1987年/アメリカ/監督:バリー・レヴィンソン/出演:ロビン・ウィリアムズ、フォレスト・ウィテカー、ドゥング・タン・トラン、チンタラー・スカパット、ロバート・ウール、ノーブル・ウィリンガム、ブルーノ・カービー、J・T・ウォルシュ、クー・バ・グエン
注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

私が初めて銀幕のロビン・ウィリアムズに出会った映画です。
半べそ顔がスタンダードで一見いじめられっ子キャラにも見える彼から発せられるウィットに富んだ強烈なマシンガントークに衝撃を受けたものです。
今でも“ロビン・ウィリアムズ”と聞けば無意識に「グーッモーニン、ヴィエットナーム!」と口から出てしまうほどに愛して止みません。
何回も観てるのにまた泣いてしまいましたわ。
映画【グッドモーニング,ベトナム】のあらすじザックリ
ロビン・ウィリアムズ究極のハマり役
公開当時、「ロビン・ウィリアムズというこの俳優の本業はDJなんだよ」と誰かにガセネタ吹き込まれたとしても何の疑いもなく信じてしまっていたでしょう。
ロビン・ウィリアムズ主演の名作は数あれど、【グッドモーニング,ベトナム】のエイドリアン・クロンナウア役はそれほどハマってた。
これに続くハマり役は【アラジン(1992)】の魔人ジーニーやね。
1992年/アメリカ/監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ/声の出演:スコット・ウェインガー、ロビン・ウィリアムズ、リンダ・ラーキン、ジョナサン・フリーマン/第65回アカデミー作曲・歌曲賞受賞注※このサイトは映画のネタバ[…]
人気DJエイドリアン・クロンナウアがやって来た
1965年、ベトナムはサイゴン(現ホーチミン)の米軍放送網 サイゴン放送局に、空軍所属の人気DJエイドリアン・クロンナウア(ロビン・ウィリアムズ)が呼び寄せられます。
軍が推薦するレコードを無視してロックをガンガン流し、途切れないハイテンションのマシンガントークでギャグや皮肉を連発し、瞬く間に現地の兵士たちの心を鷲掴みにするクロンナウア。

本ットにこの映画で唯一惜しいのは、このクロンナウアのDJの場面なんですよ。
何が惜しいって、クロンナウアが何言ってるか分かんないから。
ただでさえマシンガントークすぎて字幕についてけない上、英語もスラングも分かんないからちょいちょい「ほよ?」ってなっちゃう。
大体芸人(芸人ちゃうけど)のマシンガントークなんて活字にするもんでもないし、活字で楽しむもんでもないし。例えダウンタウンや紳助竜介の漫才であろうとも、活字で読んだら面白さ半減ですよ。
このジョークを素で全部分かるようになりたい。
でも今さら英会話教室でもないわいな。
ホーク少尉をからかって楽しみましょう
でもね、何言ってるか分かんなくてもその勢いだけでとりあえず面白いんですよクロンナウアは。
とにかくもう、しゃべるクロンナウアの後ろで笑い転げてる同僚のエドワード・モンテスキュー・ガーリック(フォレスト・ウィテカー)やドライウィッツ(ロバート・ウール)を見てるだけでも何となく面白くなってくる。

大の男が、腹抱えて、手バンバン叩いて笑ってる。

現地警官が女子追いかけてカプチーノ飲むより目がランラン★
何言ってるか分かんない。
でもこのクロンナウアと言う男は何か面白いことを言ってるらしい。
つられて笑いがこみ上げてくる。
ここで全然笑えないって人は、続くホーク少尉(ブルーノ・カービー)との絡みで大いに笑いましょう。
クロンナウアの笑いがまったく理解できない自称「コメディにうるさい男」ホーク少尉は、クロンナウアの型破りな放送を聞いてすぐさまスタジオに飛び込んできます。

なんなのさっきの放送!「カプチーノと戦争」?
なんなのそれ?!
一体どこが面白いの!?
いやそれはあかん。
ボケが分からへんねやったらもうそこは静かにスルーや。どこが面白いのか詳しく説明なんかしたら、ボケた方がスベったみたいになるやないかドアホ。
コイツにだけは笑いについて説教されたくない。
この場にいるホーク少尉以外の全員が絶対そう思っている。

でも一応上官だからみんな下を向いて笑いをこらえてる。
そして先生が…ちゃうわ上官か、上官が教室を…ちゃうわ控室か、控室を出て行った瞬間一同大爆笑。
不真面目とユーモアは違うけど、時にしつこいくらいに不真面目に、ボケられるだけボケ倒して腹抱えて笑ったらいいのではないでしょうか。
誰も傷つかないんだし。
【グッドモーニング,ベトナム】で描かれるベトナム戦争
【グッドモーニング,ベトナム】は戦争映画であるものの、戦場の描写はほとんどありません。
サイゴンでDJ兼現地民相手の英語教師として過ごすクロンナウアの5ヶ月が淡々と描かれるだけ。
それなのにベトナム戦争映画の傑作と評されます。
それは一体なぜなのか。

クロンナウアは前線で戦う兵士ではありません。アメリカ空軍に所属しているってだけで、本業は飽くまでもAFNのDJ。
だからこそ、「戦場」とは一歩距離をおいたクロンナウアの視点で描かれる「ベトナム」がリアルなんですよね。
クロンナウアはベトナム人女性トリン(チンタラー・スカパット)に恋をし、老若男女のベトナム人とソフトボールをして遊び、ベトコンだと分かってもツアン(ドゥング・タン・トラン)を最後まで「親友」と呼ぶ。

かりそめですよ。
クロンナウアの体験した「ベトナム」なんてのは、前線の兵士たちにしてみたらかりそめの姿です。まがいものです。「戦争舐めてんのか」って処分されても仕方ない幻想の世界です。
でもここには確かに触れられる平和があって、それを感じることができるからこそ彼は笑いに飢えている兵士たちに一時でも楽しいトークを提供し続けられるんです。
だからといってクロンナウアがただふざけてばかりの平和ボケでないことは、彼が「ベトコンによる爆発テロ」を目の当たりにした時の描写でよく分かります。

この時、クロンナウアの表情は一切映し出されません。
だって彼は負の感情を露わにせず、絶望を隠して兵士たちに笑いを届けなければならないから。
ダウンタウンの松ちゃんも言ってました。
芸人が公の場で本気の涙を流してしまったら、そのあとそいつが何をやっても視聴者は本気で笑えなくなるって。だから自分は例え親が死んでもネタにするって。
その芸人魂がここにも顕われています(ホンマか!)。
平和なベトナムのリアル、殺伐とした爆発テロのリアル、軍人と民間人とのちょうど中間に立たされているクロンナウアの視点が絶妙なんです。
笑う兵士、見送るDJ
ある時、クロンナウアとエドワードが車で移動中、故障車があって立ち往生している軍のトラックの渋滞に巻き込まれてしまいます。
そこでエドワードに紹介される形でいつものマシンガントークを始めるクロンナウア。


そこの自分!君や君!頭に何つけてるねん?
(ヘルメットに付けてたコンドームを受け取る)
何やこのサイズ、黒人やったら先っぽだけやん!
(膨らませてパーン!)
うわっ!
顔射や、顔射!
爆発テロで多くの人が死のうと、何十万もの若い兵士が戦地に送られようと、こんなしょーもないこと言い続けなければならないんですよクロンナウアは。
でも見てください。
笑う兵士。

笑う兵士。

笑う兵士。

これほどまでにゲラゲラ笑ってる兵士を山盛り描いた戦争映画がこれまでにあったでしょうか。
…早く。
なんでそんなに引っ張るねん、早く次の場面行ってくれ。
泣きすぎて目がパンパンになるんやって。

気ぃつけてな。
みんな忘れへんで。

この場面の若い米兵たちの無邪気な笑顔もクロンナウアの体験した「ベトナム」であれば、突然やってきた米兵に親類縁者殺されまくって「どうして?」が頭の中を駆け巡っているツアンの姿も「ベトナム」。

クロンナウアに戦争を止める力はなかったけれど、「こんな戦い方もある」と教えてくれるんですよ、この映画は。
映画【グッドモーニング,ベトナム】の感想一言
主人公のエイドリアン・クロンナウアは実在の人物です。
2018年に79歳で亡くなっています。
映画は“ほぼ”彼の実体験に基づいているそうですよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。