【いまを生きる】ロビン・ウィリアムズ

映画【いまを生きる】あらすじと観た感想。トッドは若きイーサン・ホークだよ

【いまを生きる】ロビン・ウィリアムズ

1989年/アメリカ/監督:ピーター・ウィアー/出演:ロビン・ウィリアムズ、ロバート・ショーン・レナード、イーサン・ホーク、ジョシュ・チャールズ、ゲイル・ハンセン、ディラン・カスマン、アレロン・ルジェロ、カートウッド・スミス/第62回アカデミー脚本賞受賞

注※このサイトは映画のネタバレしようがしまいが気にせず好きなこと書いてます!未視聴の方はご注意ください!

 

【いまを生きる】ジョン・キーティング
©Dead Poets Society/いまを生きるより引用

「カーぺ・ディエム。

いまを生きろ、若者たちよ。

素晴らしい人生を掴むのだ」

出典:【いまを生きる】字幕

全寮制進学校ウェルトン(通称ヘル HELLトン)の新任英語教師、ジョン・キーティング(ロビン・ウィリアムズ)の言葉です。

 

初老の私がこんな青春ドラマの傑作を今さら観てもいいものかと、神を おそれるような気持ちで再視聴しました。

最後に観てから軽く15年は経っています。

すると驚きの発見がありました。

 

この映画に出てくるジョン・キーティングの金言の数々は、何も青春真っただ中のティーンエイジャーだけに向けられたものではなかったのです。

 

初老にも響く名画、【いまを生きる】です。

 

 

 

映画【いまを生きる】のあらすじザックリ

1959年、全寮制学院ウェルトンに、同校のOBである英語教師ジョン・キーティングが赴任してくる。キーティングの風変わりな授業に最初は戸惑う生徒たちだったが、次第に行動力を刺激され、新鮮な考えや、規則や親の期待に縛られない自由な生き方に目覚めていくのだった。

 

 

「いまを生きろ、若者たちよ」

一流大学合格者を多く輩出し、伝統や規律を重んじることで有名な全寮制男子校ウェルトン。

全寮制進学校ウェルトン
©Dead Poets Society/いまを生きるより引用

ええとこのボンボンが集まるこの学校の入学式で、新任教師として同校のOBでもあるジョン・キーティングが紹介されます。

いつも穏やかな笑顔を絶やさないキーティングは、初めての授業で生徒たちに冒頭の言葉を与え、詩を引用しつつ気さくに「僕のこと船長 キャプテンて呼んでもええで?」なんて言ったりします。

イーサン・ホークの資質を引き出すロビン・ウィリアムズ
©Dead Poets Society/いまを生きるより引用

私はこれまでの学生生活で、残念ながらこんな先生に出会ったことはありません。

何か相談事でもしていれば親身になってくれる先生くらいは居たのかも知れないけど、「一風変わった楽しい授業」をした先生にお目にかかったことはないです。

でもすべての教育者に“キーティング”を求めるのは少々酷ではありますよね。

「教科書を破り捨てろ!」
「机の上に立つんや!」
(授業中に)「中庭を自由に歩け!」

こんなこと普通は言えない。

一歩間違えれば頭のおかしい変なおっさん。

やっぱり教育者と言っても食べていかなければならない訳で、懲戒解雇とか食らったらえらいことやもんね。

ウェルトンを去るジョン・キーティング
©Dead Poets Society/いまを生きるより引用

実際自由な教育をしてみせたキーティングだって、「ここで教えるのが好きだ」と言っていた学校を追われることになるんですし。

生徒の気持ちも汲みつつ、上司やPTAのご機嫌も伺いながら、自分の理想も追い求めなければならないとは…。

 

先生も大変ですよ。

 

正しい教育とはなんぞや。

誰からも尊敬を集める教育者とはなんぞや。

 

原題「Dead Poets Society」の意味は「死せる詩人の会」

【いまを生きる】の原題は、「今を生きろ」と訳されている作中のキーティングの言葉「Seize the day その日を掴め」ではなく、キーティングがウェルトンに在学中創設したサークル名死せる詩人の会 Dead Poets Societyを意味しています。

 

優等生のニール(ロバート・ショーン・レナード)は卒業生の名簿の中から若き日のキーティングを探し出し、在学中に彼が「死せる詩人の会」という詩の朗読会を運営していたことを知ります。

ニールは仲間のチャーリー(ゲイル・ハンセン)やノックス(ジョシュ・チャールズ)、それに転入生のトッド(イーサン・ホーク)など、キーティングから影響を受け始めた生徒たちを集め、「死せる詩人の会」を復活させるのでした。

「死せる詩人の会」メンバー
©Dead Poets Society/いまを生きるより引用

 

さてその「死せる詩人の会」。

一体何をするのかというと、夜に寮を抜け出し、山奥の洞穴にお菓子と詩集を持って集まり、詩を朗読するだけ

 

一見くだらないような気もしますけど、大人が集まって酒飲むだけの「宴会」とかよりよっぽど建設的で進歩的。若い頃って「規則を破って集まる」とか「親しい友達と秘密を共有する」とか、ホントに楽しくて思い出に残るし、何より感情が刺激されるんですよね。

エモーショナルな集会です。こうして仲間と集まることで若者たちの中に連帯感や自尊心や、たくさんの大切な何かが芽生えるんでしょう。

 

親とは、友達とは、自分とは

ところであなたは、あなたに何か悩みがあって、それを友達に相談する(もしくは相談するつもりはなくてもバレてしまった)として、その時友達にどんなリアクションを取ってほしいですか?

 

  • 親身になってアドバイスして欲しい?
  • 一緒になって戦って欲しい?
  • ただ黙って聞いていて欲しい?

 

私は、ウィットに富んだ切り返しで笑い飛ばして欲しいです。

 

そう、凹んでいるトッドを見つけた時のニールのように、ネタに終始して欲しいのです。

若きイーサン・ホーク
©Dead Poets Society/いまを生きるより引用

みんなから隠れるようにひとりで座っているトッドを見つけるニール。

トッドの傍らには高級そうなデスクセットが。

トッド

…今日僕、誕生日やねん。

ニール
ホンマかいな!
それご両親からのプレゼント?!
ええやん!
トッド

…いやこれ…。

トッド

…去年と同じやねん…。

映画に登場こそしませんが、トッドには優秀な兄がいます。典型的な「兄が優秀過ぎて親に関心を持たれない弟」ですね。

去年トッドに何をプレゼントしたか忘れている両親。去年と同じものを贈られたトッド。自分が不要な人間であるような気さえしてきますよ。

 

今にも泣きだしそうなトッドに向かってニールは言います。

ニール

いや~でもええやんかこれえ~。

野球のボールとか車よりよっぽどええで!

俺がもしデスクセットを2回買うんやったら絶対これ買うわ!

ニール

しかもこの形…。空気力学的やと思えへん?

飛びたがってるで。

笑顔を取り戻したトッドは、その一言でデスクセットを投げ捨てます。極めつけにもう一言。

ニール

気にすんな、来年同じのもらえるわ。

爆笑ですよこんなん。「そんなによーさんいるかあ!」って言うて。「よっしゃめっちゃおちょくったったわ、ぷぷっ!」って自分の中で勝利を確信すれば親への恨みも雲散霧消。何やったら“デスクセット”て聞くたびにこの事件が甦って、つらかった思い出も楽しい思い出に変わってしまうわ。ここの下りすごく好きなんです。こんな友達理想やと思いません?

 

 

机の上に立つ若者と俯く若者

若者はしばしば古い伝統や体制社会をせせら笑い、時に抗おうとします。

大半は当然力及ばず、権力におもねる以外の道は閉ざされ、気が付けば自分自身も体制社会に組み込まれてしまっていることでしょう。

それが【いまを生きる】のラストで うつむいて座っている生徒たちの数年後の姿であることは想像がつきます。

【いまを生きる】ラストシーン
©Dead Poets Society/いまを生きるより引用

でもじゃあ、机の上に立てた生徒たちは?

ここでほんの少しの勇気を絞り出し、机に立ってあらゆる世界を見渡した生徒たちの将来は?

 

色んな意味で「立派な大人になってる」に1票。

 

大統領とか弁護士とか医者とか、職業的なことを言ってるんじゃなくて。

例え無職であろうとも、例えホームレスであろうとも、とにかく「立派な人間になってる」に1票。

 

あなたも?

じゃあ2票。

 

 

映画【いまを生きる】の感想一言

朱縫shuhou

ロビン・ウィリアムズが亡くなってから初めての再視聴。

 

「今を生きろ」が忘れられない言葉であることに変わりありませんが、その少し前のキーティングのセリフ、「人間誰でもいつかは冷たくなって死んでいく。それだけは避けられない」に重みが増したような気がしました。

 

私も最初に【いまを生きる】を観た時より確実に「死」に近づいています。

生きていられる時間はどんどん減っていきます。

若い頃よりもっともっと「今」を大事にして生きないとあきませんね。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そんなあなたが大好きです。

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