好き。
様々な映画を観たいのにホラーだけは怖くて観られない可哀相な初老。

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