1986年/アメリカ/原作:スティーブン・キング/監督:ロブ・ライナー/出演:ウィル・ウィートン、リヴァー・フェニックス、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネル、リチャード・ドレイファス、キーファー・サザーランド
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

♪When the night has come and the land is dark.
♪And the moon is the only light we’ll see.
この映画の同名テーマ曲の導入部を歌ってみました。今歌っとったんかい。
ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」は1961年に発表された曲ですから、映画の方が後付けであるはずなのに、この曲を彩る汽車の蒸気のような「シュッ…シュッ…シュッ…」という音が線路を歩く少年たちを描いたこの映画に実にマッチしています。
この曲聴いただけで泣けてくるんですよね。しょっちゅう聴いてるんでまあ、しょっちゅう泣いてるってことですよ(泣くないちいち)。
メロディはさることながら、歌詞もほんとに素敵。そんなに難しい英単語もないので私にもなんとなく分かります。

とにかく大丈夫。
大好きな人、君さえいれば大丈夫。
暗闇だって災害だって、君さえそばにいてくれれば大丈夫。
そばにいてよ、いてよ、いてよ。
「そばにいるだけで」ってすごい言葉じゃないですか?
実際はそんなワケないやんって思いますやん。そばにいるだけって言ったって、カネは?住むとこは?利害関係は?ってなりますやん。
でも本当に、「大好きな人がそばにいてくれるだけで怖いものなんて何もない」って歌なんですよね。
最後に流れる名曲にも聴き入ってください、青春映画の金字塔【スタンド・バイ・ミー】です。
線路を歩く映画【スタンド・バイ・ミー】のあらすじザックリ
クリスを演じたリヴァー・フェニックスについて
【スタンド・バイ・ミー】を語る時に忘れてはならないのは、正義感の強いクリス・チェンバーズを演じ抜群の存在感を放った俳優リヴァー・フェニックス。

それではまず、彼の現在のお姿からご覧いただきましょう!…という訳には行きません。
なぜなら彼は1993年10月31日に23歳の若さで急逝してしまったから。
現場となったのは今や超人気俳優のひとりであるジョニー・デップも共同経営者として名を連ねていたハリウッドのナイトクラブ“ザ・ヴァイパー・ルーム”、死因は薬物の過剰摂取による心不全。
当時リヴァーは反ドラッグ運動にも積極的に参加していたというのに、どうしてもっと自分の体を大事にしてくれなかったんですかね。
【スタンド・バイ・ミー】はリヴァーがまだまだ駆け出しのひよっこ時代の映画です。
無二の親友として知られるキアヌ・リーヴスと共演した【マイ・プライベート・アイダホ】や、リヴァーの没後20年の節目に公開された遺作【ダーク・ブラッド】もおすすめ。
1991年/アメリカ/監督:ガス・ヴァン・サント/出演:リヴァー・フェニックス、キアヌ・リーヴス、ウィリアム・リチャート、ジェームズ・ルッソ、キアラ・キャセリ、ウド・キア、フリー、ロドニー・ハーヴェイ、ジェシー・トーマス注※[…]
線路を歩いて死体を探しに行く少年たちの物語
ひょろひょろのもやしっ子ゴードン・“ゴーディ”・ラチャンス(ウィル・ウィートン)、リーダー資質溢れる正義漢クリストファー・“クリス”・チェンバーズ(リヴァー・フェニックス)、戦闘マニアのセオドア・“テディ”・ドチャンプ(コリー・フェルドマン)、デブでビビりのバーン・テシオ(ジェリー・オコンネル)の4人は12歳で同級生。
樫の木の上に建てた秘密基地を根城に、いつも一緒に遊んでいます。


死体を見たことがあるかい?
ある日バーンがとんでもない情報を仕入れてきます。
3日前にブルーベリーを摘みに出かけたまま行方不明になっている少年ブラワーの、死体のありかが分かったと言うのです。

やった!
死体を見つけたらTVに出られて有名になれるやん!
死体探しに行こ!
「有名になりたい」以前に、この提案に対して「そんなの行かない」なんて言い出した日にゃあ、彼らの間で一生“チキン”のレッテルを貼られることになりかねません。
別に死体を見つけてTVに出たからってなんてことはないんですけど、彼らに「行かない選択肢」はないのです。
かくして4人は死体がある場所まで30キロの道のりを、線路をたどってテレテレ歩いて行くことになりました。
原作はスティーブン・キングの小説
原作はスティーヴン・キングの小説「恐怖の四季」の秋の物語。
成長して小説家となった主人公ゴーディの一人称で語られる小説同様、映画【スタンド・バイ・ミー】も中年期のゴーディを演じたリチャード・ドレイファスの語りによって進行します。

細部の設定でいくつか違う箇所はあるものの、【スタンド・バイ・ミー】はかなり小説に近い仕上がりになっていて、小説ファンも映画ファンも安心して観られるという意味ですごく好きです。
原作とかけ離れた作品であっても、それはそれでいいところもあるんですけどね。スタンリー・キューブリック監督の【シャイニング】とか。
1980年/アメリカ/監督:スタンリー・キューブリック/出演:ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、ダニー・ロイド、スキャットマン・クローザース、バリー・ネルソン、フィリップ・ストーン、ジョー・ターケル注※このサイトは映画のネ[…]
家族に問題を抱えている少年たち
この4人の共通点は、家庭に何かしら問題を抱えているという点。
4人の内、ゴーディとクリスとバーンの3人には兄がいて、ゴーディの兄デニー(ジョン・キューザック)を除いた残りの2人は超絶バカ。
そしてそのバカ2人が属する不良グループのリーダーのエースが、これまた救いようのないチンピラ。
なんと演じているのは若きキーファー・サザーランド。

そうです、TVドラマ「24-TWENTY FOUR-」のジャック・バウワアーです。無敵のタフなヒーローも敵に回すとこんなにウザい感じに仕上がります。

唯一兄がいないテディはテディで、ノルマンディー上陸作戦にも参加した軍人の父親から虐待を受けています。ストーブに耳を押し付けられた時の後遺症で片耳は聞こえません。
それでも父親を尊敬して止まないテディを見ているとつらい。虐待されてもこれほど親を愛し親に愛されたいと思うんですね子供って…。12歳にもなる立派な男の子がですよ?
分かってんのか虐待する鬼畜親どもよ。
今の日本にもこんな現状がなんぼほどあることか。
映画だってのに、密かに「がんばれ」って思いを込めてしまいます。
人の“死”を見て初めて涙を流すゴードン
4人の中では家庭もまともだしインテリの部類に入るゴーディ。
彼の問題は4ヶ月前に兄のデニーが自動車事故で亡くなったということ。
クリスとバーンの兄やテディの父親と違って、デニーは立派な青年でした。

でもデニーが優等生であったことが、デニーの死後残されたゴーディを苦しめます。デニーが死んだことで抜け殻のようになってしまった両親をなんとなく冷めた目で遠巻きに眺めているゴーディ。

ゴーディはデニーを愛していました。
優れた兄に対する多少の劣等感はあったでしょうが、それでもいつだって自分を認めてくれるデニーはゴーディにとって家庭内で唯一の理解者であり友人であったはず。
でもゴーディはデニーの葬式では「涙が出なかった」と言います。
線路の脇の林で見つけたブラワーの死体を見て初めて、冷静に“人の死”に直面し、しゃくりを上げて泣き出すゴーディ。
優しくも力強く肩を抱いて寄り添ってくれるクリス。

この時のゴーディや、少し前のクリスが号泣する場面でも思うんですけど、男の子が号泣するって、一体どんな気持ちなんですかね?
男の子って「悲しくて泣く」ってあまりないでしょ?
恥ずかしいの?
悔しいの?
どんな気持ちであっても、女の子のそれよりも遥かに感情のメーターが振り切ってしまっていることは間違いないと思うんです。
我慢して我慢して、それでも抑えきれず流れる涙の、なんと美しく重みのあることでしょうかよ。
最高です、少年の号泣。
たった2日で変化する少年時代
2日に渡る冒険を終え帰途につく4人。
ワーキャーはしゃぎながら駆け抜けた往路とは違って、誰もが押し黙ったまま歩く様が映し出されます。

なんですかね?この祭りの後みたいな感覚。
なんのことはない、ただそれだけのお話。
4人の少年たちが線路を歩いて死体を探しに行って、鉄橋で列車に追いかけられたり、森の中で野営するのが怖くなって見張りを立てたり、沼にはまってヒルにキン○マ吸い付かれたりしながら、なんとか無事に目的のブラワー少年の死体を見つけることができただけのお話。
それなのになんなんでしょうか、この復路の彼らを見ているとこみ上げてくる脱力感と侘しさは。
往路と同じようにはしゃぎながら歩いてよ。
戦争ごっこしながら歩いてよ。
下らない冗談言いながら歩いてよ。
だけど彼らはそうしません。
まるで借金で首が回らない大人の様に、忘れられない恋人を思い出す女性の様に、物思いにふけりながらただ黙々と歩きます。
つい昨日まで子供だった彼らは、たった一日で大人への階段を駆け上がる準備を終えてしまいました。ここからはきっと止まりたくてもノンストップで駆け上って行くしかないんでしょう。
町に着いて、バーンが去る。
テディが去る。
声を掛け合うクリスとゴーディ。
そして、クリスが去る。

楡の木の秘密基地で回想は幕を閉じます。
ほんの数十時間前までみんなで遊んでいたこの秘密基地には、もう二度と誰も戻ってこないような気がします。
次に学校で会う時には、彼らはみんな中学生。
ゴーディとクリスは進学コースに、テディとバーンは別のコースに進むので、きっとこれからはどんどん縁遠くなってしまうでしょう。
でも語り手のゴーディは、最後の独白でこう言っています。

ある一人の小説家の、生涯でもっとも親しかった友人を思い出してつづられた回顧録。多少の差はあっても、誰の青春時代にもあてはまる部分がいくつか必ずあると思います。
だからこんなにも懐かしい。
出演者は子供ばかりなのに、年齢を重ねれば重ねるほど、ふと郷愁にかられて無性に観たくなる瞬間が定期的にやってくる中毒性のある映画です。
私なんかもう、ところどころセリフ言えるくらいになっちゃったもんね。
映画【スタンド・バイ・ミー】の感想一言
男の子の少年時代の友人って、女の子のそれとは全然違う気がします。
女の子には理解しがたい男の子同士の絆は、この世代でしか作られないのかも知れません。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。